第1回 ツール・ド・宮古島

〜灼熱の100マイル〜

LOVE・WING うっちゃん

7月6日

  トライアスロンの聖地、宮古島で7月5〜6日に開催された自転車のロードレース、ツール・ド・宮古島に参加してきた。エントリーしたのは6日のロードレース100マイル。南国、宮古島が自転車一色に染まった週末にLOVE・WINGから一人での参戦。他の参加者も多くは単独での参加。完全な個人レースで100マイル、宮古島1周と半分、炎天下の壮絶なレースが繰り広げられた。

  スタートから7kmはパレード走行。まずは来間島のサトウキビ畑を一周。島民に手を振りながら、いい気分でサイクリング。橋の上で10分遅れでスタートの100キロの部とすれ違う。その間にも位置取り争い。そして宮古島に戻り、最初のコーナーを曲がったところで車のクラクションを合図にレースがスタートした。

  徐々に上がるスピードは想像以上のハイペースに。気が付けば40キロオーバーで、どこまで上がるのか。集団はあっさり縦長に。付いていくべきか、抑えるべきか。いきなり判断を迫られる展開。100マイルという長丁場と、自分の実力を考え、とりあえず落ち着いて、ペースを上げずにとどまる。トップグループと第2集団に分かれ、そのまま市街地へと入っていった。

  早朝にもかかわらず、街中では大声援。宿泊したホテルや宮古島民の応援を浴び、ロードレーサーが駆け抜ける。私を含めた第2集団はトップグループから落ちてきた人を吸収しながら13人での走行。ヘビー級のスプリンターに、風除けにもならない小柄のレーサー、60歳オーバーのおっさんと個性派揃いのメンバーでお互いに先頭を引き合い、池間島へと向かう直線で見事なトレインを形成していた。20km通過37分、すでにトップグループは見えない。

  慣れない集団走行で後方に控えるつもりが、丘を越えるごとにスピードが落ちる集団に仕方なく先頭へ。後ろでラクしていればいいものの、そうも言っていられないのが紳士な自転車マンたるものか。平地ではいまいちでも上りではクライマーの力の見せどころ。他の奴らに、付いてきな、とばかりに坂を鬼引きする。

  もう一人、クライマーがいた。同じスコットに乗る小柄のレーサー。上りになる度に二人で前に出て引く。それでもクライマーの座は譲れないんだよ。池間島への橋、高低差の少ない宮古島で数少ない長い上りを制し、存在をアピール。続くスコット乗りとともに、ここにチーム・スコット・LOVE・WINGを勝手に結成。11人のレーサーたち、オレら二人に上りは任せな。

  そんな余裕は無いはずが、集団の先頭を走ると気持ちいいのも確か。35キロ程度でこれだけ普通に走れている自分に驚く。40km手前で最初のAS(※エイドステーション)、給水ボトルがなかなか取れずにめいいっぱいスピードを落としてしまった。が、他の選手も単独で抜ける気は無く、直後にはまた集団を形成しなおした。池間島への橋でトップグループとすれ違いにならなかったことで、まだそれほど差が開いてないことを知り、意外だった。あまりの暑さにペースがいまいちなのかもしれない。

  池間島から南下する道は向かい風。さっきまでのスピードはこの風に助けられていたらしい。が、それでも上り坂は先頭を行く。他の人が下がってくる期待に応えないわけにはいかない。下りにかかって引ききれない私に代わり、今度は60歳オーバーのおっさんが前へ。おいおい他の奴らはどうした?!思わず振り返ったのを合図に、ここからはなんと全員で見事な協力が続いた。平地を引く者、上りを引く者、タイミングよく先頭が入れ替わり、50km1時間30分で通過。それでも一人、また一人と落ちていき、60kmを過ぎる頃には10人に減っていた。

  第1関門を余裕で突破。ASでの補給にも慣れ、10人の集団はなんだかんだ言いつつもトップグループからこぼれてきた人を次々にかわしていく。東平安名崎が待ち遠しい70km過ぎ、10人での踏ん張りどころか。上りでは、引くというよりリードを作って、下りで休みつつ集団に戻るといったパターンでなんとか喰らい付く。チーム・スコット・LOVE・WINGはそれでも上り坂は先頭を行く。

