そこに山があるから

〜2004年 旅の軌跡 南アルプス編2〜


  見上げた雲が足の下に。星降る夜空はすぐそこに。下界から離れて何を思う。何ゆえそこを目指すのか。ここは来るべくして来る者のみが集う場所。天空の城へと続く、3000mの雲の世界。そして始まる秘境への旅・・・。迷わず行けよ、行けばわかるさ。

9月11日 1日目。

  南アルプスの登山拠点、広河原に降り立ったのは、“手負いのプリンス”越前守と、“風を読むランナー”うっちゃんの二人。昨夜は静岡で合流、山梨南部、南アルプス街道から秘境に突入した。9月11日2時頃、交通規制のある奈良田温泉付近で「おはようございます」と係員のあいさつ。「おやすみなさい」と心の中で返事をして、駐車場で3時間ほどの仮眠。5時の起床(すでに他の車はいない)で未舗装の道をドライブしつつ、心の準備。これから始まる天空への旅に、心躍らないわけがない。初めて足を踏み入れたのは2年前。3000m級登山のスタートがここ広河原だった。

  予定より遅れてのスタート。30分ほど遅れたが、6時半、スタートします。雲が晴れてきて最高の山登りになりそうな予感。2年前か、南アルプスに来たのは。懐かしの広河原ってとこですか。バス停があって、ゲートがあって、釣り橋があって。未だ姿を見せぬ北岳。でもテンションは上がってきた。広河原のロッジで入山記帳。6:40出発です。しばらくは樹林帯の中。しかも雲の中。景色は上に行ってからのお楽しみ。歩き始めて10分、水場あり。水道水をすべて入れ替える。顔も洗う。その間に越前守、先を行く。これが失敗だった。「分岐で待て」と言うべきだったか。どっちに行ったかわかんねー。分岐に気がついたかどうか。いちおう沢のコース(予定のコース)を10分ほど行くが人影なし。呼んでも反応なし。やはり他の人にくっついて行ってしまったのか?再び分岐に戻り、別のコースを登りなおす。どこ行ったー?(うっちゃん)

  猛スピードで登るも人影なし。どうやら越前守は予定どおりのコースを行ったらしい。地図を持たない奴がどんどん先を進む〜?遭難はしないだろうが、上まで登るか疑問。20分以上のタイムロスがあるが戻るか?迷う。が、迷わず行けよ、行けばわかるさ。この言葉を思い出し、突き進む。おそらく越前守も同じことを考えているはず。二俣での先回りを狙い、山道を果敢にアタック。まさかこんなところでトレイルランを強いられようとは・・・。

  8:40、白根御池小屋到着。越前守遭難・・・。どうやら予定どおりのコースを行ったらしい。二俣経由で稜線を目指します。マジきついって・・・。9:00、二俣到着。休憩する人多し。越前守探す。いない・・・。若者2人組に聞いてみるが、それらしい人は抜いても抜かれてもいないとのこと。飯でも食いながら待ってみる。あー失敗した。汗。はぐれた白根御池分岐から御池小屋まで1:40。御池小屋から二俣までトレイルランで0:20。ここまでで足を使い果たした感じ。やばい。ていうかやばかったけど、二俣で越前守を待つこと1時間。食事と睡眠で少しは回復。どうやら越前守は先を行っているらしい、と判断。追います。二俣〜小太郎尾根間では雲の隙間から甲斐駒や鳳凰がちらついていた。写真をとりながら、ハイペースで追う。が、燃え尽きてあきらめモード。肩の小屋か、さいあく北岳山荘で会えればいいやと、のんびり休みつつ登る。結果、無事、北岳肩ノ小屋で合流できた。(う)

  二俣で追いつけなかったのは予定外。越前守のペースがそこまで速いとは思わなかったし、こんなにでかい休憩ポイントでも休まないとは予想外だった。ガイドで3時間のところを2時間で走ったのはさすがにきつかった。天気と木々のせいで景色が楽しめなかったとはいえ、走り抜けたら道しか記憶に残って無いよ・・・。稜線を目指しつつも、何か越前守の手がかりは?などと考えた。考えることは同じで、越前守も道しるべのところで地面に「福」の文字を残したりしたらしい。残念ながら、その道しるべはチェックしたが、登山者が休憩しており、地面の文字は残ってなかったよ。

