春を待ち焦がれる2本

〜下呂温泉ジョギング・長島リバーサイドマラソン〜

早稲田ハング うっちゃん

◆1本目◆ 第16回 下呂温泉ジョギング大会

  公式戦、初の10km。とは言っても、気楽に乗り込んできた今大会。下呂温泉を楽しむついで。2連戦、1発目。チップを使わないロードレースだし、記録の狙えるようなコースでもないから、ホント気楽です。校庭での開会式は、中高生はきちんと(でもないけど)整列。運動会を思わせる。みんなで準備体操っていうのどかさが、素人にもやさしい大会って感じ。

  5分前、スタートラインに選手たちが並び始める。10kmの部のエントリーは100人くらいか。みんな控えめなのか、前の方は空きがある。地元の高校生たちが前に並んだ。揃いも揃っていい筋肉。いかにも「鍛えてます」って感じだ。社会人は?目立った選手は不在か?2列目、こんな前にいてもいいのか?誰も来ないなら遠慮なく居させてもらうけど。何度も繰り返すけど、気楽にね。30秒前、前に並んだ高校生たちはマジだ。

  スタート!一気に飛び出す高校生。それについて行くチームメイト。私は抑え目にスタート。ってどんどん先頭は離れていくし、後ろからは次々に抜かされて行くんだけど・・・。そんなに抑えてるか?様子を見ながら自分のリズムを刻む。街中はどこでもまばらに応援の声。1キロ通過、決して遅いペースじゃない。みんなが速い?!完全になめていたか。スピードに乗れないまま、先頭集団は見えなくなってしまった。序盤から上りが厳しい。そんな中、まだまだ後ろから抜いていく奴らがいる。もう随分抜かれた気がするが・・・。2キロ通過。曲がりくねった坂道を駆け抜けて、温泉街を離れていく。5kmの部折り返しのポール発見。全体の4分の1で、この苦しさ、ありえない。そこに駄目押しをするようなコースが見えてくる。

  国道を越える橋と山の上へと続く道。お〜い、この上り坂を走れって?!箱根駅伝の5区を思わせるような上り坂。日頃の練習と違い、わずか3キロ走っただけで、意外に疲れている脚。そんな状態で長い上りを走るのは想像以上に厳しい。上り切る前に折り返してきたトップとすれ違う。先頭は高校生、2m後ろに社会人、その5m後ろには先頭と同じ高校の数人グループ。きつそうな表情してるけど、下りでみんな飛ばしてる。先頭集団はかなり速い?こっちは歩きそうだっていうのに・・・。厳しいときほど声援がありがたい。何とか上り切って給水。そして折り返し。ここからは抜かされるわけにはいかない。

  前後はばらけて選手が少ない。坂の上の町では、沿道でみんな応援してくれる。それに笑顔で応えながら下り坂へ。さっきとは逆に、後続とすれ違いながらの下り。後ろの方は歩いている人もいる。この下りを利用してペースアップをしようかどうしようか、もうきついし、のんびり行こうか。と、気楽というよりは人ごとのような頭の中。そこへ後ろから一人、いいペースで追い上げてきた奴がいた。「先生がんばって!」って地元の小学校か中学校の先生か。見た感じ体育の先生ではなさそうだけど、がんばってるねえ。それならいっしょに応援してもらいましょうか。と付いていく。

  折り返してから何人くらい抜いたかしら。再び温泉街へ戻ってきた。地元の声援は多く、この先生の顔の広さがうかがえた。でも、先生バテてきたみたいで、ペースダウン。しょうがない、私が前に出てペースを維持してあげる。別に余裕があったわけじゃないけど、この先生をもっとがんばらせてあげたくてさ。何ていうか、親や生徒たちの応援の中、走ってたら、何か私も応援したくなっちゃって?街中の坂道、めいいっぱい引っ張ってあげた。最後2kmくらい残して私はバテバテになったけど。

