迷走の夜叉神峠、遠き仙丈岳

〜2002年 夏休み旅行記 南アルプス編〜


  北アルプス縦走へのステップ、3000m級への挑戦。初の南アルプスは、今シーズンの山登りの幕開けであった。8月19日、16時巣鴨を出発、17時15分、全員集合。杉山カー、すなわちスターレットで、メンバーはエンドー、杉山さん、私の3人。天気は台風明けで、あやしい空模様。でも、ノリでGO。

  甲州街道をひたすら甲府へ向かって走り続ける。八王子で道に迷ったり、多摩川でタマちゃんに遭遇したり(妄想)、藍屋大月店で夕飯を食べたり。22時45分、甲府のセブン山梨信玄橋店にて落ち着く。した道での山梨は遠かった。さて、ここからがまた大変。南アルプス林道へ入って行くのだが、夜のこんな時間に走る車なんて数えるほどしかいない。ていうか目的地の広河原に着くまで出会った車は3台ほど。林道というから砂利道を想像していたら、いちおう舗装はされていたのでちょっとは安心。が、サイドブレーキが利かないような坂道に迷い込みびびった。車がひっくり返るかと思った。他にもいろいろと・・・。何とか着いた広河原も野営場は前日から予約してくれとなっており、しかも駐車場から離れていた。もうすでに1時を過ぎていたので、諦めて駐車場でテント設営。今回初めて使うマイテント。3人用でなかなかいい感じ。ていうかここまで来るだけで疲れた。明日は朝早いです。

  第一日目終了、20日1:16。林道かと思った道は工事現場へと続いていた・・・うっちゃんがギブアップするほどの悪路。スターレットの腹が地面にこすった。途中スターレットがぶっ飛ぶかと思った。桃の木温泉入口からの月明かりの夜景は絶景だった。途中降車して何枚か写真をとる。林道の長さは足尾の山上げの3倍くらい。9月の登山では夜のこの道がたらちゃんにとっての最大の難所となろう。何しろ「幽霊なんて非現実的なもの、よく怖がれるよな〜」とたかをくくっていた杉山さんですら、うっちゃんですら、怖くて後ろを振り返れなかったのだから。林道途中の超ロングストレートのトンネルはかなりもののけが出てきそうなかんじ。一見オレンジ色でレトロな雰囲気の光が、これ以上ない程の霊ムードをかもし出している。3人が最も怖がった場所、この時とった写真には何か写っていることをちょっと期待する。観音経トンネルと夜叉神トンネルはやばい!特に夜叉神トンネルは何

かいる!夜中にあの道を通るべきではない。今はテントの中でこれを書いているトコ。両隣の2人はすでに夢の中。川の音がうるさい。吊り橋を生まれて初めて渡った。眠い。もう書くことない。あーおやすみなさい。(byエンドー)

  5時35分、起床。朝ごはんのメニューは中華三昧3パック、ほうれん草1束、もやし1袋、南アルプスの天然水1リットル(本物)。あと30分でバスという時間になってもまだうちらは朝食。ここから登山道の入口、北沢峠まではバスで行かねばならない。朝からドタバタだった。

  ありえない。朝飯食い終わってからバスに乗り込むまで1分くらい。後片付けもそこそこに出発した。スターレットにいろいろつめ込んできた。ゴミ箱状態。ごめんよ、スターレット。そしてヒザに爆弾を抱えての登山が始まった。(by杉)

  村営のバスのみ通行可の林道を満員状態で走行。すでに山深く、見える景色は大自然をもろに感じさせた。登山口の北沢峠に着いたのは7時20分。ここから甲斐駒ヶ岳と仙丈岳に分かれる。どっちも人数的には同じくらいか。初のアルプス、登る前からワクワクしすぎ。まだ計画もあいまいなまま。どこから登るか作戦会議の結果、行き帰りが違う登山道になるように行程を決めた。北沢峠をスタートして大平山荘の登山口へ。すると峠の反対側の村営バスが停まってくれた。「にいちゃんたち、どこへ行くんじゃ?のっけてやるよ」と、ありがたいお言葉。歩いたら20分ほどの山道になるところを、バスで5分で連れて行ってもらった。いきなり山の温かさに触れて、俄然やる気が増した。

