槍・穂高、炎の登頂記

〜2002年 夏休み旅行記 北アルプス編〜


9月9日

  9時に新宿駅南口で待ち合わせのはずだったが、千葉からの道は混んでいたらしい。南アルプスに続いてのスターレット、杉山カーが登場したのは11:00ちょっと前だった。いきなり予定は未定になった。しかも、東京の天気は雨。メンバーは4人。リーダーの杉山さん、キャプテンのサカワ、ボスのたら、首謀者の私。ワセハン登山チーム“LOVE・WING”の運命はいかに・・・。

  11:10、車の中はすっごい荷物。バックミラーは全く見えません。後部座席は人間の方が肩身が狭い。うっちゃんお待たせしました。あの荷物で1時間半・・・さぞ目立ったことでしょうね。となりでは千葉からドライバーを頑張ってくれたサカワが何とも寝心地の悪そうな体勢で寝ています。今は杉山さん運転。頑張ってください〜。登山初挑戦!楽しみだなあ。どんなワイルドな生活が待っているんだろう・・・。(たら)

  調布から高速にのり、13時頃に談合坂SAでお弁当を買い、車の中で食べながらの移動。山の時間は普通の生活時間帯と全然違うから、ここから登山口まで行くことを考えると時間がないらしい。2時おきの14時着、18時就寝だって。どんな生活になるんだろ??上高地へ向かう国道は渋滞。新穂高はどうやら想像以上に山奥みたい。すでに山の雰囲気が漂い、これからのアドベンチャーに妙にテンションが高い。

  松本で高速をおりた後、すぐにガソリン給油。あとは山が近くなったら、コンビニにでも寄ろうと走っていたが、コンビニなんてない・・・。途中いくつもの温泉地や山を見つつ、山道を杉山さんが爆走。国道から外れて、あとは今日の目的地、新穂高温泉へ行くだけ。となったところで車を停めて。スーパーなりコンビニなりを探す。後ろの二人はここまでのんびり寝っぱなし。運転は東京からずっと杉山さんです。杉山さん、スーパー発見!私は温泉発見!ほぼ無料の温泉みたい。「料金は志程度」だって。栃尾温泉かな。いいとこっぽいね。スーパーで今日の夕食と明日の朝食を調達。奥飛騨の特製豆腐がおいしそう。(うすい)

  17時くらいにキャンプ場到着。営業期間外でやっていなかった。水も出ない。が、その分無料。歩いて5分程のところに飲用温泉が冷たいのも熱いのもあったからいいか。キャンプ場と無料駐車場は歩いて15分くらい。トンネル内からわき道にそれるから見つけるのが大変だった。しかも暗くなるとめちゃこわいし。初日の夕食はスパゲティ、ミートソースだったかな。ワセハンのテントも組み立てて、気分もるんるん♪ただ他に一組しかキャンプ場にいないというのが寂しいですが。無料温泉は9:00〜16:00。有料駐車場・その他もろもろの店やホテルは18:00ですでに静まり返っていた。山の夜は早いね。忘れた荷物をとりに、真っ暗な中スターレットまでたらは一人肝だめし。あぁ、帰ってこられるのかしら・・・。トイレに行くついでに私は足湯を楽しむ。ちょっと熱いが足元からポカポカきて今日はよく眠れそう。そうそう、星がとてもよく見えてめっちゃきれい。あんな星空は今までで一番かも。(うすい)

9月10日

  2時起床。寝た気がしない。夢見っぱなしでした。テントの内側は水滴がついていた。だ、大丈夫だよなあ。まずは飲用温泉のとこまで行って水とお湯を補給。外は真っ暗。たらじゃないけどこわい。朝ご飯はおかゆと豆腐。みんな思い思いのものを食べている。サカワは鍋焼きうどん。おいしそー。さて、ついに今日から登り始める。4時出発予定で、4時15分出発!まだ真っ暗でよく見えないが、早速気合を入れる。みんな手を重ねて「ら〜ぶ・うぃんぐ、ファイ!」。

