第8回 Mt.富士ヒルクライム

〜ただ自転車のために〜

LOVE・WING うっちゃん

6月12日

  2年ぶり6回目の富士ヒルクライムは、かずえ、ふくちゃん、ごろー、まてぃの5人が参加、さらにはゆりこ、みゆきが応援に来てくれて、チームとしては今までで一番賑やかな大会になった。まさかのまてぃキャンセル(申込みができてなかった)で応援に回ったことと、ごろーがクロスバイクの故障でぶっつけ本番のロードになったこと以外は順調に大会当日を富士北麓公園で迎えた。

  5000人。スタートを待つサイクリストの集まり。この景色を見渡すと、またこの富士ヒルクライムに帰ってきたんだなあと実感する。アスリートクラスからスタートし、次に女子がスタート。あとは申告タイムの早い順にウェーブスタートをする。帰国して四ヶ月半、自転車に完全に慣れたかというとまだまだ本調子ではないが、わるくない状態には持ってきた。少なくとも全力を尽くせば、2年前と同等くらいのタイムは出せるはず。と言い聞かせて、復活の、そして、さらに上を目指すレースのスタートを迎えた。先を行くかずえを、後方から追ってくるふくちゃん、ごろーを、ほんのちょっとだけ気にかけながら、ゲートをくぐって行く。

  北麓公園を出てすぐにまてぃ、ゆりこ、みゆきを発見。まだ落ち着いてなくて、ハイタッチもできず。計測開始地点まではパレード走行のはずが、アスリートクラスを除いて最も申告タイムが早い集団はすでに位置の取り合いが始まっていた。タイム計測手前でトレインができるとは思いもせず。その最後尾に付いて、早くも臨戦態勢。そのままスタートした。

  さすがに申告タイムが早いだけあって、序盤から明らかに狙ってきている。中には完全に走力が別格の人も居て、いいトレインに付けないどころか、明らかにオーバーペースになりそうだ。自分の実力なりの走り方をしなければ確実にバテる。そう思っても、落としきれない。ただ完走するだけが目標だった頃とは違って、今は最悪でも自己ベスト、くらいのつもりで走っている。

  料金所を通過して数分、やっと流れが落ち着いてきた。前に見えたのはレゴンのジャージ。真後ろに付いてみるとなんと鶴見辰吾。持ちタイムはほぼ同じ。俳優でこのアスリートっぷりはすごいと思う。すると前にかずえを発見。前回よりは追いつくのが遅かった。いい頑張りだ。「このままのペースで行けばベスト出るよ」とは自分にも言い聞かせたようなもの。けれど、このまま付いていって、そこそこの自己ベストを出すのが目標か?それもまあ、ありだろう。じゃあそれが面白いか?そう聞かれると答えは否。こんなんじゃ面白くない。行けるか行けないかじゃなく、行くか行かないか。力の限り、行く。

  今回、5キロごとの距離表示がなく、手元のメーターを頼りに距離を計る。5kmの通過は見てなかったが、おそらく今までで一番早い。第1展望台で景色を楽しみにコースを外れたわりにはいいタイムだ。これは行ける。確信して、レゴンジャージの前に出る。落ち着いたトレインを離れ、単独で上げる。余裕のあった何人かが付いてきてトレインを引く形になった。前を行く力のない奴に頼る必要はなく、このままふるいにかけ、10kmを好タイムで通過、第一関門を過ぎて、コースもだいぶクリアになってきた。

  もうレースの半分弱が終わってしまったのかと思うとちょっと切なくなる。24km、1300mを上る至福の時。そう思えるのはクライマーとしての本能か。ウェーブスタートの後続のトップがこの辺で追いついてきた。追うこともなく見送る。スピードが違う。まだ勝負するには早い。淡々と、でも着実にここは前をかわしながら距離を消化していく。

  3合目を越えて広がってくる景色に富士山の雄大さを改めて実感する。15kmまでの5kmもいいペースだ。これなら1時間15〜20分くらいでゴールに届く。呼吸も脚もまだ余裕がある。太鼓の音が聞こえてきて、第二関門を通過。カメラに応えてくれるパフォーマー達。毎回ここで、腹に響く太鼓がありがたい。ここを過ぎてあと7km。天空のスバルラインの勝負どころはここからだ。