  いきなりの急坂に始まり、沢づたいを進む。霞がかった山林の中を歩いたり、沢で滝を見たり。途中で抜いた3,40人のおじさんおばさんパーティーには、「若い人に触っておくと縁起がいい」とか言って、触られまくった。杉山さんの爆弾が少しずつ爆発する中、2時間ほどで馬の背ヒュッテに到着。山小屋バイトのにいちゃんねえちゃんたちがトークしていた。雲が入ってきたりもしたが、天気は問題なく、甲斐駒がだんだんと同じ高さの目線になってきた。ここからさらに1時間ほどでお花畑、さらに20分ほどで仙丈小屋に着いた。10時40分頃だった。すでに雲の上。遠く山々と雲海がきれいです。頂上まであと少し。

  仙丈小屋にて、私「デジカメ落とした」。ウエストポーチのチャックが開いててあわてて探しに行く。「ないっす」と、戻ってきてかばんを開けると・・・。く・・・どじった。体力も無駄に使ってしまった。しかし、山の温かさにはまた触れた。会う人々はみな、情報をくれたり、探しとくと言ってくれたり。ありがたい話だ。でも戻ってリュックの中を捜索したら出てきた。ほっとした。一度下って飲んだ水はとってもおいしかった。ついでにここで昼飯。山小屋のおじさんが「バイトでもせんか?ここまで来たらバイト採用だ」と。仕事がなくなったらお世話になります。特にエンドーあたりが。

  頂上が見えてきたら、のんびりペースに。写真撮りながら登って、狙ったかのように12時ちょうど、ついに仙丈岳3032.7m登頂!視線の先にはただ青い空があるのみ。雲は眼下に広がっている。辺りは風こそあれ、静か。なぜか飛んでいる蝶々の羽音が聞こえそうなくらい。ふっ・・・。と感動に浸ったあとは下山ルートを目指す。日本一の富士山と日本二の北岳が同じ方角に隣りあって見えたのはここからの景色ならでは。小仙丈岳の頂上を巻きつつ、稜線上を歩く。眺めは最高。南アルプスの山々が一望ってとこですか。

  さて、下りは時間とのたたかい。バスの時間を考えると余裕たっぷりというわけではないが、まあ問題なく間に合うでしょう。富士山と北岳、それに甲斐駒や鳳凰三山など。また遠くには中央アルプスに八ヶ岳方面と、とにかく山々を見っぱなし。特に正面にある甲斐駒は標高が低くなるまでずっと様子がうかがえた。摩利支天はかなり危険そうな形をしていたが、地図上でも危険のマークが付いていた。稜線上を楽しく下ったところで休憩。ここから先は、ガイドだと登ってくるはずだった道。とても登る気にはなれない坂だったのでうちらの選択は当たりだったとちょっとうれしい気分。

  登り下り全行程を含めてもほとんどの人を抜いたはず。同じルートを辿ったと思われる2組のみ追いつけなかったくらいか。峠の山小屋に泊まっていた人たちはさすがに出発が早くて、時間に差がありすぎたみたい。登るときに降りてくる人たちが結構いた。稜線歩きが終わって急坂続きになったら、景色もなくなって黙々と下った。この辺でついに抱えていた爆弾が爆発。杉山さんは砕け散った。東高下山部ともあろうお方が、足を引きずりながらの下り。エンドーはたまに落ちる(落エン)くらいで、何とか問題はなさそう。家族連れや老夫婦などを抜きつつ、まだかまだかと下り続ける。登り以上に下りは長く感じた。着きそうで着かないから余計にそう感じたのかも。ラストはゴールスプリント。ダッシュでエンドーを振り切り、一着でゴール。ついつい両手を挙げてゴールした。遅れること2,3分でエンドーもゴール。残るは杉山さん。5分ほどの遅れて、何か物思いに耽りながら詩人チックに歩いてきた。が、うちらの用意する枝のゴールテープを見たとたんに走り出す。無事全員下山しました。

