遠き恵那山、行き止まりのゲート越え

〜2004年 旅の軌跡 中央アルプス編2〜


5月29日

  天気予報は・・・。夜出で向かった先は岐阜と長野の県境、恵那山。深夜の国道をひた走り、長野県内に入ったところで力尽きてダウン。29日、予報に反していい天気。ただ、目指す恵那山は雲に覆われていた。睡魔に負けたのと、道に迷いまくったのとが原因で、登山口の神坂峠に着いたのは9時くらい。遠く恵那山の頂上は雲に隠れ、登りかけるも30秒で引き返す。往復8時間を超える長い道のりゆえに危険は冒せない。せめていい景色を見ようと、周遊コースの富士見台高原へ。ハイキング気分で登れて展望も期待できる。360度、北、中央、南アルプスが見渡せて最高。のはずが、迫り来る雲と強風で真っ白に。風避けになる岩もなく、小学校の遠足らしき親子連れのハイキンググループはいつの間にか去っていた。恵那山どころか、来た道も見えず。逃げ帰るように峠に下山した。

  恵那山系を挟んで、西が曇りで東が晴れ。東側の林道から見る山々は青空と新緑できれいだった。雲に覆われたピークを除けば。峠を越えて、長野県側に下りようとしたら、わずか5分ほどで「崩落、危険、通行止め」の看板とゲート。行き止まり。結局来た道を戻るはめに。次の機会に期待して、恵那山にさらば。せめて温泉を楽しもうと、岐阜県の山奥、くしはら温泉へ。国道から外れた、ローカルな土地に立つ日帰り温泉施設、ささゆりの湯。山々を見渡しながらの露天風呂は最高。恵那山付近での曇りが嘘のようにいい天気。太陽の出ている下で露天風呂というのもなかなかにいい湯。いつも夕方か夜ばかり。すっぽんぽんで露天風呂の岩の上に寝転んで、全身で太陽の光を浴びつつ、寝てみた。気持ちよかった♪「日本でここだけ、トマト大福」なる看板に惹かれ、風呂上りに食す。さっぱりとしていて、それでいて酸味もあり。とりあえずまあまあ。珍しさで一度は食べてもいいかも。予報は予報。大はずれのいい天気に、行く場所をちょっと間違えた。加えて、仕事で疲れすぎた日の夜出は厳しいかも。次回は万全の体勢で出直します。恵那山、待ってろよ・・・。

11月27日

  天気予報は・・・。夜出で向かった先は、リトライとなる恵那山。深夜の国道をひた走り、高速に入ったところでPAでおやすみ。今度は前回とは反対の長野県側からアタックする。恵那山系を越えるには高速の恵那山トンネルを抜ける以外は遠すぎる。夜が明けるとまあまあの天気。トンネルを抜けてすぐの園原ICから山奥へ。本当に道が続いているかも怪しい林道を行く。落石、崩落の跡多数。未舗装区間あり、砂利だらけ、幅員狭し。悪路を行くと、通行止めの看板と臨時駐車場を発見。って車が1台しか停まってない?!そんなにマニアックなルートか?確かに持っている地図には載ってないような新しいルートだけど。にしても人が居なさ過ぎ?ここから先の林道は、行き止まりのゲートを越えてマウンテンバイクでヒルクライム。この自転車、実はキャリアに載せてくるはずが、ロード用以外は載せられず。出発直前にわざわざキャリアをセットしただけに、かなりショックだった。で、折りたたんでちょっと強引に後ろに積んできたわけ。2kmほどで登山口との情報だったが、たった2kmで意外に登る。傾斜がきつく、かなりマジ。登山口まで10分くらいで着いたが、歩き始める前にバテバテ。とりあえずは8時50分、スタートします。

  わずか30秒で沢越え。水量が多いときは渡るなとの看板あり。ここで水ゲット(飲めるかどうか不明)。頂上でのラーメン用ね。山道に入るといきなり急登が始まる。沢がすぐに見えなくなり、周辺の山々がみるみるうちに姿を現す。風穴発見。矢印はあるが、道は木で閉ざされている。一歩またいで、引き返す。何かあったら怖いし・・・。30分も登ると日陰に白い雪?雹?がちらつき始める。もっと上に行ったら、もう雪が積もってたり?登山道が白くなっている部分が見え、嫌な予感・・・。

  木々に囲まれた1716m地点に1時間で到着。「頂上まで100分」の文字。ここからは稜線に入り、向かいの山を越える高さ。雲一つ無い青空の下、中央アルプスの山々を遠くに、視界が開ける。スタートの自転車の疲れもなくなり、足の調子はいい。休憩は景色のいい場所でってことにして先を行く。木がまばらになり、背丈が低くなってくると、強い横風が吹きつけるようになる。谷を抜ける西風が山を鳴らせるほど激しい。晴れているのにめちゃ寒い。軍手よりはマシなグローブを持ってきたが、冬用でないと役に立たない。手先が冷えすぎ。風除けになる岩陰でひと休み。気温は順調に下がってきている。太陽が高くなって温まるより、標高が上がって寒くなるほうが早いらしい。中央アルプスだと思っていた山々は、実は南アルプスだった。何でわかったかって?山々の向こうに真っ白な富士山が見えてきたんだよ。ってことはあれが北岳・間ノ岳。すでにどちらも雪化粧。

