雪山プチ遭難体験

〜2006年 旅の軌跡 北関東編3〜


【旅のミチシルベ】
◆目的地・・・武尊(ほたか)山頂、皇海(すかい)山頂。
◆やりたいこと・・・雪の百名山を連続で制す。
◆泊まるとこ・・・ペンション「コーヒーカップ」。
◆温泉・・・白沢高原温泉、望郷の湯。

【旅の軌跡】

4月29日

  午前6時、高田馬場駅に集合。といいつつも、約10分ほどの遅れで集合。うっちゃんは昨日、夜遅くに三重から東京に着いたため(午前2時ぐらい?)睡眠時間は2〜3時間ということ。ということで今回の旅は始まる・・・と、いきなり今回のメインイベントが・・・!うっちゃんの車の総走行距離がなんと111,111kmに到達。これは朝から縁起がいい。地球を二周半ぐらい回った距離。この車で結構いろいろなところいったなぁ・・・。というのはさておき、車は関越に乗り一路沼田ICを目指すことになる。

  午前9時頃、途中渋滞があったり(つかみんな早いな。さすがGWの初日)して予定より1時間ほど遅れて沼田に到着。やっぱり気になるのが雪の情報。目の前にある谷川岳。頂上付近は3mの積雪があるってどっかに書いてあった。そしてその右手にある武尊山。こっちも白い。やっぱり雪かぁ。というかやっぱりそうだよな。ということで今日の目標を決める。武尊山か皇海山かどっちかなんだけど・・・。時間的及び皇海山登山口への林道の様子がわからなかったため、おとなしく武尊山を目指すことにする。とその前にコンビニでお昼ご飯を・・・っていっつも山登るときに買うカレーパンと赤飯握りがない・・・。まぁいいか。

  昼食を買い込み、いざ登山口へ。場所は川場野営場スタート・・・のはずが、冬季(?)封鎖とかで、車での進入禁止になっていた。えぇー、まじかYO!ってことでしかたなく野営場の手前で車を止め、そこから歩くことにした。約45分のロスというか、実際車乗ってる時間も考えて30分程度のロスだろうか?(ってそんな細かいことはどうでもいいや)。歩き始め・・・。余裕。いい天気だし、ゆっくり歩く。途中、雪が残っているものの、閉鎖するほどの雪なんてないじゃん・・・って思って歩くこと20分、その考えが甘かった。やっぱり、雪がすごい積もってる。まぁウォーミングアップという感じで久々の雪を味わいながら川場野営場を目指す。まぁそんな感じでのんびりと川場野営場を目指しているわけだが、途中うっちゃんが落ちている木の枝を道の中央に立てる。立てる。立てる。それも小さい枝ならまだしもぶっとい枝とかを・・・。

  そうこうしているうちに歩き始めて40分ぐらい、やっと川場野営場に到着!これからやっと登山のはじまり、はじまり。っとその前に、まずは準備体操・・・ではなくアイゼンを装備。ここから先は確実に雪っぽいのでとりあえず装備することにした。そして登山といったら入山届け!ということで入山届けを書こうとしたが・・・。入山届けを入れる木箱がぼきっって折れていて、しかも中のノートがびしょびしょになっていた。一応中をみることができたが、ノートの最終ページには12月の入山届けが・・・。あれもしかして今年に入ってだれも入っていない?

  ここで今回登る山を少し紹介しよう。武尊山です。以上。ってそれじゃわからないようなので武尊山は「たけるのみことさん」とは読みません。正解は「たけるのみことやま」です。というと嘘つきになるし、あんまかわってないじゃん!って感じなので、気を取り直して本当は「ぶそんさん」とは読まずに「ほたかやま」です。標高2158m、山の名前の由来はさきほどから言っている日本武尊から来ているらしい。うん、まぁそんな感じ。(by越前守)

  以上、越前守のレポートでした。旅はまだ始まったばかり。山登りもまだ始まったばかり。そして早々にピンチに陥る。道がわからねー。涙。標高の上がり具合を見てみたいと思って持ってきたGPS。もしものために早くもスイッチオン。軌跡を残しておけば、最悪なんとか帰れるかなと。そして前へと進む二人。静まり返る山の中で、雪が隠した道を探してさまよう。それらしいところを歩いたつもりだが、完全に道をはずれ、気がついたときには完全に迷子。推測したルートも間違えていたらしく、戻るに戻れない雪の斜面を迷走する。何の変哲も無い森の景色が不気味さを増して感じられる。今年の初登山でテンションが高くなかったら、完全にビビってたね。近くの斜面をガサガサッと草むらから飛び出した鹿が驚かせてくれる。雪山の中でも獣道があるらしい。足元を見ると鹿の糞らしきものが散らばっている場所がいくつもある。う〜む、本格的にやばくなってきたぞ。登山口から1時間が経過していた。