↑ 北岳山頂

↑ はるか遠くに北岳山荘

  一方越前守は分岐で待とうかと思ったが、結構はっきり書いてあった気がするので、うっちゃんも大丈夫だろうし、今のうちにアドバンテージ持っていたほうがいいかなと思い、先に進む。しかし、道が分かりにくい・・・。とりあえず前の人のペースに合わせ、前の人の行く道を行く。8:45、出発から2時間で二俣に着いた。いいペース。このまま肩の小屋方面へ突き進む。そこから尾根に登るべく急な坂が・・・。ここまででうっちゃんが追いついてこないところをみると別の道を行ったのでは、と思いとりあえず合流点へ急ぐ。つもりだったが、左足のひざがまたうずきだした。しかたなくズボンを脱いで湿布を張った。そうしたらだいぶラクになったので休み休み尾根に行くためにがんばる。途中、MATSUIの巨人時のタオル(単にオレンジに55と書いてあるもの)をしたおじさんに事情を話し、最悪山頂で待てばどうにかなるかなと思いつつ、分岐ではなく合流点に到着。ここで待つか考えたけれど、うっちゃんのことだ暴走しているに違いないと思い、先を急ぐ。この合流点に着いたのは10:30頃かな・・・。そこからまた登り。やっとこさ小太郎尾根に到着。そこで休憩し、道しるべの下にとりあえず「福」の文字を残しておく。きっと気づかないだろうなあと思いつつ先を行く。(越前守)

  11:30頃、肩の小屋に到着。あらためてMATSUIさんに所要時間をみせてもらう。すると向こうのコースは今私が来たコースより時間が1時間くらい余計にかかることが判明。とりあえず12時まで待ってみることにする。今回は雲で景色がダメですねえ、という話をしつつ待つ。で、12時になりました。うっちゃん来ないがとりあえず行くか、と思った12:02。突然「越前守〜」との声が!?どうやらうっちゃんが追いついたようだ。山登りで5時間近く単独で登ったことも初めてだし、しかも自分のペースで登っていたので、これはこれでいい経験したなと思いつつ、うっちゃんが休憩に入る。12:15、肩の小屋を出発。13:00くらいに頂上に・・・。ここから先はうっちゃんといっしょなので省略。(越)

  小太郎尾根が見えてくる頃には樹林帯を抜け、南アルプスの山々が姿を見せ始めた。とは言っても雲に包まれており、その隙間から見える程度。それでもだんだんと標高が上がるにつれ、横から見ていた雲が下に見え始め、いよいよ世界が変わり始める。越前守の無事を祈りつつも、高まるテンションに、足は速まるばかり。二俣で会った若者2人組にここで追いつく。40分以上の差を詰めたわけだから、ここまで来ても追いつけない以上は肩ノ小屋に期待するしかない。二俣で待たなければ、もうとっくに追いついていたな・・・。結局、一人で肩ノ小屋まで来ちまった。

  12:00、北岳肩ノ小屋にて越前守を捕える。12時まで待って来なければ行くつもりだったとのこと。ぎりぎりだった。途中いろんな人に相方行方不明とさわぎまくったので、無事合流の報を入れねば。13:00、北岳山頂。晴れ。ただし、周りは雲。遠景はほとんど見えず。太陽が出るとブロッケン現象が!?初めて見た。うっすらとはいえ、きれいだった。食事をしながら30分ほど頂上を楽しむ。現在の体力、越前守、左ひざに爆弾を抱える。すでに力を使い果たし、よれよれ、けぺけぺ。でも前には進む。ファイッ、ファイッ、燃える闘魂。(う)

  標高3000m、北岳の肩でついに合流。ここからついに二人での山旅が始まる。ってもう頂上はすぐそこなんだけどね。やっと会えたことで一気に体力回復。ていうか精神的にも疲れたよ。でもテンションが全てをカバーする。目指す頂はあれか。近くに見えて遠いのはいつものこと。それでももうすぐそこに迫っている。そして雲を抜け、頭上には青い空が広がるのみ。ただ静かに登頂の喜びをかみしめる。時間差でやってきた感動。「YA―っ」「HAA―――!」って不自然にシャウト。13:00、北岳3192.4m、制す。

