第9回 ヒルクライム・イン・おんたけ

〜遠いゴール〜

LOVE・WING うっちゃん

6月9日

  富士ヒルクライムで、納得の結果が出せたら、勢いそのままに。ダメだったら追試的に。そんな気分で二週連続のヒルクライムに挑んだ。先週の富士の結果は後者。今度こそはと気合を入れて臨み、そして、ひと区切りにすると心に誓ってのレース。木曽の御嶽の麓で開催された、おんたけヒルクライム。距離24km、標高差1300mは数字的には富士ヒルクライムとそんなに変わらず。ただ、ここは勾配の変化が激しい、難易度の高いコースだった。

  昨年は中止で2年ぶりの開催、セルフディスカバリーアドベンチャーシリーズとは、まさに自分探しの旅って感じで心惹かれる名前だ。先週の不発っぷりの原因は不明だが、ローラー台でのアップまでして、万全の仕上がりでスタートラインに並んだ。参加者はわずか200人程度、一斉スタートだが、そうそうコースが混雑することは無さそうだ。

  暑さも味方になる、晴天のスタート。最初1km程度はペースカーの先導で、坂のはじめりからアクチュアルレースが切られる。体はよく動いて、これが100m走ならメダルはもらった、くらいな勢い。自分が思った以上に走れてしまうと、これはまた想定外で、一斉スタートの先頭集団に付いていけてしまったというか、付いていってしまったというか。

  序盤からの急勾配で、格上の集団の最後尾に食らいつき、周りの景色も見えない余裕の無さ。こんなに必死に走ったのはどれくらいぶりか。とにかく行くしかないと何かに追い立てられるように必死に走った。後から思えば、きっとそういう気分だったんだろう。レベルが違いすぎるペースに5km過ぎで遅れはじめる。と同時に、何かが崩れ落ちたように一気にガタ落ち。5000mのレースで一人800m走をやったようなものか。それは実力に差があっても付いていけてしまうわけだ。途中までなら。

   勾配が緩やかになるどころかフラットに近い部分もあり、ヒルクライムではなかなか見ない、高速のトレインがいくつかに分かれて出来ている。序盤でのハイペースがたたり、スピードの変化に付いていけず、マイペースを守った後続に次々に抜かれる。80人くらいには抜かれたか。消耗した脚以上に、呼吸が追いつかず、10km程度で一人だけやたらときつい展開。応援もほとんどいない区間をひたすら苦しみながらの走り。

  こんなもんか。あまりコースを覚えていないあたり、かなり苦しんでいたはず。女子にも抜かれ、ありえないくらい落ちたペースに笑うしかない。何のための覚悟、何のためのレース、何のために走る?心に誓ったレースの結果がこれか。自分に呆れるしかない。

  そんなことを考えながら淡々と走っていたら、でもせっかくのヒルクライムを楽しまなきゃ走ってる意味が無い、と。山々の雄大な景色が広がり始める頃には吹っ切れて、息を吹き返した。15km過ぎくらいか。何かトラブっていたのだろう、追い上げてきたエリートクラスのレーサーにびた付きして、再び上を目指す。時すでに遅しといえども、最後まで全力を尽くす。当たり前でありながらも、当たり前にはできないこと。その実践がきっと次に、その先につながる。

  後半どころか、終盤で40人くらいを抜き返す、エリートレーサーに限界まで張り付いてのハイペース。最終コーナーで応援に来てくれたかずえに感謝にしつつ、最後の最後まで前を抜きにかかる。脚が攣るのをこらえてのフィニッシュは、本当に最後まで全力を尽くした。そして、思った以上に遠いゴールだった。

  序盤から積極的に攻めたものの、積極的に行き過ぎて。入賞どころか、年代別でも16位くらい。200人くらい走った中で、上から3分の1くらいという順位か。タイムも1時間27分台。目標よりも大幅に遅れた。それでも無難にマイペースで走って、妥当な順位でゴールするよりも、思いっきり行って、終わってみれば印象に残る走りになったので、充実感はあった。ただ完走したかったわけではなく、とにかく全力を尽くしたかったので、そういう意味ではやりたいことやれたか。

  特に後半の追い上げは自信につながった。気持ちもつながった。少なくともこんな位置を走っている走力ではない、と。まだまだ行けるって思えただけでも良し。走ったからこそわかることがあった。次こそは、と言いたいところだけど、結果は伴わずとも、力を出し尽くした感のある今の気持ちは、もうこれで十分。またレースで登りたくなったら登ることにする。しばらくは休養、酷使した体と心と自転車を休めようと思う。

  終わってしまえば、心穏やかならざる結果にも、気分はなんかすっきりしていた。女子の部を走っていたら余裕で入賞だったであろうかずえとともに、何年か先にまたこのおんたけを走りに来よう。そのときは今度こそ入賞を狙って。

<記録>
総合(クラス別) タイム
 うっちゃん 79位(ロード男子30代クラス16位) 1:27:36

おしまい

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