秘境あふれる熊野路

〜2006年 旅の軌跡 南紀編〜


【旅のミチシルベ】
◆目的地・・・本州最南端、潮岬。世界文化遺産熊野古道。
◆やりたいこと・・・本州最南端を踏む。那智大社を歩く。
◆泊まるとこ・・・熊野灘の海沿い。
◆温泉・・・川湯温泉、仙人風呂。湯の峰温泉、つぼ湯。

【旅の軌跡】

1月28日

  紀伊半島の東側を暗闇の中、迷走。高速もなく、唯一の国道を、いくつもの峠を越えながら、ローテンションで走ってきた。コンビニのおでんが温かい。そんなドライブ。東京・大阪・名古屋などの大都市から新幹線や高速を駆使してもたっぷり3時間。紀伊半島南部は、残された数少ない秘境をたっぷりと抱えている。

  世界文化遺産に登録されたことで有名になった熊野古道。昨夜の国道沿いにも熊野古道○○の道、とか○○峠とか。そんな看板をいくつか見かけた。昼間なら寄り道したいところだが、満点の星空とはいえ、歩く気にはなれない。そう、山奥でもないのに、星空がきれいだった。この辺りがすでに都市部から遠く離れている証拠だ。ラジオの入りもわるかったし。ていうかFMは入らないし。FM紀伊とか無いのか?

1月29日

  七里御浜の空が明らみ、水平線に赤い太陽が姿を現す。冬の熊野灘に吹く風は冷たく、砕ける波はひそやかに。波打つのは砂利の浜も同じ。弓状に続く海岸線、その長さは20km以上。太平洋からの日の出、いいね。何気ないただの日の出だってテンションは上がる。そうそう見ることもないでしょ。寒いのに思わずはしゃいでしまった。

  道の駅、パーク七里御浜に別れを告げ、海沿いの国道をどこまでも南下する。三重から和歌山へ。日曜の早朝だというのに、そこそこ車は多い。ていうか観光客か?さて、目的地は?ここまで来たら、もう行くっきゃないでしょ。本州最南端!青空に太陽が上がり、いい天気。南国ムードがいい感じ。でも実はちょっと寒い。

  本州最南端の町、串本町に着いた。まだ9時前。橋杭岩っていう景勝地。朝早めで人はいない。奇岩と澄んだ海が見どころか。観光マップで目的にロックオン。ひときわ目立つ橋を渡り、ドライブする道は、サイクリングしたら気持ち良さそうな南の島の気配。道路の行き着いた先は樫野崎灯台。なんかトルコと関係があるらしく、トルコの記念館やお土産屋がある。道路の至るところにみかん。缶に「100円入れて下さい」と網に入った10個ほどの小粒のみかん。安っ。で、早速食す。甘っ♪いいね、南国の味だ。

  朝早いせいか、もともとここにはそんなに人が来ないのか。静かな散歩道を楽しんで、大島にさらば。ジョギングするおじさんやらサイクリングする青年を抜き去り、ついに来た本州最南端、潮岬。ただそれだけなのに、うれしかったり。灯台から本州最南端の海を眺め、温い風に吹かれて満足。海も空も青い!でも本当の最南端は崖下の岩場かしら。釣り人が数人いるのが見えた。海から船で行くっぽい。

  本州最南端で南国ムードを満喫した後は熊野那智大社へ。世界遺産熊野古道とは那智大社を含む熊野三山を参る道のことだ。那智大社は観光地としても栄えており、観光バスが多い。雰囲気は京都をちょっと地味にした感じ?京都に行ったことがないので、わからないがそんなイメージ。寺社を歩いてみる。女の子はそれっぽい格好になって、那智大社付近を歩くことができる。いろんな人に「写真撮らせて」って言われてた。何かいいかも。コスプレ?男のは、無い・・・。

