第6回 Mt.富士ヒルクライム

〜ただ自転車のためでなく〜

LOVE・WING うっちゃん

6月7日

  2年連続5回目の富士ヒルクライム。この大会には特別な思いがある。自転車を始めてこれでちょうど5年。この第1回大会、「富士スバルラインを自転車で」走ってみたいというのが自転車を始めたきっかけ。だから、ここに帰ってくると、つい感慨深くなってしまう。第2関門まで走るので精一杯だった第1回、スタート時間に遅れてぼろぼろだった第2回、初めて止まらずに走りきった雨の中の第3回、今の愛車CR1“眠紅”で日本中のクライマーに挑戦した第5回。そして今年、多くのレースをともに戦ってきた“眠紅”と、満を持しての富士ヒルクライムへの挑戦。会場に入っただけでここまで気持ちが昂るとは・・・やばい。このテンション、最高だ。

  5000人。過去最高の人数が富士北麓公園にスタンバイしている。このスタート前の風景は圧巻だ。7時にアスリートクラスがスタートし、3分後に女子がスタート。LOVE・WING自転車部女子エース、かずえの健闘を祈る。7時10分、自分の限界に挑む、そして、この5年間の全てを結果で出すためのレースがスタートした。

  とはいっても、計測開始地点まではパレード走行。デジカメで写真を撮りながらリラックスしていく。アスリートクラスを除く一番上のクラスでデジカメを持ってのレース、しかもこのレベルで写真を撮りながら走る人なんていない。入賞争いをするわけじゃないし、デジカメを持ったところで何分も変わるわけじゃない。それなら1分くらい遅れても、写真を撮って楽しみながら行ったほうがいい。それが私の自転車の走り方。今日もこのスタイルで、タイムも楽しみ方も自己ベストを狙っていく。

  コースレイアウトはかなり頭に入っている。序盤のきつめの区間と終盤のフラット区間の走りが大きくタイムに影響していくるはず。飛ばさず無理なく余裕を持ってスタート。はるか向こうに見える富士山へと、24km、1300mを上る至福の時が今年も始まった。雲ひとつない快晴。これほど力を発揮できるコンディションは無い。さあ、行こうか。

  料金所手前でスペシャの応援団。今日はスペシャのユニホーム、自転車は違うけど、応援してくれる。さすがに申告タイムが一番早いクラスだけあって、序盤からみんながんがん行く。見送るのと付いていくのとを冷静に判断しながら、徐々にペースを作っていく。3km地点くらいで、しゃ乱Qのまこと発見。「みんな飛ばしてるな〜」とのこと。28分の記録を持つ彼がここならそんなにわるいペースじゃないと思ってもいいかも。5人に一人くらいはまことに声をかけていた。5km手前の駐車場でコースを外れ、富士山の全景と自転車の列を写真に収める。そんなことする奴はいないので、応援の人が驚いていた。5kmの看板が見えてきたところでそろそろペースアップ。ぎりぎり18分台の通過。これであとは昨年と同ペースで行くだけで30分は切れる。こうなってくるとあとはどこまで記録を伸ばすかだな。

  7分前に出た女子の選手を捉えはじめ、速い流れと女子選手の遅めの流れがはっきりと分かれてきた。クライムでもいいトレインに乗れれば、それだけラクになる。が、残念ながらなかなかちょうどいいスピードのトレインが都合よくあるわけもない。ここは一人で上がっていく。7km手前で先行するかずえに追いついた。意外と余裕はありそうだ。あれならまず完走は問題ない。好記録を祈る。10分後にふくちゃんもスタートしたはずだけど、どうなってることやら、かずえに追いつけるか?

  第1関門手前の10km通過、この5kmは16分42秒。これはわるくない。脚もまだ余裕がある。5分後に出た選手の上位数人がこの辺で追いついてきた。早いな。この中だるみしそうな区間、相手が速くても見送るわけにはいかない。集団に食らいつく。終盤まで温存するつもりだったけど、そうも言ってられない。ここからの頑張り次第では15分切りの可能性が見えてくる。それなら、無難にまとめるよりも、行けるところまで行ってしまえ。全力を出して、燃え尽きて得るものは、何物にも変えがたい。たとえそれが望んだ結果とは違っていても。失うものは何も無い。あるとすれば、無難な道とその結果くらい。落ちかけたペースを無理矢理上げるヒルスプリント。こんなところから出していて最後まで持つのか?