  頂上はそれほど広くはないが、十数人がのんびり。さてウチらものんびり・・・する前に、もしかして!見れたよ、半ば強引にだけど、ブロッケン現象が!雲が下にあって、頭上に太陽、崖から身を乗り出して、雲に影を写せば、その回りには虹色の輝き。いい感じでしょ!?「けっこうブロッケン現象が見られるらしい」っていう越前守の話を聞いていなければ考えもしなかったが、見事に雲に影を映せたよ。誰もそんなことはしてなかったけどね。まあ知る人ぞ知る、みたいな。得した気分。これはこれで満足。日本で2番目に高い山頂で食う昼飯はうまいぞ☆

  北岳山荘を最初に見たときは、「ここが天空の城か!?」と思わせるような雄大さと、そこに襲いかかる暗雲に自然の脅威を感じずにはいられなかった。そして、その雄大さはそのまま道のりの遠さに・・・。遥か遠くからでも見えていた分、ずっと見っぱなし。なかなか近づいてこなかった。さすがに序盤の走りが効いてきて、足に疲労感たっぷり。“風を読むランナー”もスタートからわずか15分ではぐれるという風は読めなかった。それ以上にやばいのが越前守。遠くに姿を見せた富士山に、一時息を吹き返すも結局撃沈。“手負いのプリンス”の左ひざは限界だったらしい。

  15:30、北岳山荘で落ち着いてます。15時ちょうどに到着。いや〜疲れました。布団の上でくつろぎ中。夕食は17時だそうです。え〜と初の山小屋利用。テントを組み立てないで済みます。夕食も朝食も出てきます。布団で寝れます。大部屋で雑魚寝だけどね。20時消灯だってさ。16:22、ちょっと外をうろついてきた。夕方になって気温が下がり肌寒い。風と雲はあいかわらず。北岳もはっきりとした姿を見せてくれなかった。大部屋にはぞくぞくと登山客が入ってくる。すでに布団を敷いて寝ている人もいる。越前守も爆睡中。ZZZ・・・。夕食は何が出るかしら。17:00、夕食、メニューは・・・忘れた。うまかったのは確か。デジカメで撮ったやつを見て。人で混みまくり。2交替で夕食です。(う)

  ということで長い時間を歩き、やっと北岳山荘に到着。山小屋泊まりは初めてなので、なかなか楽しみ。足が治ればいいなと思いつつ。受付で三重の人登場。ローカルネタはわかりませんです。湿布を張り直し、仮眠。17:00になり、夕食の時間。本日の献立はこれ(写真参照)。温かい飲み物とご飯に満足。そんでもって夕焼けを見に行く。富士山方面は見事な雲海。北岳もきれいに見れる。でも夕焼けは・・・。朝焼けに期待しつつ、本日はこれにておやすみ〜。明日無事に帰れることを夢に見つつ、寝床につきましたとさ。(越)

  布団1枚毛布3枚の寝具。朝夕食2食、水1リットル付きで7700円。なかなかに立派な山小屋は寒さと風雨から登山者を守ってくれる。やっと着いた北岳山荘。受付はかわいい女の子。三重から来たことを告げると、奥から三重県津市出身のお姉さん登場。こんなところで三重県民に会おうとは・・・。「遠くからはるばるようこそ」って、このコこそ遠くからまたなんで山小屋に?疲れて辿りついたゴールで待っていてくれた天使にめろめろの越前守。かわいかったから良しとしよう。大部屋の宿泊者は大人子供でいっぱい。おじさんおばさんがほとんど。若者少なし。女の子は・・・いないねぇ。他の部屋は探検してないが、2階には個室もあるようだ。外にもテントがずいぶん張られていた。あまり大きいのはなく、2〜3人用のものばかり。1人サイズのテントは単独っすか。