  時間的にはまだ余裕があったのと、天気も悪くはなかったので、遭難というよりは迷子の気分。でも状況が状況なら、これって完全に遭難でしょ・・・。雪山を楽しんでみるも、急斜面の登りや、道無き道の歩きに、2時間経ったくらいで飽きてきた。まあこれも英断というやつだ。登頂を諦め、帰る方向で意見は一致。時間とともに本格的にやばくなりそうだったからさあ。GPSを頼りに、道に迷う前のポイントへと最短距離を突っ切る。崖や藪に阻まれるも、ほぼ直線に。

  30分くらいで見覚えのある場所に戻ってきた。悔やまれるので再度道を探してみるが、結局何の目印も見つからず。ここから先の道はどこにあったんだ?そんなに有名な山じゃないし、メジャーなルートではないとはいえ、これほどまでに人が近づいていないとは・・・。おとなしく登山口へと戻り、3時間程のプチ遭難体験が終わった。通行止めの林道前に停まっていたもう1台の車、運転手はどこへ消えた?!

  武尊山にさらば。遠くから見ると基本的に山肌は真っ白な感じ。高速から見たときは谷川岳と見比べたせいで雪が少ないように感じたけど、実際には十分な積雪だった。アイゼン大活躍。でも遭難するようなルートはやだ。

  時間が余ったので、皇海山の様子見(今日の雪でびびった)に行く。こちらもまたわかりにくい道だった。が、林道に雪は無く、こちらは普通に通れるようだ。もっとも路面が普通じゃないらしいが。それは明日になってのお楽しみということで。

  片品川の渓谷に吹割の滝(名滝百選)なる観光スポットがあった。こんな場所になかなかの自然美。展望台から見下ろしながら、コンビニおにぎり。武尊山頂で食うはずだったのに無念。ここもなかなかの景色なので良しとするか。水辺におりて散策。観光客が意外に多い。有名なのか?!橋の上から見下ろした吹割の滝は言うならば北関東のナイアガラ。言い過ぎた。

  今夜の泊まりは玉原(たんばら)高原のペンション、コーヒーカップ。たんばらスノーパークの隣のペンション村の中にある。スキー場、まだ普通に営業してる・・・。早めの到着で、のんびり遊ぼう。朝早かったし。このペンション、DVDと漫画、それに遊び道具がそろってのが売りらしい。しかも名前のとおり、コーヒーカップのコレクションもすごいとか。まずは樽風呂で汗を流す。気持ち良くなったら、睡魔が・・・。借りたDVDもろくに見ず、夕食まで爆睡。マジで疲れたから、遭難は。越前守、漫画にハマってた。余裕だったのか?!

  何百とあるコーヒーカップの中からお気に入りのカップをチョイス。カップといいDVD、漫画、遊び道具といい、趣味の延長でペンションって雰囲気だ。こういうペンションをやってみたい。プチコース料理で腹を満たし、食後はダーツとかビリヤードとかで遊ぶ。が、何しろ今日は睡魔には勝てません。おやすみぃ。

4月30日

  昨夜は早々にダウンしたが、越前守は相当遅くまで漫画にハマっていたらしい。車中泊じゃない旅は、朝からコーヒーとパンの焼ける香りでステキ。特にこれから雪山へと戦いに赴く二人にとっては安息のひとときだ。食後すぐのチェックアウトにオーナーは驚いていたが、ウチらがアルピニスト(言いすぎ?)であることを告げると皇海山方面への近道を教えてくれた。ここから武尊山への道もあるらしいが、まだ一般的な登山道ではないとのこと。そのルートが出来る頃にまた泊まりに来ようか。

  玉原から白沢高原を抜ける道の景色はわるくない。皇海山へと向かう近道は望郷ライン。青空の下、自転車で走るには気持ちが良さそうないい道だった。途中、吹流しとパラのLDを発見。どこのエリアかしら?なんて思いつつ、昨日チェックした林道へと1時間ほどのドライブ。そしていよいよ問題の林道へと進入する。

  未舗装の林道として有名な栗原川林道。皇海山の登山口まで約20km、1車線の悪路。すれ違う車こそ無いものの、狭くて走りにくいガタガタ道を1時間ほどドライブ。土砂崩れ跡や崩落地が多々あり。気になったのは途中で見かけた整備された土地と謎の建物。秘密の研究施設か?何はともあれ登山口の皇海橋付近にたどり着いたときにはホッとした。駐車していた車は他に3台。11時15分、この時間からスタートだ。

