パラグライディング日本選手権

〜2005年 旅の軌跡 足尾編2〜


10月8日(大会初日)

  茨城を征するもの、日本を征す。パラグライディング日本選手権、三重県代表。のつもり。ホントに代表かどうかは微妙だけど、他に誰もいないのでそのつもりで。東京にいたらありえない出場だろうなあ。4年ぶり、学選以来の全国大会だ。昨夜の到着は深夜3時過ぎ。学生の頃を懐かしく思わせる夜出。朝が早いのがつらいが、天気がわるいので、受付だけのつもり。実際にそのとおりになって助かった。開会式のみで初日終了。早々にキャンセルが決まったおかげで初日は遊ぶことに決定。今大会、学生や学生出身のフライヤーが多い。応援やスタッフもね。で、みんなで石岡の体育館へバスケをしに行く。適当に分けたチームでの3オン3。かなりの時間、熱くなる。そんな一日。

  夜は国民宿舎のパーティー会場でレセプション。各都道府県ごとに参加者の挨拶。三重も滋賀も一人ずつ。Hんた君と一緒に伊吹組をアピールしてもよかったか。海外から参加のフライヤーも紹介される。UKのゴールドスミス。韓国チャンピオン&セミナショナルチーム。かつて日選を制した人、北は北海道、南は沖縄。こうして紹介されると改めて日本選手権なんだなあと感じてしまう。そのわりにはちょっとしょぼいパーティーだったような。

  今大会、99年製のグライダーで参戦してるのは私くらいか。「古いの乗ってるね〜」って、いいんだよ、ここまで連れてきてくれたのはこいつなんだから。率直な感想、選手権独特の雰囲気があるかなあ。ほとんどが常連、そうでなくてもそれなりに知り合いの多い人ばかり。狭い世界だから当然か。公式戦にはほとんど出たことがない私。しかも足尾の同世代フライヤーが少なくてアウェイな感じ。何はともあれ、日本選手権であることには変わりなく、陸上では辿り着けなかった舞台に何とか立ったわけだ。

10月9日(大会2日目)

  天気予報のとおり、キャンセル。別会場でブルース・ゴールドスミスによるテクニカルミーティング。貴重な世界トップレベルの話が聞けた。もちろん英語ね。通訳をしてたK木さん、すげえ。英語で話してる内容が理解できた人はどれくらいいるんだ?1割くらい?日本人にはまだまだ遠い世界の話だな。ここで聞いたことがいつか役に立つように、学生フライヤーはこれからがんばりな。

  午後になってとりあえずTOに上がってみたのは元気な学生たちのみ。私も当然行く。競技じゃなくても飛ばなきゃもったいない。とはいえ、強風の合間をぬってのフライト。TOにいる全員のグライダーを見渡して一番厳しそうなのは・・・私か?!ぶっ飛んで降りる分にはそれほど問題もなく、とりあえずは日選期間中の1本目を飛びましたとさ。ぶっ飛んでも気持ちいい飛びってのはあるもんなんだよ。今夜は学生たちと自炊。ショップで自炊なんてどれくらいぶりだ?懐かしいな。キムチ鍋、美味なり。

10月10日(大会3日目)

  体調不良により午前中ダウン。いまいちな天気によるキャンセルに助けられる。午前中はひたすら寝てた。もし競技だったらどうなってたんだか。午後、筑波へクライミングに行くも、そのまま東京へ一時撤退。気持ちを切り替えて出直すことにする。応援してくれるのはワセハンよりも陸上仲間のみんならしい。所詮はサークル、そんなもんだ。

10月11日(大会4日目)

  やっと飛べそうな雰囲気?まあTOに上がらなきゃ始まらない。やっと大会らしくブリーフィングなどやってみたり。英語でも同内容を繰り返す。Oか氏、さすがはW大の先輩だ。天気はいいんだけど、風が強い。アクロのスイス人女の子がステッカー貼りまくったグライダーでフライトするもアクロするどころか前に進まずアウト。それを見て今日のキャンセルが決定した。100人弱のフライヤーが列を成して担ぎ上げ。ここまで大人数が担ぎ上げすることもめったに無いだろうなあ。天気には勝てず。

  ここまでの不成立は置いといて、夜はパラLDでバーベキュー。海外から参戦のフライヤーたちとおしゃべり。世界トップのゴールドスミスをもじゃゴールドに任命する。もじゃレンジャー強い。アクロの女の子、ジュディ、若そうには見えたけど23歳?!飛び始めて4年?!アクロに特化した技術を身に付けたわけね。ウチらの4年間とは全然違うんだろうなあ。Sなえがフランス語でがんばってた。なかなかやるな。会場には、ウチらの兄貴、世界のM田さんが顔出してくれた。「政治的には問題あるけど、プライベートだから」なんて言いつつも来てくれるあたりはさすがだ。こういう人が頂点に立ち続けてくれたら、飛びの世界も変わっていくんだろうなあ。大会HPで名前チェックしてくれてたってのは嬉しかった。いつかはマジで勝負させてもらいますからね♪

10月12日(大会最終日)