左上、夕食、右上、山荘玄関付近

左下、大部屋、右下、朝食

  夕食後、とりあえず天気予報を見るためにストーブの置いてあるところでテレビ。ビデオの内容は山と渓谷社の、タイトルは忘れたが北岳関係のあるところが流れていた。広河原→北岳肩ノ小屋→北岳→間ノ岳→農鳥の縦走コース。とりあえずとなりのおっちゃんとこんなに早く歩けないよ〜というようなビデオにいちゃもんをつけてみる。20分くらい経過・・・。うっちゃん耐えかねて眠りに行く。。。しょうがないので天気予報は私が見ることに・・・。「キタダケソウ」やら農取→農牛の由来などを流しつつ、時間は18:50くらい。このテレビで天気予報をどうやってみるのかと思っていたら別のテレビ(玄関にあった)が突然つく。そこで民族大移動。一人を残し、玄関のテレビの前に移動した。そこでTVの天気予報をやる前にニュースをやっていた。どうでもいいニュースでした。やっとこさ天気予報。甲府では朝のうち曇り、昼過ぎから晴れ。ふ〜ん。とりあえず山梨県内は日中は晴れることがわかった。そして一度部屋に戻る。人にテレビを見させておいて、ほぼ寝ているうっちゃん。とりあえず分岐の件で疲れているであろうとほおっておく。私の隣に人が来ないことが判明したので、荷物を隣に移動。その後再びビデオを見に行く。今度の内容はやはり北岳。ルートは広河原→肩ノ小屋→北岳→北岳山荘→八本歯→広河原。と、ルートが似ている。これは見なくてはと思い、見る。ストーブの近くに痛めた左ひざをおき、ビデオに食い入る。ビデオでは草の名前やらいろいろやっていたが、覚えられたのは「キタダケソウ」オンリー。う〜ん・・・。(越)

  ビデオが終わったのが、19時40分頃。そこでビデオを見ている最中「星がきれいですね〜」という話をしていたのを小耳にしたので、消灯前に見てみようと思い、寒くないような格好をして外に出る。すんごい星空・・・。ここはうっちゃんを起こしてでも見せなければ(あとで何を言われるかわからない)、と思い、起こしに行く。どうやら眠りが浅かったみたいで、すぐに起きる。最初は行くか悩んでいたみたいだが、行くことを決心。約5分間、満点の星空(天の川もしっかり見えていた)を楽しんだ。このとき、明日の朝はいい天気になるだろうと思いつつ、寝床に20時に入る。その後待っていたのは、すごいいびき。すさまじい。1人だけならまだしも4人。。。しかもタイミングをずらしてかいている。そのうち1人は途中無呼吸状態に・・・。この人やばいなあと思いつつ、気がついたら翌日であった・・・。次の日へ続く。考えてみたら18:55〜19:20くらいまで日記を書いていたなあ。(越)

雲海の水平線が明るみを帯び・・・

言葉を失う時間

  19:00前後、すでに寝てしまいました。飯の後、部屋でごろごろ。夕日が見られるかと稜線に出るも期待外れ。雲で何も見えず。凍えて山荘に逃げ込む。布団敷いてごろごろ。荷物片付けて、ストレッチして寝る準備OK。天気予報を見ようとストーブの前で待つも、睡魔が・・・。おやすみ。ZZZ・・・。が、20:00頃起こされた。満天の星空に願い事をしに行こう、と越前守に誘われる。1時間くらい寝てもう動く気も失せていたが、めったにない機会なので外へGO。星、ホシ、ほし。星降る夜空に感動でした。寒すぎ。戻って即寝。今度は朝まで・・・。と思ったのに、いびきの四重奏でボリューム大きすぎ。いびきのみならず、息の根も止めてやろうかしらくらいに思っているうちに眠ってしまった。今日は足を使い過ぎ。初日からとばし過ぎた。はぐれたせいで・・・。燃え尽きた。おやすみ。明日こそは天空の城に辿りつけますように。(う)

  寝てる間に想像したこと。明日の朝は日の出ですばらしい朝焼けが見れるに違いない。間ノ岳へのピストンは3000mの稜線縦走で最高の展望が見れるはず。いびきの息の根は越前守が止めてくれる。受付にいた三重出身のきれいなお姉さんを越前守はおとそうとがんばっているはず。下山した後は温泉でヘブンにザブン。これだけいろいろ考えてもいびきはうるせー。そんな感じで、山の夜は更けていった・・・。(う)

