夢のつづき

〜第2回 東京マラソン2008〜

LOVE・WING うっちゃん

  2年連続2回目の参加で、冬晴れの東京のど真ん中を、途中10回くらいなきそうになりながら、温かい声援と早大同好会100人の力に後押しされて、思わずにやけてしまうゴールを味わってきた。

  スタートは9時10分。直前に、陸同のユニホームを着たかおりん、エリートに出場のケダマ、取材のワダと次々に同期の顔を見て、テンションが上がらないわけがない。

  今大会、早大同好会はおそらく東京マラソン最大の勢力。アスリートの部&一般の部で男女20人ほどが出走。芸能人やアナウンサーのガードランナーで80人ほどが伴走。学生時代に自分が所属したサークルが、現役・OB合わせてこれだけいるっていうのは、意味は無いけど、なんか誇らしい。そして、エンジ色への声援は何度味わっても格別のものがある。昨年に引き続き、また東京のど真ん中で夢の続きを見させてもらった。

  仕事の忙しさは言い訳にならないが、練習不足という感じがするのは仕方ない。その分、控えめにスタートして徐々に、気持ちとともに盛り上げていけばいい。最初の5kmはゆっくりとした入りで、竹橋で応援するみんなには、遅すぎて心配されたほど。皇居周辺に来て、流れが落ち着いた辺りから乗ってくる。10kmのゴールを見送り、品川へと昨年も走った道を、今年も同じような気分で走る。

  エリートランナーとのすれ違い、反対車線に順調なケダマを見送り、今年もキリと交差する視線。一瞬のすれ違いながらもかおりんに名前を呼ばれ、3万人の中でも勝手に気持ちを一つに、それぞれが戦う陸同のランナーたち。給水のボランティアに、マラソンを盛り上げるイベント参加者に、沿道の観客に、手をあげて応える。ただ走るだけならいつでもできる。でも、この大観衆の中を走ることなんかそうそう無い。たとえその他大勢への声援だとしても、この冬の一日に沿道まで来てくれた観客に少しでも応えて損はない。

  出だしの遅れを取り戻してのハーフ通過、昨年よりもわずかに早い。そして今年も一番のハイライト、銀座四丁目の交差点から東京のど真ん中を駆け抜ける。中央寄りを走り、反対車線のまばらなエリートランナーの中から、今年もケダマとハイタッチを交わす。行ってくれ、と。

  いつの間にか前には陸同のユニホームと見覚えのある女の子。サロマで会った後輩たちだった。きっと実力ははるかに上なのに、調子次第ではこんなとこで私には並ばれてしまう。これもマラソンの面白いところ。行けるとこまで行くぞ、と激を飛ばして抜き去った。その直後、反対側にかおりんと青木さんの並走する姿。どっちかが抜き去るシーンだったらしいが、これも珍しいタイミングで発見した。

  盛り上がる雷門を横目に浅草を折り返す。25kmを過ぎて脚が重くなってきた。でもまだ自己ベストのペース、トイレに行かなければ、3時間半切りもまだ行ける。ただ完走するだけで満足していた頃と違い、今は目標タイムを達成してこそ走った甲斐があるというもの。スプリンターだから、なんて言い訳はもう無い。東京のど真ん中で見た夢は、きっとこれで最後となる陸同のユニホームをとともに、最後まで見続ける。

  茅場町の辺り、30km手前でチームのみんなが応援に集まっていた。一度通り過ぎてしまうが、戻ってのハイタッチ。この程度のロスでどうこうなるタイムじゃないし、仲間の応援に応えずして出した結果など意味ないし。とはいえ、30kmを過ぎて、もう力を使い果たした感がある。ペースが落ちたのは明らか。反対車線を走る後続を横目に、抜かれまくる。いつも最後なんて、こんなもんか。

  キロ5分半まで落ちて限界。「あ〜もう無理っ」思わず声に出したら、意外とみんな聞いている。沿道から「早稲田がんばれ〜!」、隣のおっさんから「若いんだからがんばって!」、反対側から「まだいけるだろ!」だってさ。そして戻ってきた銀座のど真ん中。見上げた空も、走るコースも狭いが、これこそ東京。

  それでも走って通過した銀座四丁目の交差点。大観衆の中を抜けてきた後の晴海通りは広く感じる。10kmを無事完走したそめとまさがここでまさかの登場。思わぬ場所での声援に再び、気持ちを入れなおす。沿道の人が途切れることなく続き、早稲田名指しの応援にふと我に返る。“陸同で一番遅いマラソンランナー”にもこの声援、これを味わえるのも今日で最後か。現役の頃よりも卒業してからの方が着た回数が多い、この陸同ユニホーム。そう、これ着ているかぎり、いいとこを見せなくては。35km通過、とうとうここで26分台まで落ちた。けど、まだまだここからが、遅いなりの見せ場。

  終盤の橋が上り坂として立ちはだかり、全体の流れが遅くなる、が、だからこそここで行く。ここで行かなきゃ、クライマーの見せ場は無い。そんなことを考えていたら橋手前の応援にも気づかず。代わりにビルの上の観客に手を振って応える。上りの勢いそのままに、休む間もなく終盤へ。

  雨に打たれた印象しか記憶に無い終盤も、実際には広々として高層マンションと海の匂いがしてくるウォーターフロント。昼近くなって豊洲での盛り上がる応援に後押しされ、40kmまでに落ちたペースを少し盛り返す。おまけの2.195kmは、これから先の夢を見るための、気持ちで押し切る勝負どころ。

  陸同はOBになっても激しく火花を散らし、北京を目指した都庁のエース、ケダマは2時間23分台で見事な完走。陸同の同期4人はみんながそれぞれ激しく楽しんだ。ネットタイムでも3時間半には届かない状況のラストも、終わりが近いとなれば、疲れきった体さえも軽く感じる。ゴール前の直線はたとえ自分への声援でなくとも心地いいビクトリーロード。文句無しの走りきってのフィニッシュに、万感の思いとともに、ユニフォームにありがとう。全ての完走したランナーにおめでとう、全ての応援にありがとう、そしてこの舞台、東京マラソンにまたいつか。これからも走り続けて、夢のつづきをまた見よう。

<記録>
タイム:3時間32分38秒 27:54 - 24:25 - 23:48 - 24:10 - 24:38 - 25:12 - 26:02 - 25:25 - 11:04 ベスト
(ネットタイム:3時間30分26秒、ハーフ通過:1時間45分40秒)
男女総合順位(グロス):3028位/26654人 (フル25〜29歳男子:231位/2010人)

おしまい

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