  太陽が出るまではこの季節でも寒い。スタート地点でも、標高1000m近くあるからなあ。高度を稼ぐでもなくしばらくは林道続き。川沿いで何度か橋を渡った。道も整備中。っていうか崖崩れの後処理?2度目の休憩が、やっと登り始めた感じの岩場。初めて他の登山者を発見。で、追い抜きそうなので休んで待ち。荷物は想像以上に重くのしかかります。きつ〜。山登りは基本的はに1時間歩いて10分休憩の繰り返し。太陽が出てきたらそれなりに気温も上がってきたみたい。でも高度も上がり始めたので、そんなに温かさは変わらない。むしろハードな登りで暑い。スタートから5時間ほどが経過し、ついに槍・穂高が見える位置にまで来た。が、雲に隠れてその全貌は見えない。5度目の休憩がお昼。鏡平山荘まえのベンチでラーメンです。9時35分でお昼とは山時間ですな。麓で買ったネギ投入。シャキシャキでおいしい。ここまで背負ってきたネギ娘のたら。ネギが短くなってちょっと残念。鏡平の池はホントに鏡みたいだった。

どういうわけか山です
360°山です
おうち見えません
山・空・雲
眠くなります(杉)
どういうわけでも山です
360°山です
成田見えません
とんこつ・ネギ・ラーメン
お腹すきました(たら)
どういうわけなので山ですか?
360°山です
さむい、ねむい
なんで10時に起きているのか
わかりません(サカワ)

  鏡平からは急な登り。昼飯のおかげで再びパワー全快。11時半頃についに稜線に出た。ここでちょっと寄り道をして弓折岳へ。今回の山行、最初の頂上。まずは一つ制す。遠くに黒部五郎、水晶、鷲羽、、槍、穂高・・・とにかく山・やま・ヤマ。でもどこも暗雲が立ち込めている。槍・穂高に至っては頂上を見せない。しかし、ザックは重いわ、テント・銀マットは長くて邪魔だわ、歩いてても気を使いまくり。だって木に引っかかるから。でもここまで登れば、今日はもう高低差はほとんどなし。あとちょっとのはず。かなり疲れたが、みんなよく頑張ってる。稜線から見下ろした鏡平は模型みたいで本物に見えなかった。ちょうど晴れ間のタイミングだったし、なんかきれいで鏡平って名前が合っていた。

  13:40、双六小屋キャンプ地に着きました。風がゴォゴォです。テントが飛びそう・・・。フライシート乾かしてるけど大丈夫なんでしょうか。夕食にはちょっと早いので、おやすみ?(うすい)

  やっぱり山は寒いようで。久々の山なので哀しみが堪えません。山道を登ると考えます。どうしてこんなところにいるのだろう。気付きます。結局僕らのしていることは、多かれ少なかれこのような意味のないことだと。でもやっぱり山登りはきついでの、家でグダグダしていればよかったと後悔します。せめて誰かがハプニングにあって苦しんでいる姿を見て、良い思い出を残したいと思います。(杉)

  テントに入りました。温かいです。山登りはゴロゴロしてて歩きづらかったです・・・。とりあえず今晩は親子丼。楽しみです。(たら)

  15:40、夕食作り♪親子丼で。お米炊いてます。外はあいかわらず風強し。フライシートかけましたがどうでしょう・・・。寝袋で寝ましたよ。ちょっとだけですが、しあわせ〜。で、中から出たら寒い。上着着ました。スノボーウェアであったかい。あぁ、今日の夜はどうなるのか楽しみですね。(うすい)