  登り始めから、アイゼン装着。やはりここも雪が多い。が、雪に残る足跡が登山者が少しは居たことを示している。今日は大丈夫か?雪で若干ルートの変わった沢沿いの道を緩やかに登っていく。このルートは後半で一気に標高を稼ぐ山。標識の頭以外が埋まるほどの積雪は、むしろ歩きにくい登山道を舗装してくれているかのようだ。距離的には中間地点、時間的には3分の1が過ぎたところで下山の4人グループに会う。なかなかの重装備。「登るんですか?!」、その意図は時間的に?それとも装備的に?大丈夫、ちゃんとアイゼンは付けてますから。ピッケルも持たずにジーパンで登山。大丈夫、アルピニストですから。

  そのすぐ後に単独登山のおじさんと会う。時間的にもあと2時間ほど。斜面の様子次第っすかね。って急になり始めたと思ったら積雪も相当なものに。ジーパンの裾どころか靴の中まで雪が入りまくる。しかも登ってる道は登山道ではなく、雪が覆いかぶさった沢の上。雪山登山なんてそんなもんでしょ。赤いリボンの目印を頼りに勝手にルートを作っていく。二人の歩く道がたまに違ったりするのはよくあることだったり?栃木県側を見渡せる稜線に出たのは13時頃。スタートから2時間、ほぼコースタイムどおり。雪で歩きにくかったりもしたけど、逆に歩きやすくなったところもあったに違いない。あと1時間最後のアタックってとこですか。

  ホントに人が寄りつかない山の上は、何となく異世界に感じるのはその雰囲気のせいもあるだろう。4月の終わりに雪だらけの木々の中を歩き、風の音と足音のみの世界に居たら、神秘的な感覚に包まれるのも至極当然なことか。融けかけの雪を踏んで股まで埋まったり、崩れた雪に滑ったりしつつも、登り始めから3時間、栃木と群馬の県境、雪で標高が3mほど高くなった皇海山(2144m)に14時、見事登頂。なんで標高がわかるのかって?GPSだよ。今日も遭難したら役に立つかなって。

  登頂にテンションが上がってるうちに遅めの昼飯を食う。山頂の標識も場所によってはほとんど雪に埋まってる。明るいけど薄っすらと雲に覆われた天気。雨になる前に下山だ。14時半、下り始める。雪山は登りよりも下る方が難しい。が、それは歩いた場合の話。レインウェアで滑り降りれば早いもんだ。滑落じゃないよ、滑降だから。木の棒で上手くコントロールすればラクに降りられる。かといって油断は禁物。越前守、滑降から滑落に変わりそうになってるから。汗。

  本日最後の登山者かと思いきや、2人組のおじさんに会う。アイゼンも付けてない。稜線に荷物置いてきたそうだ。あそこでも十分に雪が積もってたはずだけど・・・ウチらよりもありえない。どうやら本日の入山者はウチらも合わせて4組、合計9人だけらしい。全員無事に帰りましょう。それにしても今回の山、武尊=ほたか、皇海=すかい、ともに読めない山だったなあ。

  雪の斜面、歩くをの諦めてお尻をつけて滑り降りれば、登ってるときに「ここは降りられるのか?」と心配した斜面もあっさりとクリア。雪のおかげで無雪期のコースタイムより早いくらいだ。半分くらいまで来たところで雨が降り出す。最悪だ。休憩する間もなく、下山を急ぐ。雪山に降る雨の影響も心配だが、林道の崩落も心配だから。帰れなくなったらどうしよ?!急ぐ。休憩なしの甲斐あって、2時間ちょっとで下山。16時半、二人揃って無事、皇海橋まで帰ってきた。雨の中で下山のシャウト、「皇海山、フォー!!」。

  帰りの林道は心配したほどの雨にはならず。むしろ暗さとの戦い。日没よりも前に脱出したいもんだ。途中の秘密研究施設の敷地内には猿の群れを発見。あれが本当にただの猿だったかどうか。いや、ただの猿なんだけどね。そんなこんなでガタガタ道を脱出。自分に車がハイブリッドカーかと錯覚するような静けさ。砂利道を1時間も走って、うるさい状況に慣れすぎ。ていうかそんなにうるさかったんだ?!しかも走り心地も最悪。林道なんてそんなもんか。

  下山後はお決まりの温泉。白沢高原温泉、望郷の湯。数年前、月夜野にパラの大会で来たときにみんなで入った温泉だ。懐かしい。って、温泉までは覚えてないけどさ。気持ちいいのは確かだ。暖まるとともに腹減りも激しくなってくる。沼田の名産、何とかそばを食ってGW始まりの旅が終了を告げる。さあ、今年の山シーズンもいろんなとこで楽しみましょうか。貴重なプチ遭難体験を活かしながら。でも、来年は雪が無いとこに行きましょ♪

おしまい

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