  大会最終日、やっと飛べそうな天気になってきた。風は強めとはいえ、最終日ということもあり、まずはTOへ上がる。コンディションはなんとも言えないが、いちおうタスクが組まれる。南北に行ったり来たりする30km程度。日本選手権とは言っても、この程度のタスクか。なんて思ったのはコンディションが読めてなかった証拠だな。1本目、とりあえず順番どおりに出る。が、全く上がらない?!ぎりぎりまで粘ったものの、気持ちはすでにリフライトへ。なんて思ってたら、LDにも届かない・・・。5年ぶりのアウトサイド。ありえねー。気負いすぎ?いつもと何かが違うんだろうな。同じタイミングで出た数人は全員降りてしまった。気を取り直して2本目へ。いまいち上がりきらないコンディションと強風のため動けず。機体の性能差がはっきりと表れてしまった。コンペ機は問題なくても私のグライダーでは攻めきれず。一番つらいパターンにハマった。それでも悪あがきの2時間のフライト。スタートも切れずに終わった。そんなもんだな。韓国チームが見事なチームプレイでエースをゴールに導いたのと、ゴールドスミスが同じタイミングで飛んでたのにミニマムを取って来たのに驚いた。ゴールドスミスとは数分だけ同じ空域を飛んで、世界トップのフライトを間近で見ることができた。私としてはラッキーなことに、大会としては残念なことに、ミニマムに達した者が規定に足りず不成立。この時点で2005年の日本選手権は不成立に終わった。明日、Jリーグとしての成立のために大会予備日を使っての開催を残すのみとなった。

10月13日(大会予備日)

  エクストララウンド。不成立のため予備日にまでもつれ込んだ。仕事の都合で30人程度が昨日で帰ってしまった。サラリーマンは休みを取るのにもひと苦労だ。私だって今日閉会式が終わったら、三重まで帰らねば・・・。まあそんなことは全く考えてなかったけどね。昨日の不成立のおかげで今日の一本勝負。Jリーグ登録はしてない私にとってはポイントも関係なく、本当にこの1本だけの一発勝負。楽しもうぜ。上がる気配十分のコンディション。足尾〜筑波山間を行ったり来たりのタスクで、ゴールはフラワーパーク。メインLDじゃないとこにあえて行かせてくれるなんてうれしいね。

  ゲートオープンと同時にほぼ全員が出ることになる。が、気まぐれな空は、私には味方してくれず。前半の人たちが上げきった頃に、一気に渋くなる。昨日同様粘ったものの、後半の20人くらいは、私を含めLDせざるをえない状況に。多くの実力者もこの中には含まれていた。が、まだ時間はある。即リフライトに上がる。そして人の減ったTO。目の前の空にはすでに誰もいない。結果的には、ここですぐに出たA希と、待った私で明暗が分かれた。数人のリフライトを見送ってから、しばらく日選の雰囲気を楽しむ。最初からこれくらいの余裕があれば、いろんなところでもっと違った楽しみ方ができたかもしれないな。足尾を去って2年半。まさか日選で足尾に戻ってくるとは考えもしなかったけれど、お世話になった先輩がいて、共に飛んだ同期がいて、かわいい後輩がいて。こうして飛べる幸せを感謝せずにはいられない。そんな感慨深い中で、2005年日本選手権、ラストフライト。最後の最後まで全力。それがエンジ色のエースのプライド。レース中盤や終盤の選手が何機も行ったり来たりするTO上空で、上げきれず、動けず、悪あがきし続けること1時間半。A希のファイナルを見送り、上がらなくなってきたところで終了。4度目のTO前へ下がってきたところで秋晴れの足尾の空を見上げる。と、そこへ神の声、「うっちゃ〜ん!」。えっ?!M田さん?!タンデムのお客さんを乗せてのフライトで空中から応援?!さすがは兄貴、うれしいことやってくれるなあ。「がんばって〜!」、言われるまでもないっす。LDしようかと思ってた気持ちを追いやり、最後の悪あがき。それがここまで来られた一番の原動力だしな。せめてスタートくらい切りたい。最後の最後で攻めたフライトはきっと思い出に残る1本だ。

  結果、ビリから3番目。スタートパイロンまで届かなかったけれども、少しでも近づいたおかげで下2人だけは振り切った。健闘したとは言い難いものの、楽しんだとか、いい経験をしたとか、そういう観点から見れば、まあいいんじゃない?勝負だから負けたら悔しいけど、ここまでの道のりや、今までのフライト人生を考えれば、上出来だ。ということにしておこう。勝者のシャンパンシャワーが大会の終わりを告げ、みんなでA希を胴上げする。若手の実力を同世代のM也さんが準優勝で、グライダーなんて関係無いんだってことをA希が女子優勝で、飛ぶことの楽しさをみんなが笑顔で、見せつけてくれた。そうだな、こんな奴らが飛んでるんじゃあ、オレも飛ぶっきゃないな。いつかまたこの舞台に、そして、またあの頃のみんなと一緒に飛べる日が来ることを願って、足尾に「またな」。

【学生&学生出身フライヤーの成績】

徳永・熊大OB(2位)
村上・中大(7位・女子優勝)
及川・弘前大(29位)

小島・会津大OG(35位・女子5位)
太田・電大(52位)
椋本・日大(55位)
薄井・早大OB(57位)
鯨井・日大
山口・山形大
川上・阪大
福田・会津大OB
安陪・熊大OB
上妻・熊大OB

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