第5回 グランフォンド福井

〜ツールという名のもとに〜

LOVE・WING うっちゃん

6月3日

  全国各地で自転車のビッグイベントが開催されたこの日曜日、富士ヒルクライムに出場しそこなった私は福井のグランフォンドに参加した。朝7時、スタート。今庄365スキー場からいきなりの下り。先導車に誘導されての徐行。ゆっくり下るのもこわいような激坂。最後はこれを登らなきゃならないのか・・・。ずっと下まで続く600人の自転車の隊列は、なかなかすごい光景だ。スタートから軽く感動してしまった。下りきったところで誘導が外れ、今度は長い長い登り坂。山間部ならではの狭いワインディングロード、最初の難関は標高差300mの栃ノ木峠だ。

  いきなりのヒルクライムに序盤から縦長の展開。静かな森の中にペダルの音と乱れた呼吸音が響く。脚の差でペースは様々。それでもガンガン行こうという者はいないらしく、みんな山間部の景色とツールの雰囲気を楽しむ感じ。が、早くも落車発生。幸い登りの低速だったので、4,5人が巻き込まれただけで済んだが、車線もない林道では逃げ道もない。注意を促すという点ではよかったか。適度な緊張感が全体に伝わった。そんなところで栃ノ木峠を、そして続く椿坂峠をクリア。滋賀県に突入した。

  標高の高さを感じるには十分な山々が広がり、木之本までは緩やかな下りが続く。長いツールを考えると脚の温存と安全優先で抑え目に走る。50キロも出てれば十分。そう思ってたのは少数派のようで、ガンガンみんな抜いていく。奴らイっちゃってるな。平野部まで下りきったところで、このツール初の信号ストップ。おかげで先行する集団に追いついた。タイミングよく最後尾に付き、ここから田園風景の中を集団走行。ホントはNGなんだけど、2,3人の並走がかなり見られた。200人もいたら守れないんだろうなあ。最後尾から全体を見渡しながらついていく。40km巡行でもラクに走れてしまう自分に驚きつつ、ツール・ド・フランスを思わせる大集団のサイクリングに肌が震えた。これがツールだよ。

  最後尾は後ろに気を遣わないで済む分、ラクだ。密集状態で実力もわからない連中と一緒に走るなんてヤダからね。スタートから1時間、ツール・ド・あいちで走ったコースに重なる。ここからしばらくは下見済みの道。トンネルと峠と湖畔の道路。登りと信号で自然と集団が分散される。後方から追い上げ、登りでうまく前へと出るものの、下りで追いつかれるパターンの繰り返し。それとともに体力的にもきつくなってきた。そんな頃に最初のチェックポイント、大浦補給所へと辿りついた。

  いつもどおり前残りで走ったおかげで、補給所にたまる多くの人に追いついた感じ。集団からこぼれても、次の集団に引いてもらうかたちで何とかペースを維持。600人もいると、どう走っても誰かしらいるから助かるし、何より楽しいな。メイドさんに給水され、体力気力ともに回復。さて残り3分の2、福井県へ、峠越えへと向かおうか。ここまでちょうど2時間、やっと9時です。

  琵琶湖畔から若狭湾へと抜ける山道。大浦補給所からのリスタートで集団は細かく分かれた。田園風景の中、10人ほどで 峠を越えることになる。この区間は緑に囲まれたのどかな道。谷間を流れる川は透き通っている。うざいのは抜け道として走っているトラックだけ。前を走る黄色いジャージの二人、マイヨ・ジョーヌに引かれて、未だ快調に走行中なり。

  滋賀県から再び福井県に入って、長い下りに変わる。ここでもまた気が狂った奴らに先行を許す。60キロは出てるのに、それを抜いてく奴ら。下りくらい漕がずに脚休めたら?国道8号から市街地を迂回するように住宅地を抜ける。信号や交差点が多く、速く走れる場所ではない。ここで再び集団は30人程度に増え、このまま次の補給所へと向かう。

  青い海と空と砂浜が見事に夏を先取り。海風を受けながら海岸線をそんな気分走る。チェックポイントではない水晶浜の補給所。スルーするかと思いきや、みんなピットインする。当然私もメイドの給水をもらいにピットイン。が、いないっ!ここはあまり癒される場所じゃないらしい。水もらって、砂浜を眺めてバナナを食べる。海日和。10時半、暑いぞ。