  安定のわるい床で、テントの中で食事作り。外は寒いから。私はフライシートのチェックとトイレ。ここの山小屋、きれいだった。想像していた山小屋とはずいぶん違った。療養所が閉鎖しているあたりは、やはりシーズン外を思わせる。テントも少ないし。来たときは2張り。今は10張り。シーズンならもっと混むだろうに。レジャーテントで頑張っているのはウチらくらい。ちなみにテント場は一人500円。山小屋の相場は一泊2食で8000円くらいか。戻ってきたらご飯の用意が始まっていた。米は4合炊いてたっぷり食べた。食べ過ぎたくらい。テント内、両端はザック。夜はかなり寒くなるという話だが、寒さよりも水滴が最悪。濡れまくり。所詮はレジャーテントか。まあこれで頑張るしかないけど。18時、就寝。山の夜は早いね。

  へぇー、トイレあるんだぁ。すごいなぁ山なのに・・・。へぇー、キレイじゃん。すごいなぁ山なのに・・・。へぇー、水あるんだぁ。すごいなぁ山なのに・・・。ふーん。(たら)

9月11日

  2:00、起床。でも2:10に寝る・・・くらいの気分。外は風・雨・霧で出たくない。もう下山?!なんてことを言うんですか、杉山さん。2日目(山に入って)にしてこんな天気とは・・・。たしかにやる気をそがれる。が、前進あるのみ。みんなで晴れを呼ぶおどりでも・・・。(うすい)

  6時に今度はちゃんと起きた。少しは風が弱まり、うっすら明るくなってきたような気がするので出発することに。4時出発の予定が7時に出発。双六小屋にお別れをしてものすごい勢いで登る。昨日はサカワ、たら、私、杉山さんの隊列。今日は順番を変えて、先頭が私。体力温存のためにのんびりペースで蛇行だったが、それでも向かい側の双六岳を直線に登る人々と同じペースで高度を稼いでいた。寝袋をサカワに持ってもらったので、昨日よりはだいぶラク。でも重いけど。30分ほど歩いて登りきったところで休憩。で、すぐにもみ沢岳の頂上。どうせなら頂上で休みたかった。

  この日は曇りだか霧雨だか。とにかくやな感じの天気。もみ沢岳〜槍ヶ岳山荘間はほぼ予定通りの4時間で行けたが、途中はなかなかに大変だった。槍は山頂が見えそうで見えない。ずっと雲に覆われたまま。多分2800mくらいまではどこの山も見えていたと思う。水晶岳側の山深いことといったら、かなりのものだった。どこまでも山続き。当然か。百名山で一番登頂に時間のかかる山なんだから。「え、ここを登るの?」といった感じの稜線を目の前に、遠く向かいの斜面をひたすら登る人々を発見。叫んでみるが、反応なし。たまに見える新穂高温泉らしき集落はすでにはるか遠くになっていた。途中、やばかったのは気がついたら登山道を外れていたとき。斜面もきついけど、銀マットが邪魔になった。これが原因で一枚は銀マットを杉山さんに持ってもらうことになった。おかげでだいぶラクになりました。2500mくらいの標高なのに硫黄のにおいの立ち込めたくぼ地を通過した。温泉があったわけではないが、きっとこういうところを流れた水が地下で温泉になるんだろうなあ。

  槍ヶ岳山荘に着いたら、いよいよ目指す槍ヶ岳へ。しかし、曇りのままで景色は期待できない。それでもザックを置いて軽装でいざ頂上へ。ハシゴに鎖に・・・何なんだ、ここは?!話には聞いていたが想像以上の道だ。いや道じゃないね。崖をよじ登っている。でもそんなに長くないからあっという間。確かに落ちたらやばいなっていう恐怖感はあったけど、でもついに頂上ということのほうが気持ちとしては上まわっていた。最後のハシゴを登ったら、思わずシャウトが。ヒャッホー!!うおぉーここが槍ヶ岳か。ついに頂上かー。でも何も見えねー!それでも達成感は十分だった。下りて槍ヶ岳山荘のテント場で今日は泊まり。風強だがテントは大丈夫だろうか。階段状のせまい平地いっぱいに張る。で、さっき登り終えたばかりの槍ヶ岳の感想が下に。そういえば山荘はここもきれいだった。

