雪山に残した足跡

〜2005年 旅の軌跡 福島編〜


【旅のミチシルベ】
◆目的地・・・会津磐梯山、安達太良山、岳温泉、ニコニコ共和国。
◆やりたいこと・・・残雪の百名山、踏破。
◆泊まるとこ・・・宝龍荘。
◆温泉・・・岳温泉、奥岳温泉。

【旅の軌跡】

4月30日

  GWの始まりは残雪の山旅。猪苗代湖の北、磐梯山ゴールドラインをドライブ。峠の駐車場には5台ほどの車。登山者の姿もちらほら。ここから目指すは会津磐梯山。あの頂。道連れは、残雪の奥多摩で一人闇練をして一味違う男、越前守。頼りに、なるか?!

  八方台登山口、いきなりの雪にアイゼンを装着。スタートから雪道。10本爪の新品、初装備。着け心地、不明。雪はサクサク。凍ってないのでちょっと安心。登山道はよくわからず。雪山の木々の合間を適当に抜けること30分。登山道と思われる中ノ湯分岐、を眼下に発見。コースアウトしていた・・・。

  磐梯温泉中ノ湯跡。開けた場所に廃屋と化した建物が残っている。雪どけ水が作る流れと温泉が沸く池。湯気が上がっている場所もあり、温かい湯も味わえそう。浸かるには浅い池だが、雪じゃなかったら浸かりたい。体感温度は雪の照り返しと風がないのとで、汗をかくほどに暖かく、フル装備だと暑いくらい。山の中にいなきゃ、こんな厚着してないし。

  ここから登りがきつくなる。雪の有無でアイゼンの着脱が面倒だ。が、やる気をアップさせるいい景色、裏磐梯が見えてきた。あえて裏を強調するだけあって、何かけっこう壮大なパノラマだ。早く頂上から見たいとの思いにスピードアップ。先を行く登山者二組をかわしての雪山アタックになった。

  しかし、簡単には行かせてくれない磐梯山。ビビった犬を連れて引き返す登山者とすれ違い不安がよぎるも、今日の越前守は攻め攻め。道なき道を行く。そして迷う。登山道を見失う。急斜面で行き場もないし、トレースも足跡も無い?!後続二組も立ち往生。後から思えば、ここが一番の難所。雪山の雰囲気に惑わされ、残雪でまだ道ができていないのも重なって、ピンチ。いったい道はどこなんだ?!道を示すピンクのリボンはあったさ、はるか上に。でも道が無いじゃん。必死に探すこと5分。越前守、藪を突っ切る。その向こうから「こっちに道!」とな。でかした。後続二組にも道があったことを大声で伝え、先に行く。うちらが道を切り開いたらしい。すげえ。

  もはや道など無いに等しい雪原。磐梯山の頂上が射程距離に入った。最悪、最短距離を直登しても多分たどり着ける。そんな感じ。雪が積もっていることで道が無数にできているようなものだ。枯れ木ばかりで視界も開けているから、迷う心配も無い。テンションが上がってきた。磐梯山は活火山か?!噴火口の崩落がその荒々しさを見せびらかしている。地熱で雪融けが早いのか、岩肌がさらされている。弘法清水小屋到着。登りはじめから2時間。雪道を来たわりにはいいペースだ。

  さて、ここからはスキー場みたいな雪斜面。木々も無ければ登山道も無し!うちらが道を作るのか?!直登する。ダッシュ!アホだ。しかし、最高のシチュエーション。誰も踏んでない雪山に残した足跡が旅の軌跡。うおー、雪山あついぜ!!ホントは脇に迂回する登山道があったらしい。下山の時にツアー登山者が登ってくるのとすれ違った。でも、登りではそんなの気がつかず。後続もうちらの足跡を追って直登。まあそれもあり。

  ついに姿を現した猪苗代湖。登頂するまで見えないとは味なまねを。太陽が照り付ける磐梯山1818.6mに頂上!風さえ無ければ小春日和。お昼を食べていたら、うちらの後続も到着。みんなでお昼だ。二組にうちらが切り開いた道のお礼を言われた。いえいえ、どういたしまして。どうせ自分らも登る道ですから。蒲郡からGW山登りの旅に来ているという夫婦。明日は安達太良に登るって。うちらと同じコースか。

  いつもなら飽き飽きの下山も今回の雪山は面白い。斜面を滑ってあっという間に降りられるから。ビニールシートでもあれば楽しめそう。レインコートでお尻が冷たいながらも滑る。楽しい♪登ってる人、がんばって〜♪