  その独特の雰囲気ゆえか、大して信心深くない私でも、何か荘厳な気配を感じてしまう、気がする。一歩外れるとそこには石畳の古道。かつてはここを多くの人が参ったのだろうか。三重塔から見渡す那智大社の山々。風に吹かれて流れ落ちる那智の滝が想像以上にスケールがでかいことに気づく。石段を下りると那智の滝の麓へ。なかなかにでかい。こんな滝に打たれたら無事じゃ済まないな。

  日本一でかいおみくじがあった。振るだけでも一苦労している様子。ここは一発決めなくては。でかいおみくじをひょいと持ち上げ、「キェ〜イッ」。引き当てたのは、「3番です!」って巫女さんからもらったのは、大吉!「待ち人・・・やがて来る」、微妙〜。でも、なんかいい予感。那智の滝に打たれ、那智大社の雰囲気に心洗われ、昨日までとは違う自分になった。なんて言ってみたいもんだ。熊野三分の一山を制す。栃の実のまんじゅうを食して、さらば。石が有名なのか、碁石がやたらと売っていた。もしや熊野古道の石畳から作っているのか?!

  熊野三山の一つ、新宮市にある熊野速玉大社へ行く。が、ここは那智大社と違って、人なんかほとんどいない。観光地でもなく、ただの神社。建物自体はそれなりに立派なんだけど、街中にあるせいか、それとも大したことないのか、寂れたもんだ。いちおうここも含めて世界遺産なんだけどなあ。お参りをして熊野三分の二山を制す。

  紀伊半島には秘湯と言われそうな温泉が数多くある。紀伊半島自体が秘境みたいなもんだから、そこにある温泉は秘湯になっちゃうんだろうね。冬になると姿を現す川湯温泉、仙人風呂もその一つだ。冬限定で川をせき止めて、湯船を作り、川底から湧く温泉で川全体が温泉に変わるという冬の風物詩。大きさでは多分日本一の広さなんじゃない?

  お湯に浸かってしまえば寒さもなんのその。むしろ温泉が湧く場所は熱い。川原に作った簾の囲いの中で着替え。それは女の子。男は、その辺で着替えろって?!まあそんなもん。明るいうちはみんな水着で浸かってた。足湯だけの人も多数。早朝や夜は普通にお風呂に入る人もいるってさ。川底は裸足であるくとツボを刺激してくれる。コケもすごいけど。入ったあとにあっという間に湯冷めしそう。たっぷり浸かるっきゃないね。15m×50mくらいの広さ。快適。川沿いの宿からは丸見え。まあそれもサービスだ。大人気なり。

  川湯温泉からさらに山奥に入る。湯の峰温泉、日本最古の温泉だ。山深いこの温泉郷を訪れる人はそんなに多くない。ここにあるつぼ湯、湯の色が七色に変化するとか。完全に貸切で、今は待ち時間が1時間以上。日が落ちはじめて寒くなってきたのにそんなに待てない。代わりに卵に浸かってもらう。源泉で温泉卵作り。何人か作り中。源泉横にある湯筒地蔵。別名子宝地蔵。湯の峰温泉は子宝の湯とも言われるそうだ。この温泉に浸かって子宝を♪集落を抜ける流れは温泉で湯気が上がっていた。

  すれ違うのにも困るような細い山道が抜けた場所が熊野三山最後の一つ、熊野本宮大社。すでに日没で真っ暗。厳かに佇む本宮大社を暗闇の向こうに想像する。真っ暗な木々の中に入ったらやばいって。熊野三山、あと一つはまた来なきゃだね。建物も見てないから。

  湯の峰で作った温泉卵がうまい。これをガソリンに、日没後の山道、帰路を急ぐ。最南端を踏んだのはいつのことやら。帰り道はまだまだ遠い。高速道路どころか道も少ない南紀。この交通の不便さゆえの秘境。熊野古道を歩いて参ったかつての旅人はすごいな。まだまだ秘境を求めたくなる南紀、南国に恋する旅だった。世界遺産を味わいに、今度はもっと歩こうか。

おしまい

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