9月12日 2日目。

  山の上は酸素が睡眠が浅い?んなの関係なく爆睡。気がついたらもう夜明け前だよ。起きる人の気配が多少感じられるも、まだ寝ようとする。が、「雲海がすげーよ」みたいなささやきが聞こえてくる。眠いが、これを見ないわけにはいかない。布団から出る。寒い。窓の結露を手で拭うと、ガラス越しに広がる絶景。テンションが上がる。一気に目が覚めた。越前守とともに外に(気持ちだけ)駆け出す。東斜面に。まだ暗いが、一面に広がる雲の海。これから訪れる神秘的な瞬間を予感させる。雲海の水平線が明るみを帯び、その光がじわじわと自分の方に迫ってくる。みるみる東の空が明るくなり、夜明けの空にグラデーションを作る。そして一筋の光、ご来光・・・言葉を失う。きっとここが天空の城。登った者のみが味わう、感動の瞬間が訪れた。この雲海からの日の出を撮りまくり。これを背景に撮りまくり。多分、どんなに山に登っても、なかなかここまでの絶景は見られない。本当幸運だったと思う。他の登山者も3,40人くらいが眺めていたが、感嘆の雰囲気が漂っていた。今までの山登りで最高の瞬間だ。寒さも忘れて見入っていた。

  4:00前後、人が数人起きだしたはず。気配を感じながらもまだ寝ておく。4:30過ぎ?朝焼けがすごいとの話がちらほら出始める。これは見なくてはと思い、起き上がる。寒くないような格好をして外に出る。出てみてもまだ星が残っている。。。これからは数枚の写真をお楽しみ下さい。言葉は無しです。はぐれた原因をなった水を沸かし、具たっぷりのみそ汁を飲む。というか具多すぎ。しばらく写真を撮りつつ、朝日が昇ってくるのを待つ。5:25、ついに朝日があがってくる。朝焼けの北岳・間ノ岳(少なからずこのときはそう思っていた)を背景に写真を撮りまくった。と、感動した後、5:30、朝食。朝日を見て、部屋に戻ってみると布団が敷いてあるのは私のところだけ。とりあえず片しているとうっちゃんが催促にくる。超てきとーにたたみ朝食に出かける。本日の朝食はこれ。美味しくいただきました。(越)

  6:15、準備を整え、間ノ岳へと向かう。私はフル装備。うっちゃんは荷物を山荘に置いてきた。とりあえず稜線を歩く。まず一つ目のピークが見えてきた。中白峰(3055m)に登頂しました。間ノ岳は次くらいかなと思いつつ、先へ進む。いきなり下り。目の前の山は迂回。う〜ん、この山は間ノ岳ではないみたいだ。(越)

  てな感じに朝から日の出と絶景を楽しんだ。間ノ岳への往復もこの天気なら最高。初日遠景が見れなかっただけに今日感動は急上昇な感じ。中白峰通過後は3000mの稜線歩き。背後に北岳、西に仙丈、その奥に甲斐駒、東に鳳凰。この景色は素晴らしすぎる。鳥肌が立つほどの感動に間ノ岳への足は速くなる。が、気持ちとは裏腹に越前守はきびしー状況。でも中白峰〜間ノ岳間はとりあえず高いピークは巻いていたのではないだろうか。まあ何が言いたいかというと3000mオーバーの稜線歩きはサイコーだよ、と。歩いた奴にしかわからんけどね。(う)

  初日の疲れもふっとぶ景色の壮大さにテンションは高くなるばかり。本日の目的地、間ノ岳へ着くと南アルプスの中心部にいる自分たちとその景色に酔いしれる。何で山に登るのかって?理由なんか要らない。こんな景色を独り占めできる時間。人の小ささと自然の雄大さを知る時間。そして誰も見たことのない世界を味わえるのなら、そこに山があるから登ったっていいんじゃない?