  が、斜度がきつい部分での脚の回転が急に鈍くなってきた。スタートから60分を過ぎて、体がズッシリと重く感じる。水分不足とか疲労とかいったレベルではなく、何か体の芯からくる重さ。多分これがまだ完全に復帰しきれてない、力不足なんだろう。19〜20kmの山岳スプリット賞区間を前にまさかの失速をしてしまった。

  こうなると選択肢は二つ。ペースを落として、残った力をゴールまで持たせるか、ペースを維持して、残った力で少しでも早くゴールに近づくか。少し迷って後者を選択。ベストを出すだけなら、無理しなくてもこのままで行けるかも。と思った分だけ判断が遅れた。競り合う人も協力してくれそうな人も周りに見当たらず。結局単独で踏ん張るしかなかった。

  重くなった体で山岳スプリット賞区間へ。きつくなる坂に、今レース一発目のヒルスプリントを繰り出すもペースが上がらず。見せ場無く、20kmの通過を迎える。体で感じていた以上に時計は正直で、ガクンとペースが落ちていた。ここからは前回大会を上回るスピードで走らないと1時間20分は切れない。

  残り4kmになって後続に抜かれまくる。多分、その多くは序盤に抜いた人ばかりのはず。結果的にオーバーペースのような形になってしまって、抜かれる度に後ろに付いて、少しでも粘る、の繰り返し。フラット区間前の最後の急坂で2度目のヒルスプリントをかまそうとするも、腰が上がらず。勝負どころで全く何もできず。苦し紛れにもがいただけになってしまった。最悪のリズムでフラット区間へ突入する。

  スピード区間、トレインを組んでスパートをかけたいところだが、今までに無いバテっぷり。トレインには乗れず、一人ではペースも上がらず、ろくに抜くこともできず。アウターに入れるも疲れきった脚では不発。いつもはごぼう抜きにする区間、今回は抜かれなかっただけでもまだマシか。

  それでも最後のトンネルでは何人かに抜かれ、ゴール手前の坂でも苦しい走り。終盤のあまりのバテ様に苦笑いするしかない。ただ自転車のために走ったレースで沈み、でも、ただ自転車のために最後まで全力を尽くす。このゴールが次のスタートへと、そしてその先のゴールへと続くと信じて、応援してくれた全ての人に感謝の気持ちを込めて、ゴールゲートをくぐり抜ける。6度目の富士ヒルクライム、何とか完走。どんな形でも声援がありがたい。日本に、この場所に帰ってきたことをじっくりと噛み締めるゴールだった。

  ゴールしてものんびりしていられない。後から来る人の応援にすぐにゴール前に戻る。かずえがふくちゃんに抜かれることなく、ゴールへ。ベストを2分以上更新。そのすぐ後にふくちゃんがベストを4分以上更新してゴール。二人ともお見事。残るごろーは、残念ながらDNF。慣れないロードで出走したことが敗因か。その事実を知ったのは下山してから。5合目では3人で記念写真。この一枚、どんな結果であれ、こうしてまた撮れたことに感謝。今までに無い、長い一人旅になってしまったのが、終盤にバテた一番の要因だが、それを差し引いてもまだまだ完全復活の道、遠しか。焦らずにじっくりと前を向いて進もう。応援に来てくれたみんなにも感謝。また来年もご一緒に!

<記録>
総合・ロード男子30〜34歳
 うっちゃん 1251位/4617人 175位/559人 タイム:1:26:29 (1:10:34 - 3:35 - 12:20)
  (山岳スプリット賞区間19〜20km 3分35秒)
 ふくちゃん 2238位/4617人 290位/559人 タイム:1:36:46
  (山岳スプリット賞区間19〜20km 4分13秒)
総合・ロード女子35歳以下
 かずえ 105位/301人 43位/109人 タイム:1:52:17
  (山岳スプリット賞区間19〜20km 4分56秒)

おしまい

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