ツール・ド・八ヶ岳完走記

〜後ろから何番目?限界の完走劇〜

LOVE・WING うっちゃん

4月17日

  八ヶ岳山系北部、八千穂高原を舞台に行われるヒルクライム。コースは標高2127mの麦草峠をゴールとする距離26km、標高差約1500mのロードレース。国道299号の峠道入り口、標高600mの佐久穂町からスタートする。自転車の大会に参加するのは今回が2度目。お祭りイベントのような大会だった富士山のヒルクライムに比べ、どうやらこの大会は本格的なレースみたいだ。スタート前の雰囲気がちょっとピリピリしてるかも。人数も500人くらいの参加か?それなりの選手が集まっているようにも見える。

  カウントダウン、「10秒前、5,4,3、・・・」、雪の残る八ヶ岳を遠く望む山間の町はずれに号砲が響く。と同時に、ほとんどの選手が前へ出る。そのままかなりのスピードで走りだす。スタートからわずか10秒、あっという間に集団から置いていかれる。レースを進める位置取りが重要ということか。それにしても速すぎる。あんなペースでゴールできるわけがない!後ろには数人いるだけ。唖然とする・・・。スタートは9:00。5分おきに3グループに分かれてのスタート。その第1グループは100人もいない。

  とり残された上に、序盤からきつい登り。格好は気にしていられない。最初から立ちこぎ。麓のほうでは、わずかながらも地元の人たちの応援がある。単独で走っている後ろの方の人にとってはありがたい。田舎町の応援の声に応えつつ、すでにやばいかも、と不安なまま、八ヶ岳の姿が見えなくなる林の中へと入っていく。

  スタートから15分、早くも5分差でスタートした後続の先頭集団が追ってきた。レベルが違うことはよくわかった。おとなしく道を譲る。とても付いていけるスピードではない。縦長の列で次々に抜かれる。実業団やら社会人チームのジャージ、それなりの実力者がほとんどか。素人の参加率はきわめて低そうだ。まだまだレースは始まったばかり。先が思いやられる・・・。

  高原の森の中は別荘地。それぞれの家の前ごとに数人ずつ観客がいる。毎年この時期になるとレース観戦のために別荘に来る、といったところか。ゼッケンNO.の名指しで応援されるとがんばらないわけにはいかない。きついがそれに応えるようにペースをあげてみたりする。30分経過、10分差でスタートの最終グループの先頭が迫ってきた。20人くらいの集団で先頭交代をしながら引き合っている。これに加われればラクなんだろうけど、実力が違いすぎて付いていけない。集団からこぼれて走る選手に少しくらいつくだけで精一杯だ。

  この大会、距離表示がない。国道に標高の表示があるから、徐々に上がってるのはわかるが、いったいどれくらい走ってきたんだ?一度車で下見しただけ(しかも下りだけ)では記憶があいまいだ。景色が高原っぽくなりつつあるのと、八ヶ岳が徐々に迫ってきているのは確か。スタートから45分。すでに選手はまばら。それでもまだ後ろから抜かれる。

  前半の斜度に比べて中盤は緩やか、に感じるだけか?壁となる八ヶ岳の東斜面をなでるように延びるワインディングロード。林間を抜けて開けた景色はまさに高原の山道だ。どうせのんびりなんだから景色を楽しむ。スタート前にも思ったが、高原を自転車で走るのって、想像以上に気持ちいいかも。

  1時間経過。20km地点の制限時間11:00。どれくらい来たか不明だが、斜度のない部分でそこそこ稼いだ。関門は通過できるだろ。とは思いつつも足の回転は上げ気味。カーブを曲がるたびに、次のカーブが見え、なかなか目指すゴールは見えてこない。春とはいえまだ雪が残る山岳地帯、日陰は寒い。

  比較的ゆるやかな部分が続く八千穂高原スキー場手前。少しでもタイムを稼がなくては。20kmの関門はちょうどこのスキー場前。ここまでひたすら抜かれるばかりだったが、完走のためにはこのままじゃやばい。前後合わせて5人。全員関門を意識しているようだ。全体的にスピードが上がる。ここら辺のリゾート地で再び応援の声が聞けるようになる。その声に応える余裕を見せると、「余裕だねえ、もっと行け〜!」って大きな声。余裕じゃないです。わざわざ応援してくる人へのサービスです。

  関門の通過は問題ない。が、コース上で最も応援の人が集まってくれているスキー場を前に、選手たちもスピードを上げて突っ込む。これには見ている人たちも盛り上がる。ホントは関門通過とともに、転がり込んで休みたいところ。でもこの大きな声援がバテバテの背中を押す。何よりその「行け〜!」の声に、行かなきゃ自転車マンじゃない!

  残り6km、ゴールは見えたようなもの。制限時間からみて、後続はもう数えるほど、おそらく10人くらいしかいないだろう。いよいよ迫ってきた八ヶ岳麦草峠、冬季閉鎖のゲートを通過して残り5km。車より先に峠道を走れるわけだ。道路わきの雪が1mくらいの壁を作る。開通したばかりの道に表示される急斜度。MAX9%以上。無理!粘りに粘るも23km手前で限界。足が動かない!停まる・・・。自転車を押してなんとか進むが、それでもだめ。そんなもんか。座り込んでストレッチとかしてみたり。抜いていく人も声を掛けてくれる。自分だってきついだろうにありがたい話だ。

  意識朦朧というわけではないが、なぜか眠くてやばい。雪山で眠ったら最後だ・・・。そんなとこへ現れた唯一の応援は今回の旅友、越前守。車両通行止めの峠道を歩きで雪山登山。かなり目立っただろうに、おいしいところを持っていく。「先にちょっと下りがあるから」、この言葉に期待して再び走り出す。

  言葉どおり、先にあった下り坂で、最後の力を使い切る。ゴール後の選手たちが横たわる控場所を横目にあと500m。「もうゴールはそこ、スパートだよ!」ってスタッフ。いや、マジ無理だって。それでもレースの終わりを待ち焦がれる気持ちと、もっと楽しみたい気持ちに揺れる。自転車もフラフラに揺れる。ゴールが目に入り、スタッフの「ラスト、カモ〜ン!」に応えるようにフィニッシュ。「よくゴールしたね〜」、3時間も八ヶ岳を満喫しちゃいました。「独り占めだね」、たっぷりと♪

  20kmまで1時間半、20〜26kmのゴールまでで1時間半。ラスト3kmで50分。完全に燃え尽きた。最後尾ゴールもおいしいかも、なんて思ったりしたが、まだ後ろに数人いた。タイムは下から5番目。これでも十分ネタになるな。結果はともかく、ツール・ド・八ヶ岳、完走。素人にしては完走だけでも上出来か。クライムを十分に味わった。まだまだ修行が足りませんなあ。これもいつかリベンジに来なきゃダメ?毎年、八千穂高原に春の訪れを知らせる風は、ツールで駆け抜ける色とりどりの自転車マンなのかな。

おしまい

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