  登山道は日に当たっていても凍ったまま。霜柱は踏みつけると、数センチは沈む。柔らかくて変な感触を楽しむ。目指す恵那山の頂上(多分)が見えてきた頃に振り返ると、信州の街とそれを挟む南・中央の両アルプス。共にある高さを境に雪に染まっている。いつの間にか自分の足元も白い。笹原も霜が張りついて白く見える。強風にあおられる木からは樹氷の溶けた氷が雪のように舞っている。もっと早い時間ならきれいな樹氷が見られたに違いない。

↑ 一等三角点のある山頂

  登山口では3〜4時間と書いてあったが、事前情報では2〜3時間。実際は2時間で登頂。腹が鳴り出した頃に着いた広場。休憩にしようかと思いきや、何とここが頂上。ガイドにも書いてあったが、全く展望は無し。結局誰にも会わずに登頂してしまった。1台停めてあった車の先客はどこへ行った?頂上は日当たりがよく地面こそ雪が無かったが、樹氷はなかなかのもの。クリスマスツリーちっくに見えた。すでにここの気温は氷点下か。太陽こそ出ているが、氷は全く溶けていない。デジカメの電池も無くなり、ポケットに入れて復活させて使う。温めたらホントに復活した。風を避けた日なたでラーメンとカフェオレ。温かい飲み物が冷えた体に染み渡る。生き返った頃に後続到着。自分以外に登ってくる人がいて安心した。11時半過ぎ、みんなの到着時間はこのくらい。5,6組は居たか。

  頂上を満喫し、そろそろ帰ろうかと思う頃、単独のおじさん登頂。「なんか最高点はここじゃないらしいですよ」ってなに〜?!別のところに祠があり、そこの方が高いと?!行かねば。あと1分このおじさんが遅かったら、もう下山していた。凍りついた地面を滑りつつ、祠探し。避難小屋(新しくてなかなか立派)の裏にちょっと高い場所あり。ここか?!祠も発見、その後ろに展望ポイントも発見。常に木々に邪魔されていた恵那山において、おそらくここが一番の眺め。中央アルプスの山々を見渡し、恵那山系全てを見下ろせる。登ってきた稜線も確認。ここが最高点ってことで決まり。標高だけじゃなくて、景色点も加えて、頂上を上回った。ホントはどこが一番高いんだろう?満足した場所が頂上ってことでいいんだけどね。

  新築らしいトイレと避難小屋に別れをつげ、再び頂上の札が立つ場所へ。三角点にタッチして折り返し。同じ道を下山するのは物足りないが、周遊できるルートは少し長めで厳しい。特にこの凍った登山道を行くのは神経を使う。無理なくってことで、もと来た道を行く。何度かバランスを崩しながらも転ばず、順調に下山。頂上付近でのんびりし過ぎたが、まだこれから登ってくる人もいる。時間は12時を過ぎているが、体感温度は下がる一方。早く温かい温泉へ。その思いが足を早め、妄想に耽りつつ、ノンストップで下山。標高が下がれば、気温は上がるようで、沢の音が聞こえてくる頃には寒さは感じなくなっていた。丸太の橋を渡ってゴール。わずか1時間半の下りだ。

  登山口に停めてある自転車が帰りを待っていてくれた。おやつを食べていると10分遅れで、最高点情報をくれたおじさんも到着。「自転車はいいね〜」の一言に、笑顔でさらば。恵那山に心の中で「ありがとう」。おじさんに「お先に」。そして駐車場まで2kmのダウンヒル。スタートの苦労はここで報われる。慣れないマウンテンバイクで後輪をスライドさせながらの爆走。一度林道からコースアウトしてヒヤリとするも、最後はシャウトとともに駐車場に飛び込む。先客の車はまだ残っており、他6台が停まっていた。どうやらゴールは一番乗りらしい。ていうか自転車での下りはいいね〜。ラストを盛り上げてくれる感じだ☆泥と水で後ろ側は汚れたけど。

↑ 奥に見えているのは南アルプスの山々

  帰り道、昼神温泉「湯ったり〜な昼神」で温泉を味わう。恵那山を振り返りつつ、露天風呂で晩秋の風を感じる。今年中に恵那山に登れてよかった。これで思い残すことなく冬を迎えられる。雪に閉ざされ、それが溶けた頃、またどこかに登ろう♪今年最後の山登りに満足しつつ、まだ見ぬ頂に思いを寄せる。マウンテンバイクで始まり、マウンテンバイクで終わった登山でした。

おしまい

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