  3合目を越えて、景色も広がってくる。余裕が無い中でも写真を撮るのを忘れずに。その度に冷静さを取り戻し、改めて熱い気持ちを実感する。10〜15kmを17分35秒でカバー。少し落ちたか。半分を過ぎて、脚はもう半分以上使った感じ。でもなぜか行ける気がする。今日はそんなテンション。第2関門手前でツール名物の“アクマおじさん”登場。こんな応援がありがたい。太鼓の音が聞こえてくる第2関門、17.2km地点。遠くの山は完全に雲の上。太鼓をたたくお姉さん達がカメラを向けたら手を振ってくれた。もうあと7km、スバルラインをこんなに短く感じたことは無い。これだからやめられない。

  19〜20kmの1kmが山岳スプリット賞区間、クライマーの見せ場。5000人、その中でもクライマーと呼ばれる人種の中で、頂点へ少しでも近づくために。限界で繰り出すヒルスプリント。思った以上に体力を消耗していて、スピードに乗り切れなったが、それでもおそらくはベストが出たはず。15〜20km、17分47秒。上出来だ。あとはゴールへ向かって燃え尽きるのみ。凡人でも凡人なりの努力の成果。笑いたきゃ笑え。最後に笑うのは私だ。ラスト4km、スプリントするクライマーの、自転車人生、5年間の全て。

  あと3kmくらいのところでやっと捉えた女子選手も何人かいる。女性でこれだけ走れるなんて大したもんだ。そう考えるとまだまだ私も伸びしろはあるなあ。この終盤に来て、今さらのように感じる手ごたえ、脚ごたえ。フラット区間前の最後の急坂。さすがにこのタイムで来るとみんなそれなりに上れている。このレース3度目のヒルスプリント。ペースが落ちるこの急坂、だからこそ勝負。スプリント炸裂、一気にごぼう抜き。そのままフラット区間へ。

  息をつく間もなく、そのままスパート。何人かでトレインを組むつもりが、付いてきたのは一人だけ。アウターに入れるも脚の消耗が激しく、しかも二人での先頭交替ではスピードも上がらず。40キロが精一杯。もう時計を見る余裕もなく、とにかく後はゴールまで踏み続ける。終始追い上げる展開になったが、それはそれで気持ちよかった。

  トンネルを抜け、最後の急坂の先に見えてきたゴールゲート。脚がガクガクで腰があがらず。見事に脚を使いきったらしい。周りの人も最後は踏ん張る。それでも今さらのように湧いてくる力。限界で引き出された、限界の向こう側の力とか。なんでもいい。ただ自転車のためでなく、人生の勝負。そんな競り合いでは負けられない。残り200mでかます、伝家の宝刀“スペシャル”。スプリントするクライマー、渾身のゴール。小さくガッツポーズをしながら、自己満足に浸る。5度目の富士ヒルクライム完走。こんなに気持ちいいゴール、そうは味わえない。全ての歓声が今だけは自分に注いでいるようだ。

  ゴール直後に、元F1レーサー片山右京さん、第4回大会チャンピオン藤田晃三さん、招待選手スペシャライズド竹谷賢二さんらオールスターの方々と一緒に写真を撮ってもらった。まだトップ選手も下山前。やっと8時半を回ったばかりの五合目は快晴で、ジャージのままでも寒くない。ゴール手前でかずえ、ふくちゃんを待ちながら応援に加わる。それにしてもレース直後のこの感覚、限界に感じたようで、まだその先の伸びしろを実感。まだまだこんなとこで満足するなってことだ。

  天空のゴールを目前にした人々の表情、走りは見ていて飽きない。俳優の鶴見辰吾さんも自分のチームメイトの応援にゴール前で声を出しまくっていた。しゃ乱Qまことは30分くらいで、奥さん富永美樹は50分くらいでゴールか。その後にかずえがしゃべる余裕を残しながらゴールへたどり着いた。フラット区間での競り合いで、脚を使い切ったそうだが、初の富士ヒルクライムで堂々の2時間切り。よく頑張った。ふくちゃんもそのちょっと後に、大幅に自己記録を更新する40分切りでゴール。LOVE・WING自転車部、3人そろって見事な記録を残した。

  五合目で無事完走の記念写真、またいつかこれを撮りに、クライムに来よう。富士スバルライン、今年も楽しませてくれてありがとう。

<記録>
総合・ロード男子30〜34歳以下
 うっちゃん 602位/4672人 137位/732人 タイム:1:22:09 (18:59 - 16:42 - 17:35 - 17:47 - 11:07)
  (山岳スプリット賞区間19〜20km 2分59秒)
 ふくちゃん 2134位/4672人 385位/732人 タイム:1:39:04
  (山岳スプリット賞区間19〜20km 4分26秒)
総合・ロード女子35歳以下
 かずえ 3259位/4672人 44位/130人 タイム:1:54:13
  (山岳スプリット賞区間19〜20km 5分14秒)

おしまい

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