国立にまた立つために

〜第52回 豊島区民陸上〜

LOVE・WING うっちゃん

  台風が迫る国立競技場で、今年もまた走ってきた。2年連続、10数回目の参加で、10数回目の入賞を果たし、100mで3位、400mで2位と、二種目で表彰台にあがった。記録は台風の風雨に翻弄され、散々だったが、メダルは敢闘賞といったところか。小さい大会とはいえ地元なんで、ここくらいはいい思いをしたい。

  4年ぶりの100m。20代最後に100mを走って、終わったときから4年。国立競技場の100mのスタートラインにまた立つために、今シーズンは練習をしてきた。ここでまた走れることは幸せだ。目にする他の選手がみんな速そうに見えるが、そんなのはいつものこと。速そうに見える奴らを今まで何人も抜き去ってきた。今回もそうだと、気持ちを落ち着けながらのアップ。

  一発決勝でスタートラインに立ったのは6人。爆風の向かい風がスタート前に吹き抜け、他の人たちと思わず目を見合わせる。これはタイムよりも勝負だとみんな思ったに違いない。今のベストの走りは10本に1本くらいしか決まらず。 ならばその1本を引き当てたい、と。

  落ち着いていたが、落ち着きすぎていたかもしれない。衰えてもなおレベルが違う、得意のスタートから先頭に立ち、あとはもう逃げるのみ。けれど、そう都合よくいい走りができるわけもなく、序盤で一人、中盤でまた一人と抜かれ、スピードに乗ることもなく、付いていくこともできず。抜かれた時点で競り合える走りが出来ないことを実感。前とは離れ過ぎてしまい、競り合うこともなくゴール。後続を振り切るだけの余裕を残しつつ、次のレースのことを考えて流してしまった。 結果、タイムは散々なもの。着順優先のしょぼい走りをしてしまった。もっと熱い走りをするべきだったし、したかった。

  レース間がまた短く1時間程度。この前の5分よりははるかにマシ。余力を残した分だけ回復した気がする。レース間が短いと、きついと思うのは年齢のせいか。回復が追いつかない。

   昨年に続き2年連続の400m。この時間は台風の影響大。 レーンに並ぶも大雨で一度退避。 さらに強くなった大雨の中に再び出された。トラックに体が映るくらいの水たまり。400m、社会人は5人のみのエントリー。内2人がDNSで最初から表彰台決定。この大雨でタイムも期待できず、気楽なレースだった。それでもここに立ったことをお互いに称え、スタート前に3人でタッチを交わす。こんなこと、闘志をぎらぎらさせていた頃には考えられなかった。小さな大会とはいえ、大会が成り立つのはこうして出てくる人々がいるから。ここに立つ全ての人たちに敬意を表したい。

  台風で気持ちが萎えたレースはリラックスしたまま。イン側3レーンから外のレーンを見ながらのレース。2レーン外のトップは力が違いすぎ、隣は100mは速かったが、ロングスプリントは得意ではなさそう。200m通過でもう勝負あり。1,2,3と順位は固いところで、限界まで攻めることなく、最後の直線も余裕を持ってゴール。トップから5秒以上の遅れは、離れ過ぎてどうしようもない。コンディションもわるいとはいえ、タイムもひどかった。

  2レースとも、展開とはいえ、順位を意識しての走りで、全力を尽くしたとは言い難い走りだった。競り合わないとあの程度の走りしかできない肉体、ベストを尽くす走りさえも難しい状態、そもそもその気になったときに100%力を出しきることができない現状。限られた時間の中で、これからを考え直したいと思わせるには十分な結果だった。

   今シーズンをスプリントに費やした敢闘賞ということで、メダルはありがたくもらっておく。ただ、こんな情けない走りじゃなく、少しでもいい走りを、走れるうちに走っておきたい。短いスプリントシーズン、今期は残り1レース。とにかく記録を意識して次こそは全力で行きたい。全てを考えるのは今シーズンが終わってからだ。

  それにしても年々きつくなる体に鞭打ってエントリーするのはいつもの顔ぶれ。勝ったり負けたり、なかなかの記録だったり練習してないのがバレバレの記録だったり。みなさん、本当にお疲れ様でした。「マスターズで一緒に走りませんか?」「ウチのチームで一緒にどうですか?」「即席でリレー組んで走りませんか?」。レース後に交わす言葉に温かさを感じたのは私だけか。30代、若き日の姿をまだ忘れられないスプリンターたちは、きっとまた来年も国立競技場にやってくるに違いない。

おしまい

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