雲中の両神山独り歩き

〜2002年 日帰り旅行記 奥秩父編2〜


  思いつきもいいところ。家を出たのが10月25日の1時頃。夜出の日帰りになってしまった。夜の道路は空いているが、足尾へ行くのと違い、秩父方面は、国道といっても山道続き。秩父手前の峠でスピンしかかった以外は順調に深夜のドライブ。暗いせいで道もわかりにくく、両神山の登山口である日向大谷に着いたのは4時頃だった。一人だと何かかなり恐い。目の前の斜面に人の顔がいっぱいウヨウヨしているように見える・・・。早く寝よ・・・。

  6時50分起床。たいして寝てない。昨夜は2台しかなかった車も今は5台に。目の前の斜面はなんとお墓だった。もしや昨夜見えたのは・・・。すでに入山した人もいるみたい。30分ほどごろごろしてから朝食作り。せっかくだから雰囲気を味わうために作ってみた。そうこうしているうちに2組ほど登っていった。のんびりしすぎ?そういえばこの手前にあった駐車場は1台も停まってなかった。平日の両神山ではこれくらいしか人もいないか。7時50分、スタート。入山記帳にちゃんと書く。だって一人だと何かあったときにやばいでしょ。全員書いているかわからんが、今日の入山も何人かはいた。単独登山も結構いるみたい。

  天気はまあそこそこ。快晴とは行かないが今のところ晴れ間も見える。一人だとペースを押さえ気味のつもりでも速くなってしまう。後の人を待つでもないし、なかなか疲れないし。息は切れるが歩けてしまうから、そのせいで汗もけっこうかいてしまう。休むと汗が冷えて寒い。陽の光が届いたのも最初だけ。あとは木々の中に入ってしまい、日陰続き。景色は見えず。両神神社の鳥居をくぐった後は、石像がやたらと現れた。どうやら何かを祭っているらしいが、山で見る石像は威圧感があって恐い気もする。登山者を見守ってくれていると思えば心強いが。

  清滝小屋までですれ違ったのは二人、抜いたのは三人。特に人気でない山だとこんな感じなのか。1時間半ほどで着いた。小屋の手前では何とかの井戸というのがあり、美味しい水が飲めた。といっても山で飲むと何でもおいしいかも。小屋の辺りでは紅葉もきれい。ここまでの登山道は“〜童子”と書いてある石碑や“〜武尊”みたいな石像がかなりの数あった。一人で登っているからと大声で歌っていたら、道を曲がったら人がいたりしてちょっと気まずかったりもした。

  小屋から先は一気に急坂になった。稜線上に出ると両神山が雲の合間からわずかに見えた。完全に曇りだが、きっと頂上では雲海が広がっているに違いないと自分に言い聞かせて登る。登山道がいきなり厳しくなり、ロープや鎖場がある。そんなに危険ではなかったが。途中、足尾ニ柱神と書かれた小さな祠?を発見。本当にこの山は神さま?だらけだ。霧の中たどり着いた両神神社は木々の中にひっそりとあってちょっと神秘的。この神社、狛犬ではなく狼だった。何でだ?ここで休憩。あとちょっとで頂上。しかし、人がいない・・・。静かすぎて、雰囲気はいいけど・・・なんか出そう。時間はまだ10時ちょい過ぎくらい。日が出ているらしくうっすらと明るい。どこからともなくコンコンコンコン・・・と聞こえてきた。何かとよく耳を澄ます。目を凝らす。きつつきだった。しかも3羽も。他にも鳥がいる。霧がかって人が見えないのか、一人くらいいても気にならないのか。おかげバードウォッチングができた。

  神社から先はそんなになかった。帰ってきた人がいたので尋ねるともうすぐそこだという。すぐというわりにはちょっと厳しめの道も歩いたが、ロープと鎖を一つずつくらいクリアしたら頂上だった。今までの曇りがうそのように山の反対側は晴れている。両神山の頂上がある稜線を境に東と西で完全に天気が変わっていた。登ってきた側は雲がたまって何も見えない。反対側はもう最高。奥秩父の山々が色づき始め、遠く八ヶ岳方面まで展望が広がっていた。前回登った甲武信岳方面は残念ながら雲で見えなかった。うおーーーっ、単独登頂成功ーーー!!頂上まで登って報われた感じの両神山。山頂ではタンクトップになって記念写真。カメラ頼んだおばさん、アングルにこだわってくれてありがたいんだけど、寒いから早くして・・・。

  せまい頂上だったが、かなりの人がいた。どうやらそれなりの時間に登りはじめると頂上につくのが大体これくらいの時間になるらしい。まだ11時前なんだけどね。頂上を満喫したら神社まで戻ってお昼。帰り道は何度か登山道を外れてしまった。下りはどこが道だがわかりにくかった。わざわざ重い荷物を背負ってきたんだから、お昼は温かい飲み物を味わってのんびり。しかし、単独登山は頂上を制した後は、やることがない・・・。神社からは休憩なしで、往路を半分ダッシュで下りてきてしまった。頂上でいっしょだった人たちを次々に抜き、清滝小屋でも休まず。崖側の足を踏み外したときには一瞬ドキッとしたが、ちょっとペースを落としつつもまたダッシュ。抜くたびにおばさんたちと軽いトーク。おそらく今日登った人たちは全員抜いたと思われる。最後は単独登山のゴールをじっくりと味わい、一歩一歩を踏みしめてのゴール。14時くらいだったかな。

  下山届けを忘れずに書き、駐車場へ。バス停ではおじいさんが一人、「体調がいまいちなので、途中で引き返した」と。ちょっとかっこよく車に乗せてあげて、街のバス停まで送ってあげた。「山だと中高年が邪魔でねえ」って、このおじいさんはもう年金もらってるそうだが、気持ちはまだ若いらしい。どこか温泉でもと思ったが、気持ちよくなったら間違いなく眠ってしまいそう。早い時間だけど帰ることにした。それでも秩父を過ぎた山の中で睡魔に襲われ休憩、そして爆睡。2時間ほど寝てしまった。ほとんど寝てないから当然か。おかげで帰りが遅くなったことは言うまでもない。

  初の単独登山。経験として一度くらいは登ってみてもいいが、やっぱり山はみんなで楽しく登りたいね。でも、何か自分と向き合い、自然と向き合う一人旅。まるでマラソンのように気持ちいい達成感と男のロマンがそこにはあったような気がする。さて、次は・・・どうする?

おしまい

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