  鎖楽しい。岩場楽しい。槍楽しい。もう猿山の猿状態。ちょーしこきました。落石やっちまいました。うっちゃんに直撃しました。うっちゃん頭から血が出ました。でも生きています。ピンピンしています。穂高でもちょーしこきます。でも途中の尾根はうんざりです。どーして登ったあとに下るのか?下ってまた登るのか?もう寒いのは嫌です。でも暑いのも嫌です。だれか明日の天気なんとかして下さい。今日は疲れました。GOOD LUCK.(杉)

  岩場恐かったぁー。もっと格好良く登りたかったのに・・・。何ともみじめな姿に。でも、いい経験になりました。もっと景色が眺められればよかったけど・・・。牛乳の中にいるみたいなのも、まぁ、よしとしますかね。明日もこんな調子なのかな。霧が晴れてほしいなぁ・・・。もっと写真撮りたいよう。でも、そんな余裕もないよう。しょーがないか。ハシゴ、すべるーっ。恐いーっ。下が見れませんでしたっ。やっぱり山は気合と根性と食事ですね♪とりあえず明日も頑張ります。(たら)

  ついに槍を制す!はぁ、念願の頂上・・・。雨にも負けず、風にも負けず、霧にも負けず、空腹にも負けず。がんばりました。途中、巨大岩の落石(杉山さんが起こした)を拳一発で粉砕し回避。鎖場に現れた魔物も撃破。頂上に待つ桃源郷を求めて・・・。しかし、登った先は雲に覆われて岩場。景色がいいはずなのに・・・何も見えません・・・でも登頂です。イェーイ♪さて記念写真でも撮って、パシャ。服も脱いで、パシャ。ん?ちがうって?何でもいいや槍だ槍だ!とにかく登ったぞ。ありがとうチーム“LOVE・WING”。(うすい)

9月12日

  3:30、雨です。工藤に起こされました。テント内びしょびしょです。狭くて寒くて寝るのも大変です。頑張って二度寝したいと思います。(杉)

  4時過ぎにしかたなく起きたが、雨です。まずは朝ご飯に中華丼を食べて、ウェイティング。雨風がちょっとひどい。寝て体力の回復と天気の改善を待つことに。で、次に起きたのが7時。もっと早く起きるつもりが、たっぷり寝ました。で、今日は停滞か進軍か。

  7:25、今杉山さんが水分補給のため、一人山に立ち向かって行きました。ありがとうございます。そしてファイトです。吹き飛ばされずに無事帰ってくることを願います・・・。外は風が吹き荒れております。トイレに行ってきただけでも、寒いよーーーーー。普通に、6時間登り続けたい!とか思っていたけど、やっぱり実際はムリそう。山は厳しいトコなのね。甘かったです、考えが・・・。とりあえず、今は杉山さん待ちで。でも・・・停滞は・・・なんかいやだなあ・・・。まだ、考えが甘いって?!ごめんなさい。(たら)

  強風の中、思ったよりテントがこわれないと杉山さんは驚いていたが、私の予想通りの大活躍!でもテント内も雨って・・・。レインコート着てます。でもでも吹き飛ばされそうになりっぱなし。穂高にも登りたい!なんとか天気の回復を!水を取りに行った杉山さんも・・・無事で帰ってきて下さい。あぁ〜気持ちいい〜たらに踏みつけられてるけどマッサージです。ありがとう。それにしても停滞よりは少しでも進みたい!次のテント場まで3時間程。雲はかかっているけど少しは明るい。太陽は出てるみたいだし、何とか風がおさまんないかなぁ。リミットは10:00か・・・な。サカワは寝袋で寝てます。たらも寝ちゃいました。つまらん、何しようかな♪(うすい)

  8:40、笑っちまった。水場2ヶ所、地図に書いてあったのに30分近く歩いて何もない。水がない。水場がない。あは、あは、あはははは。空ザック背負って帰りました。山荘で水買いました。くぷ。(杉)