  みんな厳しいみたいで、後半追い上げてくる選手は全くいなかった。女子3位の選手を抜いたけど、抜き返されたくらい。最後の路地裏から下呂中学校前に戻ってくる道は、親子の部で参加した小学校低学年の後ろの方がまだ残っていた。こっちも余裕じゃないけど、抜きながら少年少女に応援の声をかけてあげる。「ゴールまであとちょっと、がんばれ〜」って。こんな地元密着の大会だからこそ、ついこっちも声援を送りたくなる。ゴールも見えてきたラスト500mくらい、気分だけビクトリーロード。沿道の声援に応えつつ、最後は余裕のゴール。数人抜いて、でものんびりフィニッシュ。手元の時計で・・・まあ、こんなもんか。

  ゴール後のドリンクと豚汁のサービスがありがたい。記録速報で順位を確認。序盤でかなり抜かれた気はしたが、思ったより上の方だった。優勝は高校生。2位の社会人に2分弱の差。高校生がこのコースであの優勝タイム、次元が違う。数年後には箱根駅伝を走ることになるかもね。山里から箱根へ、そしてトップアスリートへ。そういう歴史が過去にもあるんだろうけど、きっとここからはばたく地元ランナーの誕生を温泉街のランナーたちは楽しみにしているに違いない。ローカル大会と温泉街の良さを味わえて、なかなか良かったかな。何より日頃の練習がいかに大したことないかっていうのを実感したのが、いい収穫だね・・・。ちなみに5kmの部、云年前のベスト記録なら、今大会の6位相当、入賞できちゃう?来年は5kmにエントリーか?また温泉を楽しみに来ようかしら。

◆2本目◆ 第11回 長島リバーサイドマラソン

  春がもうそこまで迫ってきた、と言いたい季節のハーフマラソン。晴れているけど、寒い。しかも風が強い。開園前、早朝の長島スパーランドに集まってくるのは本日のランナーたち。この辺では比較的大きい大会らしく、参加者もそこそこ。みんな思い思いにアップをしている。「初めてのマラソンなんです〜」とか「今年もこの季節が来ましたね」とか、いろいろ。ジャージもユニホームもさまざま。私は今回、アームウォーマーにサングラスでちょっといつもと違うスタイル。寒さと風対策ね。あとは見た目重視?

  5分前にやっとスタートラインに並んだ。先頭から30mくらい。道幅も狭くて、すぐには前に出られそうもない。抑えていって、前の人を風避けしながら、フォローになる折り返し後に勝負か。とりあえずの自己ベスト狙い。ハーフは3年ぶり。だんだんテンションが上がってきた。サングラスをかけなおして、気合が入る。格好だけは速そうに見えてたり。

  スタートの号砲が長島の空に響く。20秒足らずでスタートラインを通過。直後の混雑は市民マラソンではいつものこと。控えめに走っていると後ろから追突されたり。海に面した堤防沿いのロードは思った以上に強風。視界は開けて、先頭から縦長の列が続く。当然のことながら周りにはランナーだらけ。ばらけるまでは他の人を風除けに使いながら抑え目に。それでもすぐに最初の折り返し。河口付近から海へと防波堤の外側、水辺の舗装路を行く。追い風に押されてペースが上がる。10キロや5キロの部ともコースが重なり。一気に人が増える。しかもペースがバラバラだ。自分のペースを守る難しさを痛感。

  落ち着いてきたところで周りの観察。大学の運動部やクラブチームが多数。きれいなお姉さんや陸上部の高校生までいる。バラエティーに富んだ参加者の数々。堤防を再び越えて、土手下の道へ。コースが各部ごとに分かれており、最後の分岐を通過。ここから先はハーフの選手のみになる。ばらけ過ぎて風除けになる人もいない。つらいが前には追いつけず。後続が上がってくるのを待ち、他選手と集団の先頭交代しながら走る。距離表示がなく、ペースがつかめない、と思っていたところで9kmの表示。時計は、意外に早い。これだけ抑えていたのに、前回の下呂の10kmよりもかなり速い。これで最後まで持つのか不安だが、このまま行けば、間違いなく自己ベスト。マラソンやロードに慣れてから走るハーフは初だから、狙えて当然といえば当然かもしれない。

