第3回 Mt.富士ヒルクライム

〜ゴールまで Come Together!〜

LOVE・WING うっちゃん

6月11日

  早朝の富士山麓に降りしきる雨が、レースを前にして、熱くなる4000人のサイクリストたちを必要以上に冷やす。寒い。午前6時、すでに会場には多くの選手たちが集まり、スタート位置に陣取っている。とは言っても自分のスタート時間まではまだ1時間以上。最初のスタートが7時。そこからカテゴリー別に5分間隔のスタート。ロード29歳以下は一番最後、先頭のスタートから30分後だ。

  ゲストや市長さんたちが号砲を鳴らす中、次々に富士スバルラインへと北麓公園を後にする。自転車ではおなじみの今中大介、アップ中に見かけた元F1レーサー片山右京、しゃ乱Qのまこと、などなど。有名人もスタートしていった。あれ?今年はお天気お姉さんは?!待ち時間の長さに緊張が増すかと思いきや、寒さでテンションは下がる一方。とか言ってる奴には負けねえぜ。3度目の正直。雨?5合目まで行けば、雲の上に出るんじゃないの?!待ちに待ったスタートの瞬間。ゆっくりと隊列が動き出す。チームメイト、越前守と拳を突き合わせ健闘を祈る。よっしゃ行くぞ、あのゴールへ!

  北麓公園から計測スタート地点まで雨の中のパレード走行。追い上げなんてレースはできない。前から前から攻めるのみ。スバルラインに入るコーナーで、毎年のことながら大外に振って声援に応え、そのままコースイン。スタートだ。序盤、体が温まらないうちの急勾配をどう走るかがまずは最初のポイントだ。予想どおりのきつさ。それに雨に思った以上につらい。呼吸が思うようにできない?晴れればコースの正面に見えるはずの富士山の姿も真っ白な雲が全てを覆い隠す。雲の中へと続く登り坂を走る無数の自転車。独特の光景だ。

  5km地点の通過は23分半、ちょっと遅めだ。この雨でペースが上がらない。苦しみつつ一合目に到達。願いも空しく雨は止む気配なし。視界の悪さに早々にゴーグルを外してしまった。二合目に達する前に、はるか遠くで号砲が響く。トップがゴールしたようだ。早いってば。まだ1時間ちょっとでゴールかよ。雨なんて関係なし?10km地点通過、この5km23分弱。気持ちペースを上げたつもりだが、思うようにはスピードに乗ってない。

  第1関門、10.5km地点。ここで地元女子高生の応援の声があるはずなのにっ。雨のせい?今年は無いの?給水も不要、声援がないなら通過だ。三合目でちょうど全体の半分くらい来たか?1時間半の目標タイムに黄色信号だ。標高1800mを越え、空がうっすらと明るくなってきた。これは雲の上に出られるかも。背中のカメラを取り出そうとして驚いた。手が思うように動かない。寒さにいつの間にか手がしびれている。ギアもほとんど変えずに走っていたせいで、体がこんな状態になっているとは気づかず。固まった筋肉をほぐすように、ちょっとリラックスしてみる。15km地点通過、この5km23分強。この時点で1時間9分36秒。悔しいが、悪天候じゃなくても今の実力ではこんなもんだったのか?来年こそは1時間半でゴールしてやる。

  雲を突き抜けることはなく、雨に打たれて走り続ける体は冷えきっている。17.2km地点、第2関門から響く太鼓の音は、毎年ここで聞かせてくれる応援の声だ。昨年も一昨年もここで完全にストップ。けれど、今年は違う。水分補給も不要。「行っけ〜、がんばれ〜!」、給水所のお姉さんありがとう♪ここまで来たら後は少しでも早く、速く前進あるのみ。疲労が足にきているが、まだまだこんなところで止まるわけにはいかない。

  目標タイムは1時間30分。どう計算してもそのタイムでゴールできないことは、かなり前にもうわかっている。それでも、少しでも前へ。スタートから19km地点、山岳ポイント区間の計測開始地点でちょうど1時間30分。スパートして無理矢理19kmまで持っていった。これが今の実力。でも休む暇はない。すでに山岳ポイント区間はスタートしている。平均勾配8%の登りで、気持ちだけで足の回転数をあげていく。みんな少しは意識しているのか、この区間では全体的にペースが上がり気味。その証拠にこれまで抜きながら走ってきたのに、ここではほとんど抜くことができず。20km地点1時間34分50秒、山岳ポイント区間の終了でいよいよレースは終盤だ。

  長い登り坂と冷たい風雨に体力の消耗は激しい。自転車を降りている人も少なくない。山岳ポイント区間で残りわずかな脚を消費する。走り続けるかぎり、体力の回復はありえないが、せめて乱れた呼吸だけでも落ち着けるように意識する。岩陰に入り、風の音が消える。いくつも続いた急カーブの最後の一つを曲がりきる。そして目の前に立ちはだかる壁。直線の急坂。これを登りきれば、あとはゴールへと続くフラットなロード。

  そうと知ってか知らずか、ここまで来て歩き出す人もいる。気持ちはわかるよ。こっちだって余裕は無いから。でも人の応援なんかする余裕は無いし、同じレースを走っている以上は前にいる奴は一人でも多く抜く。激しい鼓動が不思議と静かに聞こえる。この坂を越えたら勝負だ。

  開ける視界。終盤のコースを埋め尽くす自転車の列。ハンドルを握りなおし、予定どおり、残った力を爆発させる。スピードメーターが15キロから数秒で40キロオーバーの表示。ここまで来て、このスピード。そう出せる奴なんかいない。周りの自転車が止まって見える。30台、50台、70台・・・かわしながら数えていく。

  いいペースの奴もいる。追いつき、数秒間だけ後ろにとどまる。下山組から「いいぞ!赤いの、行け〜!」、切り裂く風の音よりも声援の方がよく聞こえる。赤?違うな、今日は雨に濡れてエンジだぜ!ウォータースクリーンを突き破り、さらにスピードアップ。100人から先は、抜いた数なんか覚えていない。トンネルを抜け、目の前に見えてきたゴールゲート。カメラの場所がわからずに、声援に応えるように3回もガッツポーズ。最後は雨の空に拳を突き上げてゴール!タイムは1時間49分58秒。この2秒がうれしいね。

  ゴール付近でチームメイト、越前守を待つ。次々に完走するサイクリストたちを見ているとそれぞれの表情が面白い。笑顔のゴールや、力尽きてその場で倒れる人、仲間に迎えられる人、みんなさまざまだ。結局越前守と合流したのは別の場所。いつの間にかゴールしてたらしい。寒さと雨の中、五合目2305mの標識の前で記念写真。ゲストのしゃ乱Qまことさんと一緒に♪奥さんの富永美樹さんも一緒に映ってくれてもよかったのに。いい記念になりました。

  雨の中の下山はブレーキ握りっぱなしで、なかなかのスリル。1時間以上も下りっぱなしで、ブレーキも激減り。コースアウトする人も多数いたようだ。最後まで止まなかった雨。レースが終わったスバルラインに降り注ぐ柔らかな雨は、参加者全員へのシャンパンシャワー代わりか。来年、また晴れたスバルラインに来よう。今度はもっと熱いレースを味わいに!

<記録>
タイム : 1:49:58 (5km: 23:28 - 22:50 -10km: 46:18 - 23:19 - 15km: 1:09:37 - 25:14 - 20km: 1:34:51 - 15:07 - Goal: 1:49:58)
総合男子 : 1921位/3404人
ロード男子29歳以下 : 334位/491人

おしまい

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