  夏が待ち遠しい水晶浜にさらば。敦賀側に抜ける馬背峠へ。いくつ目の峠だ?!ゆっくり走って脚を休めつつ、後続を待つ。が、なかなか来ない。90km以上走ってきた後だと、みんな登りがきついらしい。振り返ればずっと後ろまで点々とサイクリストが続いている。水晶浜の補給所にいた奴らが次々に追いついてきたか。結局誰にも引いてもらえず。一人で峠をクリア。いい眺めは一瞬で、すぐに下り。息を吹き返したようにガンガン下る奴らに抜かれながら、脚を休める。下りは怖くて飛ばせない。奴ら、転んだことないのか?!

  下りきったところで敦賀湾の海岸線へ出た。ここから敦賀半島の先端までの往復。海岸沿いで平坦かと思いきや、意外にアップダウンが激しい。加えて風も強い。完全な向かい風ではないが、なぜか追い風以外の方向からばかり吹きつける。強い日差しを浴びて海でウインドサーフィン、砂浜ではドリンク片手に昼寝。そんな優雅な雰囲気を見送りつつ、気がつけば100kmを通過。すれ違う自転車の数がそれほど多くないのは、みんなもっと先に行ってしまったから?それとも私がかなり前の方を走っていたり?

  半島の先端、立石岬の補給所で11時半、ここでは休む気満々。だったのに、たまたま居合わせた ゲストの井上選手(NIPPO)が引いてくれるって言うから、休む間もなくそのまま折返す。が、井上選手、最初の自販機にピットイン。先に行ってって、言われたのに、わずか数分で追いつかれ、一瞬で抜き去られる。おいおい引くんじゃないのか?!限界の120km、未だにいい脚で粘ってると思うぞ。

  気比の松原を抜け、赤レンガ倉庫前の交差点で二段階右折。道のど真ん中を右折していく奴らがいるが、それは交通ルール違反だぞ。ここでの1,2分のロスなんてすぐに追いつくから今さら関係ないし、何より守るべきところは守る余裕が欲しいよね、サイクリストとしては。と、私についてきた数人と話してみたり。

  そして最後のチェックポイント、135km地点の曙補給所に12時半に到着。さすがにもう限界。メイドさんの癒しも及ばず。うどん食って体力回復。マッサージコーナーも大人気だ。残り15km、ゴールまで400mを登らなきゃならない。おいおい、行けるのか?7人で最後の登りに挑む。クライマーとしてはここは負けるわけには行かない。が、135km走ってきてからの登りはわけが違う。付いていくのも必死だし、あっさり落ちていく奴もいる。ツタンカーメンの応援も力及ばず。

  ラスト5kmで黄色い声援と冷たいお姉さんたち。柄杓を片手に「水、要ります〜?」って、「ええ、ぜひ」、ビシャっとかけられ、一気に涼しくなる。おいおいかけすぎじゃない?!でも10メートルくらい背中を押してくれて温かいサポート。前も後ろも離れてたのでサービスか。直接エネルギーを注入され、いよいよゴールへと迫るトンネルを抜ける。濡れた体には寒すぎる・・・。

  カメラが遠くから見えてたからね。かなり意識して走ってみる。カッコつけられるのもここまで。だって最後はあの上り。行けるわけね〜。と思いつつも、クライマーの意地をみせ、最後の力は「ゴールでメイドが待っている!」という妄想が後押し。ツールという名のもとに走るからには、「坂で足を地面についたら死ぬぞ」が合言葉。スタッフの声援と観衆の中、単独で悠々とゴール。当たり外れはあるけれど、ちゃんと待ってましたよ、メイドさん。150km、ツールの1ステージ並のコースレイアウト、たっぷりグランフォンドを楽しめた。さあ、次は遥かなるシャンゼリゼを目指そうか。

  ちなみにゴール地点には力尽きた選手たちがごろごろ。メイドさんにお疲れ様のそばと弁当をもらい、おまけの笑顔で癒される。ゲストの二人、井上選手&中島選手にサインをもらって、終了。順位や記録が関係ないサイクリングってのもわるくないな。純粋にツールを楽しんだ。そんな充実感のあるグランフォンドでした。スタッフのみなさん、楽しいイベントをありがとうございました。

<記録>
タイム:6時間38分
(走行時間:6時間16分)
平均時速:23.9km/h

おしまい

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