  なんて思ってたら、マジに滑っちゃった?!そう、それはいきなりの出来事。ちょっと足を取られたなって場所があったわけ。そしたら越前守はものすごく足を取られて、谷側にバイバイ。えっ?!「何でもいいから捕まれ〜!!」って怒鳴るしかない。滑り落ちる音が止まる。滑落した場所が見える位置まで身を乗り出し「生きてる〜?」。「なんとか」ってよかった。無傷とは奇跡的。谷から山の下部で合流とかも考えたが、男越前守、雪の積もりようがない急斜面を強引に登って登山道に復帰。正直、ビビったぞ。当の本人はもっとビビっていたが。ホント無事でよかった。冷や汗もんだよ。

  何とか無事生還。雪山はファンタスティックなり。八方台で蒲郡から来た夫婦に別れを告げ、裏磐梯へ下る。湖畔を散歩、五色沼を散策。観光地には浮いた感じの山スタイルの男が二人。場違いなり。早く宿へ行こうぜい。

  裏磐梯、安達太良の北側、山間部を抜けてあだたら高原、岳温泉、ニコニコ共和国へ。山旅なのに豪華な宿、源泉かけ流しの宝龍荘。趣のある宿。たっぷりと飯食い、温泉に浸り、疲労に沈む。夜の温泉街を散歩し、夜桜見物。この時期で桜が見られるとはねえ。今年3回目の花見。明日の無事を願って、おやすみ〜。

5月1日

  朝風呂。温泉宿ってのんびりでさいこー。なんて思ってる間もなく、今日は安達太良山へのアタックだ。岳温泉から30分ほどで奥岳温泉。ここが安達太良山への登山口。ロープウェーで簡単に登頂、なんて手もあるけど、せっかく来たのにそれはもったいない。たっぷりと山を味わいたいよね。

  奥岳登山口よりあだたら高原スキー場を横目に、時計と反対周りに頂上を狙う。今日も最初から雪道。ただ高原というだけあってすでに木々は低く、道はわかりやすい。安達太良山の雄大な姿もはるか遠くに見えている。スタート早々に下山する人とすれ違う。10時過ぎのスタートは遅いが、宿に泊まってたら仕方ない。

  緩やかにハイキング。緩やかだから、頂上が遠い。やっと見えてきたのは、くろがね小屋。くろがね温泉って源泉がある場所。秘湯だ。小屋の前にはテントを片付ける人々。多い!みんな温泉に入って、テント泊?風邪引くぞ。温かそうな湯気を横目に森林限界突破。自然の荒々しさを見せつける岩峰。吹き飛ばされた砂の色で、雪の表面が赤い。あの尾根の向こうは立ち入り禁止。火山性の有毒ガスが今もなお発生しているとか。

  誰もいないこのアルペンムード漂う雪斜面に立ち尽くす。日常から離れたちょっと違う世界を味わえるひととき。わけなんかないが気持ちいい。と、その目の前を滑り落ちてゆく人。滑落?!いや、止まった。後続も続いて滑ってくる?!レジャーシートをソリにしてラクちん下山だ。昨日うちらがやったことは間違いじゃないらしい。もっとも越前守はマジ滑落だったが。

  稜線に出ると強風。吹き飛ばされるらしく、雪は無い。登ってきた道を振り返る。スケールのでかい景色に感動。その背中に打ちつける風。早く登頂して撤退せねば、やばい感じ。頂上1699.6mは乳首って呼ばれる岩の上。最後はロッククライミングで安達太良山Yahaa!

  強風がもたらしたのは霧。雲に覆われ始めた。ここから見える限りでは登山者は誰もいない。うちらも早く撤退しよう。滑落の心配はないが、雪に足を取られる場所は数知れず。荒れた雪道で歩きにくい。下山はゴンドラ利用の予定。駅まで1時間。寒さに耐えられなくなる頃に到着。ゴンドラ利用の観光客もほとんどいない。いつの間にやら曇天に。いいタイミングで登れてよかった。ゴンドラ下山、ラクだあ。

  車に戻るとワイパーに挟まっているゴンドラ切符が一枚。「道中楽しかったです。先に帰ります。蒲郡のおじさんおばさんより。気をつけて帰って下さい。AM11:55」。昨日の夫婦だ。よくこの車を見つけられたなあ。下山にはゴンドラ使ったってことね。今日は会わなかったけれだ、同じルートをたどったみたい。山での出会いが最後にちょっとした感動を届けてくれた。磐梯山で切り開いた道のお返しは、この何気ないメッセージ。こちらこそ、山での楽しいひとときをありがとうございました。

  登山口にある富士急ホテル、奥岳の湯。露天風呂から見える木々の足元にはツクシが生えていた。雪解けもそろそろ。福島の山々に新緑が芽吹く季節がすぐそこまで来ている。舞い散る花びらの中、ニコニコ共和国を散歩。桜前線にぎりぎり追いついた福島岳温泉。桜の終わりがGW始まり。そんな福島の山旅。雪山に残した足跡が、次に登る人のミチシルベになりますように。

おしまい

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