  槍ヶ岳山荘を出発したのが11時くらいで、南岳山荘まで2時間半のところを30分ほど早くクリア。視界も天気も悪し。でもなぜか早かった。が、これで「今日も何とか行ける!」と思ってしまったのが、今回の縦走最大のアドベンチャーの予兆であったことは、この日を無事に終えるまで考えもしなかった。南岳小屋を・・・出発してしまったのが13:40。看板には「14時以降の出発はお控え下さい」と書いてあったが、ぎりぎりセーフか、との判断でGOサイン。先を行くことを告げたときの小屋にいた人々の反応は普通ではなかった。そしてリーダーとキャプテンに導かれて、人生最大の命をかけたアドベンチャーの始まり。この縦走では、もうお決まりになった出発前の「ら〜ぶ・うぃんぐ、ファイ!」も、いつにも増して気合が入る。そして・・・。

  一歩踏み出した瞬間から「えっ・・・何だここは・・・」と思った。だって上下左右、どこを見渡しでも岩・岩・岩・・・。いや、視界わるくって下は見えてなかったけど・・・真白な霧の中に消えていく岩場はきっとどこまでも続いているんだろう・・・。ある意味、見えてなくてよかったかも。きっと足がすくんでいたことでしょう・・・。出発して30分も経っていなかったかな。早くも雨がパラパラと。足元の岩は、ただでさえ不安定なのに更に滑り、もー生きた心地がしないっ。でも。ひたすら前に進むしかなく、いったいどこまで続くのだろう・・・と。2,3度本当に落ちてしまうんじゃないか・・・と本気で思ったけど、みんなが「手はここにおいて、足はこっちがいい。次は右だ左だ・・・」と誘導してくれて何とか乗り越え、乗り越え・・・。本当にみんなありがとうございましたー!(たら)

  よく大学生が無謀な登山で遭難してニュースになってるけど、危うく明日のトップニュースになるところだった。これほどの岩場とは想像もしなかった。登山道じゃなくて崖じゃん。これ踏み外したら、落ちるでしょ。まじヤバい。普通じゃねー、正気じゃねー、でもテンション上がりすぎ。これは経験した人にしかわからないと思う。想像を絶するとはこのこと。ただでさえ困難な場所を雨と強風がさらにきつくしてくれた。予定以上に時間がかかり、寒くて休むこともなくひたすら進み続けた。一度、たらが完全に宙ぶらりんになったときには、ドキッとしたどころではなかった。足を支えるサカワと腕を抱える私は力入りまくり。多分たらがずり落ちたりしたら、全員助けに飛び込むだろうな、くらいの気持ち。どこも危険すぎて写真もろくに撮れなかった。先頭を行くサカワとしんがりの杉山さんは日没が迫るにつれて、ビバークのポイントや方法まで考えつつ、「この行程は失敗した」と責任まで感じてくれていたそうだ。が、私はかつてないアドベンチャーに酔いつつ、「次の山荘まで行くっきゃないでしょ」と前進あるのみ。たらは「これが山なのね、早く牛丼〜♪」と間違ったイメージと、ピンチの中でも食べ物のことばかり。そんなだからクリア出来たのかな。登山経験豊富な二人も、初登山で無謀を体験した私も、そろってワースト1に挙げる最悪の山行だった。しかし、その貴重な体験は、ゴールとともに伝説になった。

  いやぁご心配おかけしました・・・。ても生きていてよかった。人間の生命力の強さを感じた・・・。杉山さんとサカワは日没のことなど、色々なこと心配してくれて、実は絶望的な気持ちだったらしい・・・。うっちゃんはいつもながらのノリノリ。私は・・・とりあえず夕食の・・・あ、いや・・・。サカワ「大丈夫かぁー」、たら「牛丼ーっ」、うっちゃん「らぶ、うぃ〜んぐ♪」、杉山さん「ファイトー!」。こんな感じでした。私の中の登山のイメージは・・・既にこの北穂までの岩場になってしまったような・・・。みんな曰く「絶対、違う!」と。でも・・・あまりにもインパクトが強すぎてねぇ。ホント貴重な?!体験が出来ました・・・。(たら)