  いつものタンクトップでパシャ。あっちもこっちも撮りまくる。越前守は燃え尽きる。間ノ岳の頂上付近でおやつ。みかんの缶詰は美味かった。甘くて舌にしみわたる♪間ノ岳からは南アルプス南部もよく見える。荒川岳、悪沢岳、塩見、聖岳などなど、ひととおりの山々が見えていた。ちょうどツアーで登ってきていた一行のガイドがいろいろと話していて、耳を傾けていた。南部はなかなか山深くて、足を踏み入れるのは大変そうだ。(う)

左、間ノ岳頂上。右、南アルプスに酔いしれる。背後、左から仙丈、甲斐駒、北岳

  日本で2番目と4番目に高い山を制して、何となく燃え尽きた感があるが、相当な山奥に来ているだけに、帰り道も気が抜けない。というより、マジでがんばらないと帰り着けない。間ノ岳から北岳山荘に戻り、置いていった荷物を回収。三重のお姉さんに「またね」ってバイバイ。その頃に天気が崩れだす。とは言え、雨ではなく雲がわいてきただけ。北岳の南東部、八本歯の南側は何も見えなくなったが・・・。越前守さらに燃え尽きる。とりあえずは目的地を踏んで、力が抜けたか。無事下山できるのか?(う)

  北岳への登山道との合流で単独登山のおじさんに遭遇。「北岳に来ただけになっちゃう」からと天気が悪くなる前に山頂を目指し、去っていった。日帰りとのこと。八本歯で昼飯。あまった食べ物をたっぷりと食す。まだ先は長いので余分は残しておくけど。下山は越前守が単独で登ってきた沢コースを辿る。登りにまった二俣の合流地点までは岩とハシゴで相当急な下り。肩ノ小屋をめざすのとここを登るの、どちらがラクか。沢まで下りてしまえば、あとはそんなに大変じゃないはず。バットレスの岩壁を登るありえない人々を見つつ、下をめざす。

  登りで休んだ二俣分岐。昨日のことがはるか昔のことのように感じる。越前守、完全にダウン。左ひざに抱えたバクダンが爆発。景色が見えなくなり、木々の中を沢伝いに歩くが、もうボロボロっすね。「固定しましょうか?」と山を知った感じの青年に心配されつつも、下山。長い道のりの最後は、行きにはぐれた原因となった水場での休憩。あと10分で終わる下山を惜しむかのような休憩だ。が、帰りも悲劇はここで待っていた。顔を洗おうとかがんだ瞬間に滑る・・・。バキッ。ああ〜?!旅を共にしてきたサングラスが・・・。真っ二つです。全ての危険をこいつが一身に浴びてくれたのでしょう。ちゃんと持って帰るからね。そしてゴールのつり橋。「YA―っ」「HAA―――!」って自然に出たシャウト。これがオレたちの登りかた♪

  下山記帳も忘れずに。長〜いバス待ちの列。こんなにも多くの人が山を楽しんできたわけか。でも、これだけ居ても、あんな景色を見られたのは、ほんのちょっとの人だけだよね、多分。じわじわと染み渡る感動。感無量です・・・。広河原へ無事?生還。燃え尽きた越前守と二人、再び南アルプス街道を戻る。山深き地を実感しての帰り道。渓谷がすごい。岩も崩れそう。ていうか、いつ崩れるのかドキドキ。(う)

  奈良田で温泉に浸かる。もうちょっとでも登りたくないのに、温泉は丘の上。この旅、最後の登りはここだったか。ふやけるほどに温泉に浸かる。北岳山頂直下で会ったおじさんにここでも会ってしまう。「北岳に来ただけになっちゃう」を合言葉に本人であると断定。笑うしかないね。温泉を最後に南アルプスにさらば。街道をひたすら南下し、身延の方へ出て行く。山々にさらば。ありがとう、南アルプス。(う)

9月13日 おまけの3日目。

  山の余韻に浸りつつ、静岡の街中で夕食。力尽きるようにどこぞの道の駅で車中泊。一夜明けた今日は、なんとなく海へ。御前崎。なんとなく先っぽだから、行ってみる。きれいな海と灯台。南国ちっくな道を快適にドライブ。裸足で岩場に入ってみたが、魚が多くて、透き通った海はきれいだ。昼飯は市場にある店で、新鮮な海の幸を食べまくる。美味い☆

  御前崎からそのまま海岸線を走り、浜岡大砂丘へ。砂漠だ。サボテン発見。防砂林の松林がすごかった。砂丘よりもこっちの松林のほうがすごい気がするぞ。なんとなくぼぉーっとしてみた。越前守はひざの爆弾のせいで、歩くのもきつそうだ。そんな感じで静岡で解散。南アルプス、いい旅だったぜ♪またどこかに登るぞ。だって、そこに山があるから。

おしまい

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