弘前から車、26時間でやって来た男

〜2000年 夏休み日帰り旅行記 養老渓谷編〜


  日程的にかなりきつかった。富士登山から帰ってきた翌日に海に行ったのである。寝不足と疲れで体力はもつのか?そんな疑問が頭にあったかどうかは定かではないが、楽しかったことにかわりはない。8月18日、りゅうの電話で7時起床。ホントはこの時間に迎えに来るはずだったが、りゅうも寝坊で、「今から家を出る」そうだ。私は荷物の整理で寝たのが2時。りゅうはインターネットにはまり3時に寝たとのこと。二人でドライブなのに不安だ。わざわざ家まで迎えに来てくれたのだが、渋滞で着いたのは9時。そのあと、海に行く荷物の補充でりゅうの家まで戻ってしまった。久々のりゅうの家ではコーヒーを飲んで休憩。結局ちゃんと海に向かって出発したのは11時頃だった。

  弘前から26時間、途中4時間の仮眠で、一般道のみを走って帰ってきたというりゅうのマイ軽自動車。中古で買った愛車はすでに走行距離が2か月で8000キロを超えたとか。その車で松戸から一般道を走って養老渓谷へと向かった。海に行くつもりだったのだが、天気がいまいちだったので、川でもいいかなという気もしていた。道は混んでおり、流れてはいるが車は多かった。内房の海をめざすが、道路状況で行き先を養老渓谷に変更。房総半島の内陸部に入っていくと最初に現れたのは高滝ダムだった。疲れたのでここで休憩。車を停めた後方にフェラーリの黒いオープンカーが停まっていたのが気になった。めちゃ浮いてた。乗っていたのは孤独を愛してそうな30歳くらいの男が一人。この場に合わぬエンジン音を響かせて去っていった。きっと「俺より強い奴に会いに」行ったにちがいない。そのあとを追って出発。さらに上流へと向かった。

  養老渓谷には人を迷わせる魔法がかかっているらしい。地図にない道は山の上の方まで続き、下りてくると進行方向が逆になっていた。気が付いて戻ると、さっき通ったはずのトンネルの前に到着。奥養老の温泉地を抜けるのに同じ道を3回も通ってしまった。なんとか道を発見してしばらく進むと亀山ダムの案内板が立っていた。ここは近くを通過しただけだった。あとから知ったことだが、どうやら遊んだ川は養老渓谷ではなく亀山ダムに注ぐ川の上流だったらしい。清澄温泉付近だったと思われる。正確にわからないのはどこも山道がただ続くだけだったからである。走行中、たまたま目に付いた場所に足を踏み入れた。車を崖の上に停めて、木々に囲まれてじめっとした狭い坂道を下りていく。渓谷の景色が広がるとともに古い吊り橋が現れた。車で来ようにも来れない場所だったが、立て札には、「大変老朽化が進んでおりますので車では渡らないでください」の文字。橋から水面までは5,6mほど。水の中に魚がいっぱい泳いでいるのが見えた。 

  吊り橋をダッシュで渡るとけっこう揺れたが気にせず。でも渡った先で道がなくなったのは気にしないわけにはいかなかった。まあ川に行くのだからよいが。川岸の斜面をなんとか下りたが、サンダルで来たりゅうはこけた。川には種類はわからないが大小多くの魚とオタマジャクシが大量に遊泳。謎の洞窟も発見した。200mほど下流にはキャンプ場らしき所もあったがそこまでは川に阻まれて行けず。車に戻るのにも一苦労だった。こんな感じの山にはヒルがいるかもと思ったが、ここでは思っただけだった。

  川から戻ってからは海を目指して狭い山道を天津小湊町へと走った。清澄という地名と東大演習林の看板がすぐに見え始め、以前友人がこの辺の山でヒルにおそわれたという話を思い出した。その瞬間右足にチクッと何かが。もしやヒルでは?!ジーパンをまくると予想どおりヒルが吸い付いていた。引っ張ったが、なかなか取れず、しぶとかった。車内足下を探すともう一匹ヒルを発見。すぐに除去した。まだどこかにヒルが居そうで落ち着かなかった。天津小湊町に着いたのは4時過ぎ。途中でのんびりしすぎたらしい。海に入るにはちょっと遅かったかも。岩場を探して車で走っていると千葉大の海洋研究センターを発見。りゅうは何のためらいもなく敷地に入っていった。残念ながらここからは岩場には行けず、ここの裏側の方に場所を変えた。まあまあきれいな岩場で魚や貝もいたが、潮が満ちてきたのと水が冷たいのとで30分ぐらいしか遊べなかった。夕日を眺めながら波打ち際にたたずんで、物思いに耽っているうちにからだは乾いてきた。人がいない場所だったのでシャワーがなく、潮っぽいからだでの帰り道となった。

  海でつかれたりゅうに代わって、帰りの山道は私の運転だった。慣れないガソリンマニュアル車、しかも軽自動車でどうなるかちょっと心配だったが、パワー不足により山道で後ろに車がつまるのを除けば問題はなかった。途中、コンビニでエネルギー補給し、りゅうにタッチしたあとは眠りぎみ。渋滞に巻き込まれることもなく、道を間違えたり、勝手に有料道路に入ってしまったりしつつも、無事に帰宅。りゅうの家に着いたのは9時過ぎ。夕食をごちそうになり満腹。帰りは松戸まで送ってもらった。明日にでもりゅうは弘前に帰るという。次に会えるのは冬か春か。人知れぬ野望を心に秘め、明日へと向かう二人であった。

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