  北穂山荘に奇跡のゴール、そして感動のゴール!最後のひと山を登っているときに、人の声が聞こえたときには、もう涙もの。そこが山荘だとわかったとたんに胸の奥からこみ上げてくるものが・・・。「いやっほぉー!」おっとついシャウトが。途中の道のりは今までの山で一番ハードだった。これぞ伝説になる山登りだった。大満足。(うすい)

  「LOVE・WING、奇跡の生還!」、そんな見出しで一面を飾りたいくらい。北穂山荘のゴールではみんなとハイタッチをせずにはいられない。山荘にいる誰もがこんな天気の中、この時間に辿りつく人がいるとは思わなかったという。うちらだってこんな時間になるつもりはなかった。予報より雨が遅かったせいで、あのゾーンに入り込んでしまった。戻るに戻れず、行くしかなかったし。途中ですれ違った人なんていなかったし。しかし北穂山荘がほぼ頂上付近だとは思わなかったから、最後登って終わったのは、何か地獄から這い上がってきた気分だった。北穂の頂上を踏んだのはもうすでに暗くなってから。雨はいつの間にか止んでいた。

  そんな調子だったから夕飯になったのは18;50頃。テントの設営も暗い中でだった。テント場も今までと比べたらイケてない・・・。岩だらけだし、斜面だし、北穂山荘から10分も離れてるし。こんなに離れていたらトイレにも行けない。ていうかトイレに行って遭難する。あんなハードなアドベンチャーの後の夕食はおいしい。牛丼コールまで連呼しながらがんばってきたから、牛丼を口にしたときにはしあわせ〜。で、満腹になったところでおやすみ。ZZZ・・・。20:30、就寝。かなり遅いです。でも今日は4人そろって生還したことが最高の喜びでした。(うすい)

9月13日

  最終日です。7:40、北穂山荘まで水を買いに行った3人を分岐点で待ってるとこ。4:00起床の予定も4:30、5:00と引き延ばし、雨も降り出したこともあって結局この時間。今はもう雨も止んでうっすらと山々も見えている。朝のわずかな時間だけ奥穂のほうから東側がきれいな景色を見せてくれた。雲も低く、ところどころにたまった雲が雲海となって朝日とともにきれいだった。カメラをかまえる間がなくデジカメでしか撮れなかったのが残念。今日登る予定の奥穂は雲がかかっていたが、その手前の山荘までは見えた。稜線伝いの道は普通に険しそう・・・。まあ昨日ほどでないだろうけど・・・。と、書いている間に再び雲におおわれた。今日も景色なしか・・・。(うすい)

  昨日の試練を乗り越えたうちらにとって、今日の難所はすでに予想できる範囲の道となっていた。ただ周りが見える分、恐さは十分にあったけどね。昨日はホント見えなくてよかったのかもしれない。景色も見えれば話は別だが。で、10時半頃に穂高岳山荘到着。一気に来た気がする。ここの山荘はでかくてまるで旅館のようだった。足場も石畳でかなりの広場になってるし、トイレには鏡まで付いてるし。今回の縦走で山小屋のイメージが変わってしまったが、多分人気のある山だから、これほどの設備でやっていけるんだろう。ここ穂高岳山荘から奥穂高まではあとわずか。長かった縦走もついに最後の目的地に到達しようとしていた。

  地図によれば行き50分、帰り30分。サカワによれば30分で行けると。今回の山行、最後の登り。気合入れてがんばる。もう慣れてきた「ら〜ぶ・うぃんぐ、ファイ!」。急な登りでハシゴに鎖、ラストにふさわしくハードだ。と思いきや10分くらいでそれも終わり、普通の岩場になりラクだった。サカワは一人でさっさと登っていき、おそらく20分くらいで頂上まで着いたのでは?杉山さんは最後の岩との対話を楽しんでいるようだ。たらは道なりではなく、どうしてもまっすぐ登りたいらしい。そして迎えた登頂の瞬間・・・。ついに穂高も制した。うおぉー、感動ーっ。しかし、やはり曇天で展望なし。最後まで晴れなかった。誰だ、雨女は?!