  きつくなってきたところで見覚えのあるジャージを発見。ファンライドの細沼氏だ。ちょっと言葉を交わす。どうやらトップグループに付いていって落ちてきたらしい。70kmを過ぎてからぽろぽろと落ちてくる選手が目立つが、いったい前には何人いるんだ?!東平安名崎の折り返しで100キロの部の先頭集団が後方2km程度に迫っていることを知る。100キロの奴らにとってはもう終盤だけど、こっちはまだ80km通過2時間29分。やっと半分来たところだ。

  青い海と灼熱の太陽、給水は常に全身に。濡れたウェアも次の給水までには乾いていた。トップグループがはるか彼方に消え、実質勝負はこの第2集団内だけに絞られた。そう思って踏ん張ってきたものの、残り8人となった第2集団から次にこぼれたのは私だった。宮古島南部の丘陵はアップダウンがこれまで以上に続き、100キロの部の先頭集団に飲み込まれたドタバタでここまで共に走ってきた友情はあっさり引き裂かれた。

  90km通過、ASでステーションで水を取らずにスピードを維持、ここで離されたら終わりだと思い勝負に出るも、開いた差を詰めきれず。気が付けば集団からこぼれ、前も後ろもぽつりぽつりと走るのみ。ラスト10キロとなってそわそわする100キロの奴らにペースをかき乱された感じか。メイン会場のゲートをくぐり100km通過3時間6分。当然自己ベスト。それもかなりの。上出来、さあ宮古島の中心部へ行こうか。空ボトルを投げ捨て、残り半周へ、どうにでもなれ。

  落ちてきた選手を捕らえ、二人で先頭交代をつなぐ。状況が苦しいことはわかっているのでお互いに協力しあう。が、それも長くはもたず。私の方が先に力尽き、先に行ってもらう。ここから最後まで暑さと戦う一人旅。サトウキビ畑のスプリンクラーを浴びにいきたくなった。水切れで脱落者が相次ぐ丘陵地帯。ASの間隔がこんなに空くとは予想外。それ以上にこの暑さが想像以上。追い詰められていたとはいえ完全にレース運びをミスった。

  そうは言ってもまだ50km残っている。ボトルに残るわずかな水でつなぎ、次のASを待ちわびる。126km、とにかく給水ボトルを受け取りまくり、体にかけ、のどに流し込み、全身を冷やす。水分が体に行き渡るのを感じつつ、沿道の応援や給水に助けられる。130km地点4時間20分、ぎりぎり持ち直したか。

  再び東平安名先、折り返しでは第2集団を一緒に走っていた人たちが意外に離れてなくて驚いた。みんなもきつかったらしい。お互いに掛け合う声に励まされ、島民やスタッフからの声援にも力をもらい、100マイルの終盤へ。140km4時間44分、本来ならゴールスプリントで使うはずだったわずかな力をしぼり出し、宮古島の道の先へ。

  ラスト20km、全ての上りでクライマーの意地を見せるヒルスプリント。何本も行けないけど、とにかく限界まで連発。5時間半を切るにはこれしかない。150kmの通過5時間6分。水をかけてくれる人、アクエリアスを補給してくれる人、前との差を教えてくれる人。とにかく、あまりの声援やサポートに思わず泣けてきた。前も後ろもいないけど、行けるとこまで行ってやれ。ラスト5kmからの距離表示はみるみる減っていった。集団なら勝負どころと決めていたラスト2kmでの上り坂。最後のヒルスプリントは力尽きたけど、それでもゴール前、感謝の気持ちを込めて見せる渾身の“スペシャル”。これが赤い稲妻のスプリント。

  「さあ、また一人選手が入ってきた。猛スピードで突っ込んできたのは、東京から参加、LOVE・WINGうっちゃん選手、今ゴールイン!」。実況が盛り上げてくれて、思わず叫ぶ恍惚のゴール。100マイル、5時間26分で走破。初ロードレース、この距離で、このタイム。ロードでの自信に繋がる結果だ。南国で味わう感動と暑さと熱さ。これはクセになるぞ。来年はぜひみんなで、走りに、遊びに行きましょう!

<記録>
20km 37:29.63
30km 16:24.50
40km 17:08.76
50km 19:30.12
60km 19:03.28
70km 19:44.08
80km 19:42.22
90km 17:58.46
100km 19:14.50
110km 24:47.74
120km 26:56.90
130km 22:00.96
140km 24:57.17
150km 21:39.87
160km 19:25.89
男子100mile男子総合

うっちゃん 37位/97人中(年代別9位)
タイム:5:26:04.08
平均:29.4km/h

100km 3時間06分15秒
100mile 5時間26分04秒

おしまい

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