  バスの時間にはあと30分の余裕があった。でも待っている人が多いのを見て臨時便を出してくれた。峠では山でデジカメを探してくれると言った人たちもいて、忘れずに気にかけてくれていた。山はいい人たちが多いねえ。バスが早く出てくれたおかげで帰りが少しは早めになりそう。そういえば途中で抜いた神戸の老夫婦は最後のバスに時間に間に合ったのだろうか。ぎりぎりか間に合わないくらいに思えたがどうだったのか気になる。まあこの山の温かさなら、まだ人がいることさえわかれば、ちょっとくらいは出発時間を待ってくれそうだけど。

  散らかしっぱなしのスターレットを片付け、せっかくだからちょっと広河原をうろついた。こんなに山深い場所には初めて来たので感動はまだ薄れない。帰りも夜叉神峠を通ったが、林道も来たときとは違って昼間だから運転しやすい。途中で行きにはなかった落石がいくつかあり、標識どおり落石があることを実感した。迷った道も問題なく戻れて、コンビニのあるところまで来ればもう街。南アルプスよ、さらば。そして温泉に向かった。旅行雑誌の立ち読みや街人への聞き込みを行うも、いいところは見つからず。結局、甲府市内から一時間ほど走って、市内が一望できる笹笛フルーツパーク上のほったらかし温泉にたどり着いた。

  はじめはありえないと思った。スターレットはどんどん山を登っていく。フルーツ公園を越え、何かのサーキット場(?)を越え、細い山道へ。ゲートを越えて、一体このままどこに連れてかれるんだ?ほったらかし温泉の看板だけは(おそらく手書き)ずっと置いてある。マジ?とか思ったらひらけた場所にでた。こんな山奥にも関わらず何台もの車が止まっている。超人気スポットらしかった。恐るべし山梨。(by杉)

  露天と室内があって最初室内で体洗ってたら何か服でもはおっているのかと思うほどの見事な刺青の方々が2,3人入室。しかも、それ以外オレ一人。まあ、あまり気にせず湯に浸かっていると、彼らが鏡やタイルを洗い始めた。「お、意外にいい人たちよのう」と思っていたら、どうやら親分のための場所を準備しているらしかった。下っぱ時代はたいへんだなーと思った。露天に行くとすすきに月明かり、そして甲府市街の夜景。雨天時用の笠もある。これで500円なら人気があるのもトーゼンである。風呂上りに温泉卵を買う。オレだけは温玉あげを買う。はっきり言って温玉あげは絶品である。外はサクッサク、中はトロ〜リ。夜景を見ながらだからよけいにうまい!(byエンドー)

  温泉に入って癒されたが、かなりの睡魔が。すでに22時過ぎており、夕食の場所もなかなか見つからず。空腹は国道沿いのバーミヤンで満たされた。が、まだまだ東京は遠い。千葉はなお遠い。しかも帰りの運転はエンド−。不安・・・でも何とか無事に東京まで帰ってきた。杉山さんは後部座席でダウン。エンドーとサンクスで別れたのが24時15分。その30分後に巣鴨で杉山さんとバイバイ。杉山さん&スターレット、ありがとうございました。これで9月の縦走ができることが確認できた気がする。「これで9月の縦走が無理なことが分かったよ」と言いつつも、一人静かに燃える杉山さん。千葉まで続く一人ドライブの中で、誰よりもワセハン登山チームの誕生を喜んでいたに違いない。

おしまい

inserted by FC2 system