ライセンス無くても走れるサーキット

〜2003 鈴鹿シティマラソン〜

早稲田ハング うっちゃん

  三重県でのデビュー戦は鈴鹿サーキット。そう、あの鈴鹿。走りに、というよりもコースを見に、楽しみに。ぞくぞくと集まるランナーたち。メインスタンド裏には、すでにかなりの人。ゲートをくぐると目の前にホームストレート。これが鈴鹿サーキット。見ただけでジーンとくる。そしてコースを踏みしめてさらに感動。音速のマシンが駆け抜けたコース上を、自分の足で走ることができるとは素晴らしい。スタンドにはユーロビート、会場もDJががんばって盛り上げようとしている。お堅い陸上の大会とは違って、いい雰囲気。コースもレースが始まるまでは開放されていて、アップしながらピットをみたり、道路を観察したり。舗装は思ったよりも普通だった。スタンド中央からやや離れたポール・ポジションに立って、何となく思いを馳せる。さて、今日はどんなレースにしよう。

  ホームストレートに並ぶ数百人のランナー。黒Tに黒スパッツでスタートラインから11列目くらいに待機。シグナルはオールレッド。電光掲示板でカウントダウン。3、2、1、GO!スタート直後の混乱の中、大外から一気に駆けあがる。第1コーナーまでのストレート。景色もランナーも後ろへ流れていく。色とりどりのユニホームが飛び込む第1コーナー。トップは捉えきれず、先頭集団、前から17番目で通過。そのまま第2コーナーへ。後続の足音が響きわたる。17番手のままS字へ。先頭はこのペースのままで一気に行く。徐々に縦長になる列。速い・・・。第3コーナーからのS字、テレビではわからないが、人が走るにはきつい上り坂。しかも、もろに向かい風。1キロの通過は3分。これ以上ペース上げたら、とてもじゃないが13キロは完走できない。サーキットならではというべきか、視界が開けているおかげで、離れていく先頭が見える。わずかな下りのあとに、またもやかなりの上り。ショートコース1周の4分の3くらいで2キロ通過。この1キロ、3分半まで落とした。ていうか、もう限界。先頭争いといい気分は味わったから、もういいや。この辺で、流れに身を任せてペースダウン。まあこんなもんかと。かなり前の方にいたこともあって、ものすごい人数に抜かれていく。ホームストレート前に戻ってくる頃には先頭も見えず。すでにバテバテで一般道へ。

  ここからがまたきつい。わかっていてのオーバーペースとはいえ、苦しすぎ。しかもアップダウンがありすぎ。ペースはまだ落ち続ける。やっと落ち着いたのは5キロ過ぎ。20分が経過。すでにキロ5分。サーキットの外、一般道を通行止めにしてのコース。っていってもまだ開発中のバイパスで大会関係者以外、応援もいない道。前も後ろも走ってる。マラソン川柳「駆け抜ける その足跡が わが人生」なんて詠んだランナーの今を感じさせるつらい道のり。もっともこの苦しさも走れるがゆえに味わえる感覚。まだまだ行けるぞ。

  落ち続けるペースも落ち着いてきた7キロ過ぎ。キロ5分で走るのがやっと。サーキットに戻ってきてすぐに給水ポイントあり。スタート直後と違って、まばらにしか人がいないコースは広々としていた。再び第1コーナーへ。今度はスタンドや広告、タイヤバリアなどを見て楽しむ。後続も気になり、何度も振り返りながら、車ならおそらくはバックミラーに映る景色を楽しみながらの走り。まともなレースだったらまず振り返らないから、後に続くランナーを見るっていうのが、なんか新鮮に感じた。

  息があがっていたのはともかく、足にまで疲れがくるとは・・・。13キロっていうからなめてたけど、よく考えたら結構な距離。ろくに練習してない体にはきつい。コースはお楽しみのヘアピンカーブから西コースへ。歩き始める人も目立ってきた。ヘアピンが実はかなりの上り坂。疲れた足に響く。ここでインを突いて出てきた女性ランナーがいた。何人くらいの女性ランナーに抜かれたかわからんが、そんなに多くはない。ここも大人しく抜かれるが、背中をみると“MIE UNIV.”の文字。三重大のランナーか?がんばれ〜、と心の中で声援を送ったのは一瞬だけ。三重大、その勝負、早大がお相手致します。相手には不足?いやいや楽しませますって。体育会にしろ同好会にしろ、同じくらいの実力なら遠慮はしないぞ。陸同のユニホームじゃないから、早大ってアピールができないけど。近い位置を走っていたサッカーユニホームの男2人も巻き込んで、ここからゴールまで何百人分の4人のバトル。あついぜ。

  三重大の女の子と視線がぶつかった。けっこうかわいいじゃん。なんて余裕もなく、実はコース以外の景色を覚えていないくらいの余裕の無さ。改修された旧130Rへのストレートで微妙な位置取りをしながらの走り。サッカーユニホームの2人はペースが合わずに落ちていったのか、うちらが上げたペースについてこられなかったのか。残り2キロでスパート。周りのランナーを次々に抜きながら、130Rを駆け抜ける。シケイン手前まで並走。最短コースを取って走る。マジできついんだけど、この三重大には負けられない。相手が女の子?専門外の種目なんだから全力で行ってもいいでしょ。陸同魂が体を走らせ、シケインへは先に飛び込む。すぐ後ろをついてくる。ゴールゲートとメインスタンドが見えてきた最終コーナー。スプリント勝負では負けるわけがない。とはいえ、まさかここまで全力のスパートをすることになろうとは・・・。何とかの先着も笑顔でゴール。いっぱいいっぱいだったけど数秒差のゴールに、「なかなかやるじゃん」と余裕っぽく一声かけられる。「君こそ・・・」となんとか笑顔で返す。体育会か同好会か、正体は聞かなかったが、女子の部の14位。速いわけだ。残りの学生生活も全力で駆け抜けてくれ。途中競り合ったサッカーユニホームの2人は、ゴールとともに燃え尽きていた。

  パドック裏からピットを抜けて、スポーツドリンクとおしるこのサービス。ゴール直後に記録証ももらった。タイムはともかく、なかなかに楽しいレースだった。ちょっと厳しかったけどね。レースの余韻に浸りながら、次々にゴールするランナーを見守る。フィニッシュラインを駆け抜けるときの表情は人それぞれ。色とりどりのユニホームがゴールするのは見ていて飽きない。新天地でのデビュー戦、世界の鈴鹿を駆け抜けたなんて言ったら、いい話のネタになるんじゃないかしら。

おしまい

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