  しかし、そんなに甘くはない長距離の世界。10kmを過ぎて、突然やってきた脚の疲労。呼吸よりも筋肉の方が先に悲鳴をあげた。いわゆる筋持久力の無さ。こんなに早く来るとは思わず。これも練習量の不足が原因か。一気にペースが落ちる。住宅地に入って、沿道の応援も出てきたというのに・・・。序盤で抜いた見覚えのあるユニホームが次々に横を抜いていく。これはマジでやばい。10kmを過ぎてからの3kmで20分かかった。途中の関門で引っかかるかも、と最悪のケースが頭をよぎる。制限時間だなんて考えてことないぞ。

  堤防下から堤防上の道へ戻り、折り返して風がフォローになる。ここで向かい風だったら、もう足が止まっていた。追い風に助けられながら、何とか走る。まだまだ後ろには人がいっぱいいることを知って、安心したような弱気な姿勢。頭の中はここから何とかゴールまで辿り着くための走り方を考えて妄想に耽る。少しでもエネルギーになればとスポーツドリンクの給水。ありがたい。

  多くの人が沿道の声援とか自分の目標とかに支えられて走っている。私の場合、みんなの声援には特に力をもらっている。それはエンジ色のユニホームを着ていればこその声援であり、それが無いことが、こんなにも厳しいとは・・・。ホームタウンから遠く離れた土地で走ってみて、初めて実感した。陸上とはそういうものか。でも、走っていればゴールは必ず見えてくる。そんな思いが体を何とか動かす。

  あと5kmを切った。次のレースもあるから無理はしない、とか考えてた。でも、それは私の走り方じゃない。今は今。いいかどうかはわからないけど、今を全力で駆け抜けずして、次があるとは思えない。どうしよう?と考えているところへ。後ろから追い上げてきた女子高生。高校生にとっては、ハーフはかなりきついだろうに、この頑張りや勢いが羨ましい。横に並んでふと思う。迷わず行けよ。行けばわかるさ。行かなきゃわからない道もあるんだよ。並んだら意識してしまうもの。ラスト5km、未来ある女子高生ランナーとの一騎打ち。これは負けられない。

  横に並んだり、風除けに使ったりなんてしない。前に出て、ひたすら粘る。振り切れるか、抜かされるか。先輩ランナーとして、これがせめてものわるあがき。残り4,3,2kmと二人そろって次々にかわしながら、リバーサイドを駆け抜ける。一緒に走っているのに、後ろの女子高生への声援が多い。ずるい。後ろにぴったりと付いてくる。大したものだ。ラスト2〜1kmで再び強風の向かい風。ここまで無理しまくり。押し切れるかと思ったが、限界。もうだめ。このままゴールまで駆け抜けてくれ、そんな思いを込めて女子高生に道を空ける。○○高校、がんばれ。目線だけ送る。そして、あと1kmの表示。ここで完全に力尽きた。

  最後の1kmは足が完全に動かなくなり、ゴール手前での応援にも苦笑いで応えるのみ。足を引きずりながらゴール。時計はハーフでのワースト記録。まあこんなもんか。ゴール脇にさっきの女子高生がいた。こちらを見ているので、軽く手を上げてあいさつ。次の舞台がインターハイであることを祈る。足の具合は、完全に筋肉疲労によるもの。よくがんばったと自分に言い聞かせる。次につなげれば、この結果も意味のあるものになるはず。ゴール直後に降り出した雪は、冬の終わりを告げる最後の演出か。さて、参加賞の温泉にでもたっぷりと浸かってきましょうか。これもまた大会の楽しみの一つかしら、ね。

おしまい

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