  12:30、奥穂高に登って下りてこの時間。先に下りたサカワ&杉山さんがお昼の用意をすでに始めていた。最後の昼食はスパゲティー、アサリクリーム味だっけか。あ、餅が使われずにあまってしまった。パスタのゆで汁にみそ汁入れて飲みました。かなり微妙な味・・・でもお湯が捨てられないからしょーがない。ガスのカートリッジも少しあまってちょうど使ったくらいか。食料も使いきり、荷物もずいぶんラク(いややっぱ重い)になったような気がする。さてあとは下山するのみ。時間は間に合うのかな。(うすい)

  13:23、奥穂高山荘出発、白出沢出合、穂高平避難小屋方面へ。下りの長時間ロードが始まった。出合まで地図では登り7時間、下り5時間半。でもそんな時間かかったら夜になってしまう。ガイドよりもどれくらい早く下りられるかな。ものすごい下り岩場。左右は山が削り取られたような絶壁。氷河で削られた地形らしい。岩場で道がさっぱりわからん。ケルン(岩を積んだやつ)が役立っていた。(うすい)

  やっぱりさすがは下山部の杉山さん。猛スピードで下っていきました。そしてサカワも負けず劣らず、やはりすごい勢いで下っていきました。下りが苦手な私は・・・ちんたらと歩いて・・・。うっちゃんペース合わせてくれてありがとう・・・。山での最後の食事はスパ☆やっぱり食事は最高!のはずなんだけど・・・さすがの私もこのときのスパゲティーの茹で汁で作ったみそ汁は・・・。今後、あまり飲みたくない味でした。あっ、そうそうここのトイレは鏡が付いていたなぁ。久びさに自分の顔見た気がする・・・。うーん、我ながら山っぽい・・・。ご飯食べ、いよいよ下りだぁ。むむっすごい岩場・・・。ゴロゴロしてる。きっと真っすぐ直線で行けば、かなり早いのだろうが・・・そんなことしたら「死んでください」と言うようなもの。大人しくジグザグに行きました。揺れる岩がたくさんあって・・・おっとっと。でも、まだそれはいい方だった。岩場から砂利道へとなった時にはもっと悲惨。ズルズルズル、うわあいやな感触だぁ。力が入らないし、小股で小股で♪(たら)

  ずっと先頭を頑張っていたサカワだが、ついに足を痛めてペースダウン。下山部とはいえ杉山さんも疲れがたまっているはず。岩場から低木地帯へ、そして森の中へ。ひたすら下り。ここを登ったら、と思うと気が遠くなる。沢まで出ると崖伝いに徐々に水辺まで下りる。疲れているから沢の水がおいしい。ある程度下りきってほっと一息。が、ここで何と雨・・・。最悪。夕方になるにつれて気温も下がり、暗くなってくる。最後まで時間との勝負だったが、杉山さん、サカワに遅れること数分、何とか林道との分岐の小屋までたどり着いた。ここまでくれば日が沈んでも道は分かる。疲れと雨でぼろぼろの状況を見た杉山さんから信じられない言葉が。「世界はオレが救う!」。そして林道の彼方に一人消えて行った。

  残った3人は最後の力を振り絞ってトーク。雨ででかい蛙が元気に現れだした林道を行く。天気のせいもあるが完全に日は沈んだ。途中の営業してない小屋でひと休み。何人か人が住んでいるようだったが、ここで隠居か。自然に囲まれたいい環境だね。さあ、もうそんなにないはず。ついにラストの「ら〜ぶ・うぃんぐ、ファイ!」。意外にゲートまでは時間がかからず。待ち構えていたスターレットに乗り込み杉山さんに感謝。しかし、杉山さんの挙動がおかしい。真っ暗になった林道をしばらく走る。結構走る。こんなに距離あったんだっけ?え、何で駐車券?村営駐車場って?何でライト消すの?え、危ない?気をつけて?またゲート?うそ、ここ行くの?!斜面だって?!うおぅ、イヤッホー!

  一発逆転で今回の旅のMVPを持っていかれた気がする。さすがリーダーだ。みんなの心を完璧に捉えたその行動は伝説になり、そして杉山さんは北アルプスの星になった。つまりはこういうことだった。みんなより一足先に行き、車をゲートのすぐ近くまで持ってくるつもりだった。ところが、あまり時間が短縮できないと判断した杉山さんは、途中で荷物を置いてダッシュ。ゲートを開ける手段もなく、村営駐車場からありえない斜面を突っきって林道内に侵入。もうひとつ内側のゲートまでうちらを迎えに来てくれたのだ。林道に入るのに通過した斜面にはタイヤの跡があり、誰かが試みた形跡があったそうだ。しかし、他の人に同じまねができただろうか。いや、これは杉山さんにしかできない。スターレットが真のオフロード車であることが証明された瞬間でもあった。底はガスガスぶつけたけど。

  ただいま〜◎下界に着きました。みんな無事に帰ってこられてよかった〜。しかし、最後まで天候には恵まれなかったなぁ・・・。誰だ?!雨おとこは!うっちゃ〜ん・・・。カッパ持って行ってよかった。そーそー、最後、杉山さんがスターレットと共に我われ3人を助けるために、すごい危険を冒してくれた!ことは今やこの登山での伝説です。みんなの心をしっかりと捉えた杉山さん、さすがリーダーです。下ってきて、すっかり体が冷えてしまい、下界の味は・・・さすがに炭酸とはいかずに、ホットのミルクティーにしました♪おいしかった〜!そして温泉へ行き、温まろうと・・・でも行った先は混浴。やっぱり持ち物の水着は重要だったようです。でも私的にはこの際もうどーでもよかったような・・・。だって、寒かったし。まあどっちにしろ真っ暗だったからね。混浴なんて最初で最後(そうありたい・・・。)だろうけど、普通に温泉として気持ちよかった〜!(たら)

  びしょ濡れになって冷たい体を温めるべく行った温泉は、新穂高の湯。アルピニストに開放された無料温泉で川沿いの露天風呂。夜でわかりにくかったが、橋のすぐ下にあって、明るかったら丸見え。水着で入浴だね。持ってきてよかった。しかし、ここは混浴・・・。たら、ごめんね・・・って、なんだ、心配しなくても大胆に入ってくるじゃない。「見られても減るもんじゃないしぃ」ってさすがは山おんなだね。え?そこまでは言ってないって?何にしても気持ちいい〜♪あったかい〜♪雨が降る中、温泉に浸かりながら、4人は今回の旅を振り返る。ワセハン登山チーム“LOVE・WING”、槍・穂高登頂。初登山一人、初縦走一人、で、命の危険多々。リーダーとキャプテンの攻めの姿勢はうちらに貴重な体験をさせてくれた。笑顔で通したネギ娘も天然な雰囲気を漂わせてくれた。みんなのおかげで、マイナーなコースでの槍・穂高の縦走が達成できた。ありがとうーーーーー!!そして20時15分、新穂高温泉出発。さらば北アルプス、またリベンジに来るぜぃ。

  最後に・・・今回、初登山ながら、北アルプス、槍・穂高という大それた山に登れたのは、本当に、杉山さん、うっちゃん、サカワ、3人のおかげです。普通じゃあ出来ない、素晴しい経験をすることが出来ました。一人だけあんな小さなザックで、団体装備を一つも持っていない(くやしいけど)、落ちても支障のないネギ娘の私を、連れていってくれて、捨てないでくれて(笑)、ありがとうございました。本当に感謝します。手足はそう簡単には伸びないでしょうが・・・もっと鍛えておきますので☆是非次回も誘ってくださいねー!!登山、最高、万歳!!では、最後に気合を入れて、「ら〜ぶ・うぃんぐ、ふぁいっ!!」。たらでした〜。

おしまい

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